第9話
「シルク。今日も沢山の糸をありがとう」
シルクは沢山の種類の糸を作れる事が分かった。中でもゴムの様に伸び縮みする糸はかなり便利なのです。
この世界には伸び縮みする素材が無い為、下着等は紐で固定したり、ズボンはベルトで固定したり、ハイソックス等はガーターベルトで固定したり、とにかく不便なのだ。
そして私が何を作ろうとしているかと言うと、お姉様用の下着です。何と社交界に行く時にお姉様が護衛に付いてくれる事になりました。私はお姉様のドレス姿が見たかったので反対したのに、全然話を聞いてくれません。全く、困ったお姉様ですね。このままではお嫁に行けませんよ?
今作ってるのは下着とスパッツと新しいコルセットです。お姉様は騎士服で参加されるので、女性用の下着を着る事が出来ません。なので代わりを私が作る事にしました。
前世の記憶にあった普通の下着です。そして色は黒。ブラは作るのが難しかったので作ってません。まあその内作りますけど。そしてお姉様に黒の下着に黒の肩紐タイプのネグリジェをお揃いで着てもらい一緒に寝てもらう。フフフ。お姉様、待っててね。
妄想はこれぐらいにして、下着にはこの伸び縮みする糸を使い紐なしで簡単に着られるようにする。そしてスパッツ。動きやすく、足も細くなり、お尻のラインがとても綺麗になるのです。
そして伸び縮みする生地をコルセットに使えば食べ物を食べてもサイズ調整をしなくてすむし、動きを阻害せずに綺麗なラインを作る事が出来ます。これでお姉様はドレスを着てなくてもモテモテですよ。ウフフフ。
それから試作品を何度も作って貰い、遂に完成しました。ついでにオリジナルの女性用騎士服も作っちゃいました。えへへ。
赤いインナーの服に赤いヒラヒラのミニスカート。さらに白の足首まであるスパッツに白のブーツ。ブーツは少しくしゃくしゃになっていて上の方を少し折り返している。勿論見える裏地は赤。
そこに白い鋼鉄のように硬い糸で作られた布の様な見た目の、首まで守る肩鎧と、胸当てと、アームガードと、すね当てには赤いラインが入っていて赤い模様も入っている。腰のロングソードの鞘は白く持ち手は赤。さらに薄地で白くマントの用な外套には赤いラインが入っていて我が家の家紋が赤い刺繍で入っている。そして左肩には短めの赤いマントが取り付けられている。
かっこよくて可愛い騎士服が完成しました。お姉様の為にかなり奮発しました。とても素敵です。
「お姉様、とても素敵です。私と結婚してください」
「エリー。変な冗談はやめなさい。それにしても、この短いスカートはどうにか出来ないの?とても恥ずかしいのだけど」
「何を言っているのですかお姉様。白いズボンを履いているのですから、何も恥ずかしく無いではないですか」
全く、お姉様は何を恥ずかしがっているのですか。肌を見せている訳では無いのに。
「確かにそうなのだけど、何と言うか、この白いズボン?はピッチリし過ぎていて恥ずかしいのよ」
「これは動きを補助してくれる物なので何も問題ありませんよ。とても動きやすくなっていませんか?」
「確かに動きやすいのだけど。はぁ。分かったわ。エリーが作ってくれた物だからこれを着て行くわね」
「良かったです。これでお姉様もモテモテですね」
フフフ。これでお姉様には納得してもらえました。後は上の下着とネグリジェを渡せば完璧ね。
「お姉様、これは私が作ったネグリジェです。私とお揃いなのでパーティーから戻ったらこれを着て一緒に休みましょう」
「わ、分かったわ。エリーとお揃いなのね?」
「そうですよ。お姉様と寝るのは久しぶりなのでとても楽しみです」
「そ、そう」
全く、お姉様は恥ずかしがり屋なんだから。
それからいつもの鍛練には相変わらず苦戦していた。筋力が上がると私生活でも苦労する訳では無い。今までと何も変わらない。例えば筋力が10の人が20になっても力の使い方は変わらない。ただ、上限が上がるのだ。
今までの本気が10だったけど、更に本気の20までの力の出し方が分かる感じかな。ただ、10までなら今までと同じ動きが出来るけど、20の力を使うと力に振り回されて上手く力を発揮出来ない。
普通は少しずつ成長するのでそんなに苦労しないらしいけど、私の場合は急激に成長したせいで苦労している。
「もう見た目の筋肉は変わりそうにないわね」
見た目の筋肉は祝福が上がり難い成長期にだいたい決まってくるらしい。理由は本気を出す鍛練がしやすい為だとか。祝福が上がれば上がる程ステータスの限界以上の本気を長時間出すのが難しくなる。
つまり私の場合は既に見た目の筋肉を付けるのが難しくなっている。
「私はスピードも意識して鍛えたから、細くてしなやかな筋肉が付いて手足も細いままなのは良いけど、これ以上見た目が変わらないのは残念ね。筋肉が付けば更に太りにくくなるらしいのだけど。腹筋が辛うじて薄く割れてるのは良かったわ。もう少し成長すれば腰の括れももう少しはっきりしそうね」
それから私達は王家主催の社交界に出席する為に馬車に乗り込んだ。しかし、そこで問題が発覚したのだ。
「お姉様、お尻が痛いです。ステータスが上がってるのにどうしてお尻が痛くなるのですか?」
「それはね、馬車の振動が絶妙なせいなのよ。例えばね、優しく触ると普通の柔らかい肌なんだけど、少し強く触ると少し反発が起きるのよ。更に強く叩いたりすると固く感じるのよ。だからステータスが上がると強い力にも耐えられるようになるけど、傷付けられない程の弱い力には無防備なのよ。だからそれを長時間受け続けるとお尻が痛くなるのよ」
「そ、そんなー。そんなの理不尽ですわ。私のお尻はどうやって守れば良いのですか?」
「全くエリーは仕方ないわね。おいで。私の膝の上に座れば大丈夫よ」
「ありがとうお姉様。大好きです」
私はお姉様に抱えられながら解決策を考えていた。もしかしたら馬車の構造を細かく見ればサスペンションの構造が思い付くかもしれないわね。
「エリー、王都の城壁が見えて着たわよ」
「凄いですね。とてつもなく長い城壁です。城壁の周りにも町が出来てますよ?どうしてですか?」
「それはね、元々は農業等をする人は城壁の外の方が便利だったから外に住んでいたんだけど、その人達と商売する人が集まって、人が人を呼んで王都の周りにも巨大な町が作られたのよ」
「じゃあ王都の周辺の町は未だに大きくなってるのですね。凄いです」
「それは少し違うわね。最近は人が減り始めているらしいわね。それより城壁の門に着くわよ。お父様達の馬車が止まるわ。エリーも暫くは椅子に座って」
「はい。お姉様」
私は仕方なくお姉様の膝から降りて椅子に座る。帰ったら絶対に新しい馬車を作ろう。
私達の滞在先はお母様の実家のベルリンデ伯爵の王都邸にお泊まりする事になっている。男爵家は王都の貴族街に土地を持てないのだ。今まではお金も無かったのであまり王都には来なかったらしいけど、最近は誘いを断るのも難しくなったとか。私は関係ないよね?
そして私は始めて祖父母に会った。
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