あぢさゐと諏訪姫 👘

上月くるを

あぢさゐと諏訪姫 👘





 梅雨の季節の日本列島の花の代表は、なんといっても紫陽花ではないでしょうか。

 ひとつの花房に何色もの淡彩が散りばめられたものや、葉と同じ緑や純白のもの。


 それぞれに別種の趣きがあり、かっと陽が射す梅雨の晴れ間はもちろん、細かな雨にしっとり降りこめられていたり、空も暗い土砂降りで重そうに垂れていたり……。


 名のいわれは青い花(花びらに見えるのはがく)が集まって咲く姿からあつさいが転化したそうで、別名に四葩よひら七変化しちへんげ(花言葉:冷たいあなた、移り気)があります。


 緑色の花の種をアナベル(花言葉:寛容、一途な愛、ひたむき)ともいい、ほかに西洋紫陽花、額紫陽花、柏葉紫陽花、玉紫陽花、山紫陽花、蔓紫陽花、糊空木のりうつぎなど。




      🌺




 その紫陽花にまつわる、ごく短いお話をひとつ。ヾ(@⌒ー⌒@)ノ


 長野県諏訪湖畔に位置する「小坂観音院」(龍光山観音院)は井上靖さんの代表作『風林火山』(大河ドラマも)で広く知られるようになりました。すなわち高島城主諏訪頼重のむすめ・由布姫(湖衣姫・諏訪御料人、不肖くるをの設定は諏訪姫 (*'ω'*) )が武田信玄の側室となって勝頼を生んだあと、当院で暮らす設定になっていたから。


 それをご縁に諏訪湖を一望する高台に諏訪姫の供養塔を建立し、八百株の紫陽花も植えて全国から参詣客が訪れるようになったそうですから、まさに縁は異なる……。


 考えようによっては、不本意にも父の敵に娶られた諏訪姫のふるさと諏訪への望郷の念を後世の人たちが適えて差し上げたと言えなくもない、ほろりとしたお話です。




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