隻腕のエスペランサ

けんぼー

隻腕のエスペランサ

 「世界は残酷だ」そう戦火で暗い空に呟く。もう誰もいない守るべき家族も助け合った仲間も無くしただただ絶望の中にいた。

死んでしまいたいそう心から望むほどに身も心もズタボロだった。でも、死ねない理由がある託された希望を繋ぐため俺は生きなければならないこの『呪われた希望の為に』


 「痛い…痛い…死にたくない。誰か助けてくれ」あちこちでそんな声が鳴り響く。もちろんそんな救世主なんていない。田は焼かれ家は崩される力を持つものが持たざるものを蹂躙していく。

まるで公国兵たちは狩でも楽しんでいるようだった。「こんなとこにまだ生き残りがいるじゃねえか。この村は皆殺しだからな恨むなよガキ」大きく剣を振り被る。

辺りに血の水溜りができる。「俺たちが生き残るためだしょうがない」高らかに笑いながら立ち去っていく。


 「なんで俺は生き残ったんだ」言葉が溢れる。打ちひしがれていると不意に大きなラッパが鳴る「全軍撤退せよ。奴らが来るぞ!」戦場に大きく怒鳴る声が聞こえる。

「ああ、おれも奴らの仲間になって死ぬのか」もう誰もいないただパチパチと火の音だけが聞こえる村だった場所を歩く。


 うめき声が聞こえる。それはサナトスと呼ばれる死者の群れ公国は自国が狙われないように近隣の村を定期的に襲い奴らに餌を与える。しかしもう帝国が狙われるのも時間の問題だろう。サナトス達は生きた物を無差別に殺すそれは人間も動物も例外はない。

「こんな死に方はしたくなかったな」そう思いながら飛びかかってくるサナトス達に押したをされ身体を食いちぎられていく。痛みがだんだん鈍くなっていく身体がサナトスへと変容しているのだろう。


 意識がこときれる眼を開いた先は純白しかない世界だった。底に浮かぶ黒い影以外は『驚いた。ここに人間は来れないはずだけどね』そうおさない少女の声で影が語りかけてくる。

「ここは何処なんだ?」そう影に問いかける。『名前くらい名乗りなよ。まあいいけどさなんの意味もないし、此処は外界僕の住処それ以外のなんでもないよ』影がだんだん白い世界を黒く侵食していく「何してるんだこれ足が…」全身が影で覆われていく。

「動けよ!くそッ!なんだこれやめろよ!」影に喰ってかかる。

『君面白いね。怖くないの?僕のこと』「お前なんか怖くない!」そう言い切ると影は全身を飲み込んだ。『初めて言われた怖くないって…君になら力を貸そうかな』影が心臓に集まっていく。

『僕はタナトス!君に盟約と新たらしい名前を…そうだな』

「おい!勝手に決めるな!」そう叫んだ瞬間『君は今から隻腕のエスペランサいい名前だろう?じゃあまた会えるのを楽しみにしてるよ』


 目が覚めると目の前には大量のサナトス達がこちらを見て立っていた。「王よ…」口々にサナトス達が口にし出す「救いを…復讐の機会を…どうか王よ…」サナトス達は口々に懇願してくる。

心臓が昂るなぜか見たことない土地の蹂躙が頭に流れ込むそれは怒りと共に。

気づいた時には声を張り上げた「復讐を!俺たちの怒りを!悲しみを!公国の奴らに復讐を!」


 大きな地響きと共に俺たちは公国に傾れ込むそれが終わりのない事だとわかっていても復讐は終わらない一度は死んだ身もう一度死が訪れるまではサナトス達の英雄として彼らを導こうそれが俺が背負った希望なのだから。

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