第6章139話:チサトンの感想

バトルアリーナの閉会式は、実質的な表彰式である。


ゆえに、名前が呼ばれ、賞が授与されていく。





貴誌村『では、まずは敢闘賞かんとうしょうから――――』





敢闘賞の受賞者として、名幅なはばサキという名前の選手が呼ばれる。


名幅選手が「はい!」と返事をして、前に出る。


名幅選手は、第2回戦において、自分より圧倒的に格上だった相手に、必死で食らいついて勝利した選手だ。


まあ、その次の試合でチサトンに瞬殺されてしまったのだが……


名幅選手の健闘ぶりは多くの人に感動を呼んだ。


ゆえの敢闘賞である。


証明として、名幅選手に、表彰楯ひょうしょうたてが授与される。


会場スタッフが、名幅選手に、表彰楯を贈った。


名幅選手にマイクが渡される。


名幅選手が試合における感想を語る。


語り終わったら、マイクを返却した。







貴誌村『次に、特別優秀賞―――』






特別優秀賞の方に、表彰楯が授与される。


以上の流れで、司会は進み……


魔法賞、


魔法局長賞、


一発ギャグ賞、


などなど、


まともな賞から、なんだかよくわからない賞まで、授与されていった。


そして。






貴誌村『準優勝――――チサトン選手』


チサトンの名前が呼ばれる。


観客から巨大な歓声が上がった。


チサトンが前に出る。


貴誌村『チサトン選手には、まず準優勝賞を授与いたします』


チサトンに、銀色の表彰トロフィーが贈られる。


拍手喝采が炸裂する。





貴誌村『また――――』


貴誌村『チサトン選手が見せてくれた夢想剣は、多くの人間を魅了し、また、研究資料として価値のある映像を残してくれました』


貴誌村『よって、準優勝賞に加え、剣術賞も、授与させていただきたいと思います』





ふたたび、大きな拍手が鳴った。


スタッフが、マイクをチサトンに渡す。


貴誌村『それでは、チサトン選手から、今大会についての感想をいただきましょう』


と、貴誌村が言う。


チサトンは、トロフィーを左腕の脇に抱え……


右手でマイクを持って語り始めた。


「感想か。そやな……まず、みんな、応援ありがとう!」


と、チサトンが軽く礼をする。


観客たちが拍手で応じる。


「ウチにとって、今大会こんたいかい、一番記憶に残ったのは、やっぱり決勝戦や。知っての通り、ウチは優勝を逃してしもた。勝てんかった」


チサトンが、微笑みながら、言う。


「でもな、恥じない戦いはできたと思っとる。今後、決勝の試合動画は、何年、何十年と、視聴され続けると思う。ウチが負けてしまった試合の動画やけど、それを見られるのが、恥ずかしいとは思わん」


曇りのない顔で、チサトンが告げる。


「だって、ホンマに良い試合やったからな。あれだけの戦いができたことは、ウチにとって、一生の誇りや」


勝っても負けても。


名勝負として語り続けられる。


だから、恥はない。


見苦しい試合をしたわけでは、ないのだから。


「でも、いつかはルミさんにリベンジしたいな。そんときは、またみんな、応援してな!」


ふたたび拍手が起こった。


チサトンが、スタッフにマイクを返す。





貴誌村『チサトン選手。ありがとうございました』


貴誌村が、そう述べる。







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