スコープに映ったその姿、その景色。引き金に掛けた指がどう動いたかさえ目に浮かぶような、ハードボイルドの原義どおりの乾いた文体。見習いたい。しかし難しい。そう思わせられる傑作です。
短編とは思えない、ハードボイルドな世界。復讐に燃える男。くゆるタバコ。指先には悲しみ。姿は、ボロボロの生活にやつれ、目は狼のように、ギラ、と光を宿し……。映画のワンシーンみたいなんです。この主人公は、どうなるんだろう、と、読み進める手が止まらず、読了後は、映画を見たような満足感がありますよ!
妻を殺され、娘を奪われ…。15年という長い年月と主人公の想いが短編の物語に凝縮されています。ラストシーンに鳥肌が立ちました。まるで映画を観ている様に、復讐という歯車が動き出し…。一つの家族に起きた不幸を不幸という言葉だけで片付けてはいけない。最後までドキドキが止まりまらない物語!
妻を殺され娘を奪われた男はゆっくりと牙を研ぎ、仇を討つ為の仕草を何十・何百……万以上かもしれず繰り返し、その日を待った。しかし決行の日、仇の隣にいたのはまさかの……?冒頭の煙草の香りが全編に噎せ返る、ハードボイルドな短編です。読み終えた後のえもいわぬ感じを存分に味わって戴きたい。
しびれた。