第6章140話:閉幕

貴誌村『それでは最後に――――今大会の優勝者、ルミ選手』


貴誌村『チサトン選手という、ダンジョン配信の大先輩を前に、一進一退の戦いを繰り広げ、最後には見事、激闘を制しました』


貴誌村『文句のつけようがない、素晴らしい戦いを見せてくれたルミ選手の、栄えある勝利をたたえ……優勝トロフィーを贈らせていただきます』







観客たちから、拍手が喝采する。


ルミが前に出る。


スタッフがやってきて、黄金の優勝トロフィーを渡してきた。


「ありがとうございます」


と言って、ルミが受け取る。






貴誌村『それでは最後に、ルミ選手から、今大会こんたいかいの感想をいただきたいと思います』






スタッフがルミに、マイクを渡してきた。


ルミはマイクを受け取ろうとしたが、その際にトロフィーを落としそうになった。


慌ててトロフィーを持ち直す。


片手でトロフィーを持つのは、持ちにくい。


そう思ったルミは、いったんトロフィーを、ステージ床に置くことにした。


マイクだけを手に持つ。


「……」


ルミがマイクを持った状態で、しばし黙り込む。


観客やスタッフは、ルミのことを少し心配した。


決勝前のあいさつでは、ルミは、微妙なあいさつをしていた。


ゆえに、ルミが人前で話すのが苦手であるのは、なんとなくみんな察している。


だから、今回のあいさつでも、ヘンテコなあいさつをしてしまうのではないかと思った。


しかし。


ルミは、しっかりとした口調で、話し始める。


「私にとって、今回の大阪大会は、とても得るものが大きい大会でした」


そう、はじまりの言葉を告げる。


「特に決勝戦、チサトン選手との戦いは、自分の人生観が変わるような衝撃がありました。私はあの戦いで、配信者とは、応援してくれるファンあってのものなのだと、強く確認できた気がします」


ファンの力で、どこまでも戦闘力を引き上げてきたチサトンの戦いぶりは、まさに配信者のかがみである。


想いを乗せたチサトンの剣は、美しく、尊く、そして強かった。


「とても、勉強になりました。この大会に出場することができて、本当に良かったです。あと――――」


そのとき。


ルミが取った行動に、会場にいた全ての者が、驚愕した。


いや。


観客や、スタッフだけではない……


テレビやネット配信で、大阪大会の映像を見ていた者たちは、全員、驚愕したことだろう。


ルミが自分の顔に手をあて――――


そっと、仮面を外したのだ。


仮面を取り外し、顔があらわになったルミ。


今まで、リスナーですら知ることがなかったルミの素顔が、ここで、お披露目となった。


「これからも、配信者としての活動を頑張っていきたいと思いますので……みなさん、どうか、応援よろしくお願いします」


素顔になったルミが、頭を下げる。


深く深く、礼をする。


一瞬の沈黙。


そして。


爆発するような拍手と歓声が、舞い上がった。





「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


「ルミィイイイイイイイ!!」


「決勝、良い試合だった!」


「これからも応援するからな!」


「俺もファンになったぞおおおおお!!!」


「素顔のお披露目だあああああああああ!」




さまざまな声が飛び交う。


どれも、ルミを賞賛し、応援する声だった。


スタッフや貴誌村、そして、選手たちも、ルミに拍手を送る。


ルミは顔を上げ、スタッフにマイクを返した。





貴誌村『ルミ選手、ありがとうございました』


貴誌村『それでは、これにて閉会式を終了いたします』


貴誌村『会場のみなさま、このたびは大阪大会にお越しいただき、誠にありがとうございました。また来年度の大会でお会いしましょう!』





かくして、バトルアリーナ大阪大会は、閉幕する。


選手たちがステージから退場していく。


観客たちは、惜しみない拍手と賞賛を、選手たちに送り続けた。







最終章 完





――――――――――――――――


本作はこれにて完結です!

無事に、本編完結まで書ききることができたことを喜ばしく思っています。

これまで応援ありがとうございました!


今後の予定としましては、本編後のアフターストーリーを執筆していきたいと思っています。

スローペースで進めていく予定ですので、ご興味のある方は、のんびり更新を追っていただけると幸いです!

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ダンジョン配信者の私、バズる~超難関ダンジョンだと知らず、初級ダンジョンだと思ってクリアしてしまいました~ てるゆーぬ(旧名:てるゆ) @teru0024a

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