こうじんがくる
@HasumiChouji
こうじんがくる
「吉田団地との連絡が途絶えた」
仲間の1人がそう言った。
連絡が途絶えた場所を地図上にプロットしていく度に……「こうじん」と呼ばれる「それ」の進路が、俺達が居る場所に向かっている可能性がどんどん高くなっていった。
いや……俺達がいるここさえも……奴にとっては、単なる通過点であり、俺達の事など、何とも思っていないのだろうが。
過去に「こうじん」が出現した際の生き残りの証言を総合すると、「こうじん」は俺達の存在を認識していないらしい。
まさしく……俺達にとっては、理不尽な自然災害のようなモノだ。
だが……俺達は、諦める事なく、「こうじん」への対処手段を模索してきた。
「『式』を打てる者は居るか?」
「居る。だが……」
この世界には、「こうじん」の同族ではあるが、「こうじん」のような問答無用で俺達を滅ぼす力が無い存在が無数に居る。
そして、「こうじん」の力は、俺達を滅ぼす事に特化したモノであり、同族には効かないらしい。
そこで、「こうじん」の同族達を霊術で使役し、可能ならば……「こうじん」を……。
「残された方法は……これだけだ。たのむ」
「判った。だが……期待はするな」
生き残った霊術使いは印を組む。
「南無巨旦将来大鬼王。南無呪詛神。南無黄泉八大雷神。南無五蘊魔。南無煩悩魔。南無死魔。南無天子魔……」
呪文が俺達のアジトに響き渡る。
「式に出来そうな奴を見付けた……成功……クソ……『こうじん』らしき気配は感じるが……駄目だ……見た目で判別が付かない」
「そ……そんな……馬鹿な……」
「俺達にとっては天災そのものである『こうじん』も……ヤツの同族にとっては平凡な一個体に……ぐわっ」
「おい……」
「に……にげろ……ここをすてろ……俺の式と……俺の体を通じて……『こうじん』の力が……」
霊術使いの体はボロボロに砕け始め……。
冗談じゃない……。
俺達が何をした?
俺達は、ただ、生き続けたかっただけなのに……。
何故……。
アジトの外は……平穏な夜の町だった。
バイパス道路沿いの店には、まだ、灯りが点っていた。
でも、どっちに逃げればいいんだ?
「こうじん」が来た方向か? いや、たしかに「こうじん」が後戻りする可能性は小さいが……でも、「こうじん」と
それ以外の方向だと……「こうじん」にとっては、ここも通過点だとするなら……これから、どっちの方向に行くのか見当が付か……待て……。
その時、俺は、仲間の霊術使いが消え去った時に感じたのと同じ気配を感じた……。
まて……まさか……そんな……。
「
ただ、存在しているだけで、周囲数十mに居る悪霊を消滅させる事が出来る人間。
タチが悪い事に……そいつらは……俺達を消し去っているという自覚すら無いらしい。
そんな奴らの1人が乗っているらしい
こうじんがくる @HasumiChouji
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