パスタを茹でるときれいに並んで、たっぷりつぶつぶやってくる

ある日常を切り取ったような話。
女の無神経な残酷さと悲劇の連鎖、心情がよく描けている。

母と対になっているサキは、語彙が少ない。
つまり、母親も語彙が少ない。
気遣っているけれど、ひどい言葉になってしまうのだろう。

でも母親の言ったことは当たっている。
妊婦に、たらことタバコの摂取は良くなかったと思う。
そう考えると、遠回しに娘のヒロを指摘しながら、中也を気遣い、励まそうとしていたのだと思う。

一般論として、生存競争と食物連鎖のなかで捕食され、孵ることなく終わってしまう命もあるし、病気や事故、不遇の出来事で孵らないときもある。
「だから、誰のせいでもないでしょ」と、サキはいいたいのだと思う。
けれども、わざわざ自分から「たらこってさ、魚の卵なわけじゃん」と結びつけるようなことを言って、たらこをプチプチ潰して食べる姿を、子宮外妊娠で子供をなくした父親である中也に見せつける無神経さには気づいていない。

中也には、自分の赤ん坊をサキに食べられたようにみえたかもしれない。

義母と義妹の二人から、「辛いね」「悲しいね」と寄り添う言葉をかけてもらって励まして欲しかったはず。その言葉もなく、無神経なことをされたから、たまらずに大泣きしてしまったのだ。