ホイップだけサンド
俺は屋上で尻の穴を閉めて仙骨を立てる。背骨がまっすぐにする事で重心をストンと落とす。丹田のその下に、子宮があればきっとここにあるんだろうな、と思いながら站を練る。
站を練る、と言っても少年漫画の様に気を練るといった物ではない。僅かな動作で初動が行える様に地に根を這わせる感じだ。
大きく息を吸う。肺に満たさせた空気を身体に循環させるイメージを浮かべた。内に力を貯める。そして、サイコバニー先輩にそれを叩きつける想像をした。
サイコバニー先輩は人を舐めきった笑顔で、当然の様に俺の攻撃をいなして、首元にペンを刺された俺が横たわる。クルクルと回るウサミミとハートマークが苛立ちを倍増させる。
駄目だ。やはり武器がいる。暗器か。虎の爪が好みだ。手の内に鉤爪を隠すその武器は、拳を握ると鉄の爪が指の間から出てくるそれは、他の武器を握れるという最大の利点があった。しかし、そのあから様な武器を学校へ持ち込むのは難しい。鉤爪はカバンの中の持ち物をズタズタに切り裂いてしまう。
なら、アレを使うか。俺は腰にぶら下がっているポーチに手を突っ込んだ。
「相変わらず1人だな。根暗。」
陽気なあの声が聞こえてきた。相変わらず気配が悟れない。足音がしない。
「サイコバニー先輩。お疲れさまです。」
「挨拶はいいから、あれだしな。」
俺はポーチからおしぼりを取り出して先輩に放り投げた。クルクルと回転しながら一直線にサイコバニー先輩の顔へと飛んでいく。
ポーチの中の小さなケースに指が触れる。そこに入れられたモノは日本人のほとんどが知っている物である。それを指に引っ掛け手に握る。
放り投げられたおしぼりを掴むサイコバニー先輩。俺は手の内に隠したそれの刃を指の隙間から出し、サイコバニー先輩の首元を狙った。
その暗器は忍者の代名詞とも言われる武器である。しかし、本来の使い方を知る者は少ない。その暗器は手の裏に隠す事からこう呼ばれる。手裏剣と。
たとえ見つかってもおもちゃと思われ見逃されるそれを俺は常備していた。枚数は2枚。本来は投げて使う物ではないからそれで必要十分だった。
サイコバニー先輩に放り投げたおしぼり事、手裏剣で首を斬りつけるつもりだった。
しかし、サイコバニー先輩はおしぼりを庇いながら前進してきた。俺の手の内に握られた手裏剣の刃は先輩の頬の皮を薄く切った程度でかわされた。
サイコバニー先輩の右足の裏で俺の肩甲骨が押された。喧嘩流の前蹴り。それは勢いを殺し体勢を崩す。
俺は無様に床に転がりサイコバニー先輩を見上げた。相変わらず狂った目をして笑っていた。
「おしぼり、もう1本渡しますので許してくれませんか?」
もはや、許しを請うしか道はない。先輩のローファーが顔面を叩く。蹴られた。おもっいきり。
仰向けになると、今日も空が青く澄んでいて世界を照らしていた。あぁ何をやってんのかな。鼻血がダラダラ流れ出て脳が揺れている。全てがどうでもよくなった。
「3本だな。今日の事はそれで許してやる。」
サイコバニー先輩の声が聞こえた。バックに入っているおしぼりは残り5本。予備を持ってきていて助かった。
俺はグルグル回る思考を押し殺して、床を這いずり、バックからおしぼりを取り出した。それをサイコバニー先輩は掴み取り、むしゃぼり食う。
俺も食べるか。と、バックからホイップだけサンドを取り出してビニールを開けた。
血の味と回る意識のせいか、その後トイレで吐いてしまった。
サイコバニー先輩との秘密のデート あきかん @Gomibako
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