第5話

日曜日。仕事ころしも学校もない。なんなら寂しいことに友達からの遊びの誘いのFineすらない。俺は自室のベッドの上でゴロゴロしながらゲームをしていた。


俺「よっしゃー!3周目クリアー!」


美湖みこが隣の部屋から言ってくる。


美湖みこ「お兄ちゃんうるさい!」


俺は嬉しくてついつい返す。


俺「マルクの伝説が楽しすぎるんだよ。美湖みこもやるか?」

美湖みこ「みこはお兄ちゃんみたいに暇じゃないの」

俺「みこ様はお忙しいですもんね~」

美湖みこ「うるさい。埋めるよ。」

俺「ごめんなさい。冗談にならないからやめてください。」


ピコンッ

のんびりしているとき、Fineの音がなった。


俺はスマホをまだ開かずスマホを目の前にして正座をしながら考えた。

誰からだろう。ついついニヤついてしまう。

いや、待てよ。また公式Fineかもしれない。

何回そのトラップに引っかかって落ち込んだと思ってるんだ。

家族か友達か、それともやっぱり公式Fineなのか。

淡い期待を抱きながらスマホを開いてFineを確認する。


佐藤『お疲れ様です。今よろしいでしょうか。』


俺「しゃあ!」

まさかの佐藤さんからのFineに思わず俺は声を出して喜んでしまった。

落ち着け俺。佐藤さんからってことは仕事ころしの話だ。

全然喜べないじゃないか。


俺『お疲れ様です。はい。大丈夫です。』

佐藤『昨日の今日で申し訳ないのですが早速1つ目の依頼をしたくて』


やっぱり仕事ころしの話じゃないか。

微かな期待をしっかり裏切ってくれるな。いや、俺何の期待してんだよ。


俺『はい』


佐藤『今回はマッチングアプリでの結婚詐欺です。詳細はPDFにまとめましたのでそちらをご確認お願いします。期限は1週間です。報酬は100万円でお願いします。』


俺『わかりました。報酬は5000万円じゃなかったんですか?』


佐藤『いくらお金を持っている一般の依頼者とはいえ、うちの事務所を通していますのでうちの事務所にも多少の利益は欲しいものです。報酬を5000万円にしてしまいますと事務所にはほんの少ししか利益が出ません。そのため期限ギリギリなら100万円、期限から遠ければ遠いほど報酬の金額を上げさせていただきます。つまりは今日終わらせて提出していただければ報酬は5000万円とさせていただきます。ご了承いただければ幸いです。』


俺『了解しました。』


何か大人のやり取りって気がする。でもこの長文は何だか圧を感じるな。

俺は佐藤さんとのFineを最後まで確認してから急いで階段を降りリビングへ向かった。そして親父に報告をする。


俺「佐藤さんからさっきFineあって仕事ころしの依頼きたよ」

親父「あーそれ知ってる」


何で親父が知ってるんだ?佐藤さんとFineしていたのは俺だけなのに?

俺は次に母さんに報告をする。


俺「仕事ころしの依頼きたよ」

母さん「知ってるわよ」


え?何でだよ。

俺は美湖みこにも急いで報告をする。


俺「美湖みこ、依頼k」

美湖みこ「知ってるよ」


食い気味に言わなくても。何でみんな知ってるんだ?

リビングに家族みんな揃っていたので俺は聞いた。


俺「何でみんな知ってんの?」

親父「当たり前だろ」

母さん「報告してくれて嬉しいけど報告しなくても知ってたわ」

美湖みこ「お兄ちゃんかわいそうだね」


俺「知ってる理由を聞いてんだけど。何で俺こんなに言われなきゃいけないの。」

母さん「そういえば真樹まきには言ってなかったわよ」

親父「そういやそうだな。美湖みこ、教えてやってくれ。」

美湖みこ「りょーかい」


なんだ?俺の頭の中は疑問しかないぞ。


美湖みこ「いい?お兄ちゃん、みこは天才。」

俺「急に何言い出したんだ」

美湖みこ「お兄ちゃんのスマホはハッキング済み」

俺「は?」

美湖みこ「お兄ちゃんのFineは筒抜け」

俺「俺のプライバシーいつの間にかなくなってるんだけど」

美湖みこ「パスワードはお兄ちゃんの誕生日とうちの苗字」

俺「もうやめてください。ただでさえなくなっている俺のプライバシーがさらになくなってるから。」


親父「真樹まきのパスワードそうなんだ」

母さん「そこまでは知らなかったわ」

俺「ほら、余計に情報与えちゃってる」


俺「そんなことより今回の依頼はどうなんだよ」

親父「まだ1回しか仕事ころしの手伝いしてないくせにとか言うなよ」

俺「変なところ厳しいな」

母さん「まぁ依頼事務所がまだ甘ったれてるわよね」

美湖みこ「脅したりないね」

俺「美湖みこ!!その言葉もう使うなよ。というか忘れろ。」


親父「まぁ今日、仕事ころし終わらせればいいだけだから」

俺「そういや配信の件はどうすんの?」

親父「配信?」

美湖みこ「顔をうつさず殺す現場を配信するってやつ」

親父「あー忘れてた」

母さん「どうする?」

親父「まぁついてこさせてその場で眠ってもらうか」

母さん「常套手段じょうとうしゅだんね」

俺「そうなのか?」

美湖みこ「みこは現場には行かないからしらない」

俺「そこはちゃんと守ってんのね」

母さん「真樹まきも処理は見えないように毎回眠らせてるわよ」

俺「あれって親父たちがちゃんとしてくれてたんだ」


親父「真樹まき、佐藤さんに上手く連絡しといてくれ」

俺「どうせ見てんだから親父がしろよ」

美湖みこ「二重チェックだから大丈夫」

俺「俺のプライバシーは」

母さん「はなから無いわよ」

俺「それを言ったら終わりだろ」


美湖みこ「お兄ちゃんの女装でTとはもうマッチングしてるから安心して」

俺「俺がフリー素材かのように扱われてる」

親父「父さんがお客様と先に会っておくからいつもの路地にTを連れてきてな」

母さん「佐藤さんとは私と会うことにしといて」

俺「わかったよ」

美湖みこ「Tとは14時にカフェで待ち合わせにしてるからテーブルに置いておいたウィッグと女物の服に着替えて行ってね」

俺「用意周到だな」


―——————————


今は12時だ。

俺は佐藤さんにFineを送る。


俺『配信の件なんですけど、母について行ってください。路地につくと思うのでそこからの配信でお願いします。母のFineのコード送っておくのであとは母と話して決めてください。よろしくお願いします。』


佐藤『配信ですか?わかりました。恥ずかしながらすっかり忘れていました笑』


忘れてたなら言わなきゃよかった。

しかし言ってしまったものはもうしょうがない。


準備は整った。

俺は美湖みこから言われたマッチングアプリにログインする。

Tとはマッチング済みで美湖みこが会話をほとんど終わらせてくれていた。

俺はダイニングテーブルの上に置いてあるウィッグを被り女物の服を身に着けた。

あーあーと少し声を高くする。

俺は家を出る。

そしてマッチングアプリでTに連絡する。


俺『ごめんなさい。今家を出たので少し遅れるかもです。』

T『全然大丈夫だよ。俺もまだ着いてない笑』


時間は今13時半だ。

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俺の家族が殺し屋だった件。 芯鯖 @shinsaba

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