消し忘れたタバコ

消し忘れたタバコ

　俺は重度のヘビースモーカーだ。

　高校生の時に格好いいと思って始めたのが最初だった。

　不良と言われようとも、俺は吸い続けてきた。

「このままじゃ、肺の機能が壊れてしまいます。禁煙をしてください」

　医者からはそう言われているが、俺は吸い続けた。

　俺の家系はもともと身体が丈夫だ。俺も大丈夫だ。

　そう思っていた。

　でも、消し忘れたタバコで火事が起きた。それも俺の実家で、だ。

　すぐに家族会議が開かれ、俺は破門された。

　大手の会社の御曹司だった俺は、それから合コンでは遊べなくなったし、仕事も見つからない。

　ボンボンだった俺にはそんな覚悟もなかった。

　タバコ一つで、ここまで落ちぶれるとは思わなかった。

　まさかの人生リタイアである。

　タバコひと箱を買うのにも苦労する。

　そして闇バイトで日銭を稼ぐ日々。

　それも長続きせずにすぐに足下を掬われる。

　警察のご厄介になり、今ではムショ暮らしだ。

　タバコなんてやめっちまえ。