ポリコレ・コンプラをガン無視した過激な作品を作った筈が……アレ?

@HasumiChouji

ポリコレ・コンプラをガン無視した過激な作品を作った筈が……アレ?

 公安と言っても日本で言う「公安」と同じ意味では無い。

 中国こっちでは警察機構全般の意味だ。

 ともかく、その日本の映画監督は、中国の公安から取調べを受けていた。

「貴方の御国の感覚では、これは汚職に当らないのかも知れませんが……流石にこれはマズいですよ」

「は……はぁ……」

 取調べ官が容疑者である監督に見せた写真に写っているのは……その監督と何人かの男が、様々な建物に入って行く様子だった。

 上海の高級レストランに、東京の渋谷か新宿歌舞伎町か池袋かの……怪しげな店。

「こちらの方は……今、日本の警察に詳細を問い合わせていますが……未成年の女性を『買える』ようなお店の可能性も有るようですね?」

「え……えっと……それは……その……」

「貴方の国の『映倫』とやらは、あくまで、業界団体のようですが……我が国の『映倫』に相当する組織の職員は、れっきとした公務員です。御自分が何をやられたか、判ってますか?」

「あ……あの……えっと……」

「貴方が買収しようとした人達が、貴方の国の俗語で言う『娑婆』に出て来られるのは……何十年先か見当も付きませんよ。そして、それは貴方も同じです」

「は……はぁ……」

「で……貴方の映画は、?」

「え……えっと……

「はあ?」

「いや、だって、ポリコレとかコンプラとか……そう云う欧米が押し付けてくる価値観をガン無視した過激作を作ったつもりだったのに……」

「たしかに、暴力描写や性描写には……まぁ、ある意味で過激なモノが有りましたね」

「ええ……なのに、こちらの国の映画検閲をあっさり通った事が全世界に知れ渡ると……過激な作品として売ろうとしている我々の戦略が……その……」

「信じ難い理由ですが……ああ、そうだ、私の好きなハリウッド映画のセリフが有りましてね……。ええっと、変形金剛トランスフォーマーの監督が撮った作品のセリフですよ……」

「へっ?」

「『彼らの最も重い罪を罰する事は出来なかった。その罪とは馬鹿だった事だ』ってのがね……」

 取調べ官は、映画検閲委員が書いた、この監督の映画の総合評価を見ながら、そう言った。

 その総合評価には、こう書かれていた。

『明らかに撮影中に重大な人身事故が起きたと思われるシーンが複数有る為、その点のみ青少年の人命尊重精神に悪影響が考えられるので成人指定が望ましい。その他の点に関しては、「欧米的な人種平等観念を欺瞞と見做している」「欧米的な民主主義・自由主義・人権観念の相対化」「伝統的な男らしさ・女性らしさの肯定と性的少数派を病気と見做し嘲弄する」「上位下達的な組織・社会の肯定」「政府の方針に反対する者達を否定的に描く」など、製作陣が我が国の政府の方針・政策・主張に親和的な思想を持っている事は明らかなので、特に修正の必要なく上映を許可して問題ないと判断する』

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