エピローグ

 かおるの良いところ一つ目。気になる情報を集めて、楽しもうとするところ。

 かおるの悪いところ一つ目。気に入らない人がいたら、決して認めようとしないところ。


 かおるのの良いところ二つ目。どんなときでも、味方でいてくれるところ。ただし、私限定。

 かおるの悪いところ二つ目。嫉妬深くて、少しでも他の人と話していたら怒るところ。


 ちょっと強引なところは、良いところなのか悪いところなのか。


 眠れない夜。布団を被って、かおるの良いところと悪いところを数える。羊を数える代わりに。

 こんなことをしているとかおるが知ったら、「結構みづきも、僕のこと好きじゃん」って、喜ぶのかな。圭や鈴城さんに対してはしたことないし。それでも。


――いつか×す


 途中で小学生の頃に見たプリントの記憶がフラッシュバックして、余計に目が覚めた。これがある限り、かおるに対して私が恋愛感情を持つことはないだろう。


 このままの関係を続けていくのは、お互いのために良くない。きっぱりと振ることができれば、かおるも諦めて、距離を置こうとしてくれるかしら。

 だけど、もしそれでかおるが離れていったら、私はどうやって人間関係を築けば良いのかな。新しい春を迎えて、一年生のとき時々話しかけてきてくれた鈴城さんは、私たちとは異なる理系へと進んだ。それで会う機会も減り、連絡先も知らないから、声を掛けにくくなったし。


 かおると付き合い続けるか別れるか、天秤にかける。

 迷って、スマホの検索窓に文字を入力する。


――友達 別れ方


 タップしようとした瞬間、メッセージが送られてきたことを知らせるランプがく。

「ひっ」

 あまりにもタイミングが合い過ぎて、独り言を呟いてしまう。


「みづき、小説好きだよね。こういうのがあるんだけど、どうかな?」

 URLのリンク先にあったのは、どこから見つけてきたのかわからない小説投稿サイトだった。とりあえず、上部に表示されている「最新情報」を見てみる。偶然なのか必然なのか、女の子二人の恋愛を表す「百合」小説を募集すると書かれている。

 適当にページをスクロールしていると、とある言葉が目に入った。


――自分を「友達」としか思ってくれない、恋しい女性への苦い片想い


 ねえ。片想いされていることを知っていても、「友達」としか思えない側だって、結構大変なんだよ。誰か気付いて。


 こう考えて、かおると私の間にあった出来事のうちの一部を、「小説」という形で伝えることにしたのだった。

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あの子の記録 ~「きみのまわりにあるものは?」後日談~ 須戸 @su-do

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