オトダケ

テラホラ拓也

オトダケ(読み切り)

 三連休最後の日曜日、音楽教室から帰宅し、親の帰りを待っていた19時頃。

 「バンッ」というポストを閉める音が聴こえてきた。

 ((母が帰ってきたのか))二階の窓から覗くと、誰もいない。

 自分の家は集合住宅の中にある一軒家でそこの家は全ての扉・ポスト・ランプなどのデザインや材質が統一されている。

 つまり、ポストの音質程度も同じである。近所の人が帰宅したのだろう。そのまま漫画を読んでいたら、今度は、

「ダン! ダン!」と扉を開けようとする音が聞こえる。強盗かと思い、電話機のそばまで近寄る。すると、

「チリィー、リ、ィーン」

 とドアベルの鳴る音……

 でも、扉の閉会音が聴こえてこない。

 階段から覗こうと、廊下に出る。

 その途端、「ブゥゥーーーン」…………  扇風機の音。

 一階の自分の寝室から…


 すぐさまリビングに向かって全力疾走し、その場にあった毛布にくるまった。走った勢いとかでなく無尽蔵に湧く恐怖で息切れを起こしていた。     

 すると、「ダン!ダン!ダン!」

 階段を登ってくる音。 もう間もなくリビングに……………………………

 ………着く。


「ダン!」到着。

「ズサッ、ズサッ ズサッ、ズサッ」何者かが廊下を歩いて来る。

 「キィ、ィーーー」ドアが開く。そして、


「トゥポッ、トゥポッ。」

何かが垂れる音。そして……


「パツァンッ‼」電気が消える。


(あの垂れる音は何だ?)

恐怖は一巡し、このような好奇心となるも、本能との力の釣り合いで、自分の視界のみが動いた。


 だが、その先は見えなかった。暗かったからでも、何もいなかったからでもない。鮮明な音だけが、そこにはいたのだ。

 その瞬間、脳内に警報が鳴り響く。姿形のないなか、その音ダケの存在は、こっちに向かってくる。が、なぜだか苦しんでいるようにも感じる。音でわかる。

 そこに「ガチャッ」、母が帰ってきた。すると、その「オトダケの存在」は消えていた。

その後隣人さんに話を聞いたところ、私の家は以前、別の住人がいて、居直り強盗に出くわし、腹をナイフで刺されたという。血痕からして私が聴いた音の順番で部屋を廻り、リビングで息絶えたそうだ。

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オトダケ テラホラ拓也 @toyo0706

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