第7話コピー

「つまりアマネの魔導書性質で、この街を出る為の邪魔者を倒して欲しいの」

「えーっと説明が、大雑把すぎない?」

クレアから言われたのは、色々説明を省いたものだった。

自分が、魔法をコピー出来るって話をしていたけど、そこからどうして街を出る為に話になるんだ?

天音は、まったく理解してないが、クレア自身は今の説明で満足したらしく、ごそごそとレザーポーチを漁っていた。

「クレア!!店出るなら金払え!パンと壊した扉両方だからな」

「時間の繰り返しで、無かった事になるんだからいいじゃん。パンのお金は、払うけどさ」

レザーポーチの中をいじっていたのは、お金を取り出そうとしていたのか。

いつもこの二人ケンカしてるな。

小さい少女と熊のような大男。

側から見れば、恐喝のようにしか見えない。

すると、割り込むようにノエインがクレアの前に出た。

「クレア。私が、払うわ」

「え?いいの?」

「いいよ。今日は、とても気分がいいから」

そう言って筋肉に何かを渡していた。

緑色の綺麗な石。

濁った緑色ではなく、透き通った緑色をしている。

凄く高そうなものに見えるが、もしかしてこの世界ではこれが通貨なのか?

筋肉はどんな顔をしているのか見てみると、口を大きく開けて目も大きく開いてる。

とんでもなく驚いてるようだった。

周りの客もざわざわとしている。

「おいおいノエイン。こんな高価な魔石受け取れねぇよ」

「いいのよ。これまでクレアが壊してきた物とかも合わせてあるから」

ノエインはそう言って筋肉が、返そうとしている魔石と呼ばれた緑色の石を受け取らなかった。

筋肉の反応から見るにこの世界でも、緑色の魔石はかなり高価なものらしい。

「そんな高価なもの渡しちゃって大丈夫なのか?」

「心配しなくても大丈夫よ。魔導書君。どうせ今日は時間が繰り返しになる日だからね。それにこれは、おまじないみたいなものだから」

「魔女なのにおまじない?そんな理論のかけらもない事を言うなんて、ノエインらしくないね」

「こんな狂った世界に閉じ込められたら、奇跡の一つや二つ願いたくなるわよ。それに今回は、喋る魔導書ってゆう今までになかった存在があるのよ。だから、奇跡を信じてのおまじない」

魔法が存在する世界だったらおまじないとか、神頼みとか普通にあるのかなって思ったがそんな事はないようだ。

奇跡やおまじないと魔術には、何か明確な違いがあるようだ。

「ふーん。まぁいいや。ノエインの優しさに感謝するよ。じゃあ、私達壁際に行くから。みんなバイバイ」

「バイバイじゃないわよ。当然私も行くに決まっているでしょ」

「え?普通に嫌だけど」

人は、こんなに嫌って感情を表に出せるんだな。

言葉なんていらないくらい顔に出ているぞ。

そんな顔されれば、当然ムカつくわけでノエインは、かなりクレアを睨んでいる。

「今までのツケを払った大恩人の前によくそんな事が、言えるわね。魔女である私が一緒に行く事が、何が不満なのよ。逆に頼もしいくらいでしょ」

「いや、魔女として尊敬しているけど人して尊敬できないじゃん。お金持ちだけさ」

「そんなに酷いのか」

「酷いってもんじゃないよ。ノエインとはこの街来る前からの知り合いなんだよ。だから言えるけど、本当に魔女になる為に生まれてきたような人だよ。人の心が無いっていうより、そもそも人じゃ無いって感じ」

クレアもいきなり燃やしくるし、ドアとかも破壊するしで、マトモじゃない。

そんなマトモじゃ無いやつが、こんな事言ってるんだから、やばい奴ななのは確かなのかもな。

「酷い言われようね。じゃあ今回は、人としてじゃ無く、魔女としてついていく事にするわ」

そう言って床に何かを書き始めた。

マンホールくらいの円。

その中に、よく分からない文字のようなものが、次々に書かれていく。

その文字は、赤だ。

だが、どう見ても絵の具やインクの赤じゃない。

生き物の血。

しかも、少しじゃなくてペットボトルくらいの瓶にたっぷり入っている。

それを指に付けて、文字のような何かを描いていく。

自分が本じゃなかったら、生臭い血の匂いを感じていたかも知れない。

その姿を見て、筋肉が顔を顰める。

「おいおい。転移魔法を使うなら店の外でやってくれよ」

「ごめんなさいね。すぐ帰ってくるから、このお店に直接帰って来れた方が楽だと思ったから」

「しょうがねぇな。今回だけだぞ。おい!円の周りにいる奴らは、離れた方がいいぞ。転移魔法を使った後は、周りが吹き飛ぶからな」

円の近くで、集まっていた客が蟻のように散っていく。

周りが吹き飛ぶって中々ヤバくないか?

「転移魔法?ゲームとかで聞いたことある。一瞬で、違う場所に行くやつでしょ」

「異世界から来た人が、よく例えで出すわね。げーむみたいなだって。転移魔法だけじゃなくてこの世界全体が、げーむに似てるみたいね」

よく例えで出るって事は、異世界から来る人って珍しくないって事だな。

もしかしたら、クレアより異世界から来た人に詳しい可能性もあるな。

「ちょっと。私は、一緒に行く事を許可してないよ。それにわざわざ転移魔法なんて使わなくて良くない?歩いて行ける距離なんだし」

「クレア。あなたは、相変わらず頭が足りないわね。この魔導書さんの記憶する力が、どれだけ強いのか確かめる為でもあるのよ」

明らかに不満がある顔をしているクレアに対して、ノエインは天音を指さして言った。

それを聞いたクレアは、ハッとした顔して大きく手を叩いた。

「なるほどね。私の魔術だけじゃなくて、ノエインの魔術も出来るのか実験は、必要だね」

「そういう事」

さっき言っていた魔術のコピーって事か。

つまり、この二人が言って事は、

「転移魔法を覚えろって事か?」

それを聞いた二人は、ほぼ同時に

「正解!」

と言った。

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異世界に来たら魔導書になってました。 @twweqte2

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