総括

佐波木 燕真


 テーマは、天才や秀才に一目置かれる凡人。

 世の中に天才の類いは存在をする。普通の人間では努力をしても、天才には勝てない。だけど、一握りの天才を除けば、次に強いのは努力を怠らない凡人だと思う。凡人は、挫折が身近にあるので、天才よりも立ち直る手段を知っている。努力をしても天才には勝てない可能性は高いが、努力を放棄すれば勝つ可能性はゼロになる。燕真は、堅実な努力家ではないが、物の力を自分の力と見誤ったり、大言壮語で混乱させたり、自分の能力を見抜けずに周りに迷惑を掛けるような、軽率な行動はしない。中学時代の陸上競技大会を経験して、「諦めずに頑張れば周りが評価してくれる(頑張ったふりや我を通すのはダメ)」ことを知っている。佐波木燕真は、そんな「頑張る凡人」をイメージしたキャラ。


 平和を守る大役は果たしたが、本人にはスーパーヒーローになった自覚は無い。燕真は、序盤は給料の為に戦い、全49話を経過させたラストでは「たった1人の少女に対するヒーロー」になることを望んだ。人生なんて、それくらいが精一杯と思っている。


 何の魅力もない凡人が美少女に好かれるのは妄想すぎて面白くない。だから、「ただの凡人が天才美少女に好かれた」ではなく、「頑張る凡人に、人の心を理解できない半妖美少女が興味を持った」という展開にした。



源川紅葉


 テーマは天才。

 作者には無い要素だらけのキャラなので、全く感情移入が出来ない。無駄な努力ばかりをして、平凡ゆえに他者を認めて受け入れる燕真とは対極の位置付け。燕真の持っている物を、紅葉は持っていない。努力をせずとも、才能と器量で物事を思い通りに進められるので、挫折に対しては極めて脆い。


 紅葉と言う人格の半分は、燕真で構成されている。燕真にばかり執着をして、燕真をバカにする奴は全部敵、燕真を誘惑する奴も全部敵、燕真を束縛する行為は愛情表現のつもり。重度な恋愛脳から発揮されるワガママを、出来る限り嫌味にならないように描いた(つもりです)。


 粉木は紅葉を警戒している。雅仁は紅葉を特別扱いしている。燕真は、紅葉の特殊性や出生を知っても、霊感ゼロゆえに異質ぶりが解らず、紅葉を「ちょっと騒がしいけど普通の女の子」として扱っている。だから、紅葉は、普通に扱ってっくれる燕真に絶対的な信頼を寄せている。紅葉の本能は、「自分が普通になること」を望んでいるので、紅葉を特別扱いする男性では、紅葉のハートは射抜けない。これは、物語のスタート時から通しているテーマの一つ。

 人懐っこい性格だが、燕真だけに認めてもらえば満足なので、本質には閉鎖的。年齢差が大して無いのに戦う佑芽と、YOUKAIミュージアムでの地位に不動にした麻由、能動的に地位を確保した2人は、それまで、無条件に居場所を確保できた紅葉からすれば、自分の立場を脅かす驚異にしか見えなかった。




粉木勘平


 前半のテーマは協調。後半のテーマは世代交代。

 未熟な燕真、天才肌の紅葉、エリート意識の強い雅仁、価値観が全く違う3人は、粉木が間に入らなければ纏まらない。燕真が器の広さを発揮して、粉木抜きでも協調できるようになった時点で、粉木の「協調」の役割は終了。キャラの軸が「燕真への世代交代」に変化をする。




狗塚雅仁


 テーマは迷える秀才。

 序盤で、エリート意識丸出しにして、未熟な燕真を小バカにするのは、ある意味、この手の物語のお約束。本当は、燕真と雅仁が頻繁に対立する構図を作りたかったが、燕真が器の広い凡人なので早々に雅仁の苦労を認めてしまい、代わりに紅葉と頻繁に喧嘩をしていた(紅葉が一方的に喧嘩を売っていた)。しかも、紅葉には雅仁以上の才能がある為、エリート意識も早々に打ち消される。藻掻きはじめてからの雅仁の方が、描いていて面白かった。エリート意識丸出しのままだったら、多分、終盤までは活躍していない。




葛城麻由


 テーマは代理ヒロイン1号。

 紅葉が挫折~闇落ちをして、ヒロインとして動かなくなる間を繋いで、ストーリーに彩りを与えるのが目的のキャラ。新キャラを作成するのではなく、『妖幻ファイターゲンジ』のメインキャラの1人を、サブキャラとして登場させることにした。




根古佑芽


 テーマは代理ヒロイン2号。

 麻由と同様に、ヒロインとして動かなくなる間を繋いで、ストーリーに彩りを与えるのが目的のキャラ。麻由だけでは紅葉の代役は務まらないと感じて、チョイ役の佑芽を代理ヒロインに昇格させた。

 佑芽を動かすと、退治屋のバックグラウンドが描けるので、扱いやすいキャラだった。




夜野里夢


 テーマか紅葉と真反対。

 性悪や色仕掛けなど、紅葉には出来ないことを片っ端からやってもらったキャラ。ラストは戦死をさせるつもりだった。だけど、嫌なキャラでもお気に入りなので死亡ラストにできなかったというか、「死んで悪事はチャラ」は違うような気がして、悪事の業を背負わせる形で最後まで生き残った。






 燕真と紅葉の関係が落ち着いて、妖怪との戦いが終わった。だけど、大魔会は先兵が敗北しただけで、組織自体は曖昧なまま。

 後日談になる大魔会との決戦は、描く気力が湧いたら描いてみたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

妖幻ファイターザムシード 凡人ヒーローと残念な美少女の王道パターンを目指した物語 通りすがりの一般人 @kamehoko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ