カタツムリ_モデルの証明

花野井あす

カタツムリ_モデルの証明

突然だけれど。

ひとの時間はカタツムリだと思うのさ。


ぐるぐる、ぐるぐるいつも同じことを繰り返して。

たまに、吃驚ではじめての出来事に出逢う。


馬鹿馬鹿しいって?

じゃあ、日常を振り返ってみよう。


まず朝起きたら、君は何をする?

そう、朝ごはんを食べるのさ!

え、君は食べないのかい。

しっかりお食べよ。頭がしゃっきりするよ。


そうしたら、次は?

学生の君は、学校へ行くために、駅へ向かうね。

会社員の君は?君も駅なのかい?


あの満員電車に乗るだなんて、どうかしている。

気が狂っているよ!

ぎゅうぎゅう、ぎゅうぎゅう詰められてさ。

あのひとも、このひとも。通勤通学。

朝からごくろうさま。


学校へ向かう途中。会社に入る前。

いつも立っている警備員さんはいないかい?

いつも自転車を走らせている奥さんはいないかい?


君たちはそれを知っている。

だから、そっと道を譲れるのさ。


そう、いつもの時間には、いつものひとがいるのさ。

そして君も、そのひとりなのさ。あなたも、そのひとりなのさ。


ぐるぐる。

ぐるぐる。

いつも同じことの繰り返し。

飽き飽きするくらい、何も変わらない。

あまりにつまらないから、目をつむってたって、逆立ちができそうだね。


昼休みになれば購買に走る。食堂へ行く。

今日はハンバーグ定食。なんて豪華!

気に入りのコロッケパンが手に入っただなんて、なんて良い日!

あんたは昼休憩には煙草を吸うのかい。肺が真っ黒になってしまうよ。

受動喫煙対策はしっかりね。


ぐるぐる、ぐるぐる。

まいまい螺子巻き、螺子を巻く。


学校が終われば家へ帰る。

仕事が終われば、やっぱり家へ帰る。


でもたまに。

寄り道もするし、飲み屋にも行く。

人生、ほどよいスパイスが大事なのさ。


螺子巻き模様が、少し歪になる。

でもそれが、君らしい。

それが君なのさ。その模様、味があるね!


夜になってお布団に入ったら。

すやすや、すやすやお休みなさい。

いい夢みてね。

睡眠時間はしっかりね。


そしたらまたいつもの朝が来る。

いつもの目玉焼きとクロワッサンを食べて。

いつもの通りに慌ただしく支度をする。

いつもの電車に飛び乗って。

おはよう!おはよう!


ぐるぐる。

ぐるぐる。

螺子巻き模様は続く。


ぐるぐる。

歪んで重なることもある。

隣と隣がくっついてしまうこともある。


過去はどんどん小さな円に。

現在は大きく目立つように。

時には等間隔に、時には不揃いに。


永遠の眠りに就くまで

それはずっとずっと描かれる。


ほら、ね。

カタツムリでしょう?

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