咽の鳴る

ナナシマイ

咽の鳴る

白衣咲き命あずけると会釈す


「よく来たな」声帯ふるわぬかすれ息


にわか選りの病衣はギンガムチェック


語られるたらい回しに込みあげて


体力つける細チューブ頼んだぞ


穴あけてきっと食事も通るから


言えないまたカルボナーラ作ってとは


乞われるまま差し出した手に触れる皮


肥えてますとも「プチプチだ」と笑われ


術後は傷だらけになる?これ以上?


耐えてくれ耐えてくれよと祈るよに


名を呼ぶその声を弔うことなく


迫る時ゆるりと父娘を気遣い


隔たりはマスクでさえなく在る扉


きょうの空映して晴れやかなまたね


二十分のさいご足りるわけないでしょ


恥もなし大河に雨を降らせたとて


消えた語彙なんていらない抱擁を


こまり顔湛えてもまだ咽の鳴る


風炎や拭う汗に涙知らず

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咽の鳴る ナナシマイ @nanashimai

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