第4話

土曜日。人によるが本来なら俺は休日。

インドアな俺はゲーム1択だ。

だが今日は外に出ないといけない。

友達と遊ぶなら気楽なもんだが今日は違う。

じゃあ何で外に出るかって?


副業殺し屋の親父と仕事ころしの報酬交渉しにいくんだよ。


―——————————


行きたくなかった俺は朝起きず布団に包まっていた。

なかなか降りてこない俺を起こすため親父が俺の部屋に来た。


親父「おーきーろー」

俺「嫌だ」

親父「なんだ。起きてるじゃないか。」


俺は黙った。


親父「何で布団から包まって出てこないんだ?」



親父「早く起きないと爆破するぞー」


だから冗談になってないんだって。


親父「いーち、にーい、さーn」

親父「あ、もしかしてビビってるのか」


誰がビビってるって?

俺「誰がビビってるって?」


思わず声に出た。


親父「真樹まきのことだよ。やーいビビり。」


子供のような煽りに余計に苛ついた。

俺「あ?」

同時に跳ね起き親父の首元を掴む。

親父は1ミリも動揺せず


親父「起きたな。着替えろ。行くぞ。」


笑みを浮かべながら親父は俺の部屋を出て行った。

俺は急に恥ずかしくなり急いで着替え親父と家を出た。


―——————————


殺しを依頼している人はどうやら個人ではなく事務所があるらしい。

車で30分、徒歩15分でその場所には着いた。

普通のビルの13階。

殺しを依頼する事務所にしてはあまりにも普通過ぎる。

親父は部屋の前に立ち3回ノックすると


親父「殺し屋です。依頼について話に来ました。」


しばらくするとドアが開いた。


ドアのところには秘書のような女の人がいる。

そして50代くらいのスーツの男の人が部屋の真ん中に座っていた。


依頼主「まずはここまで足を運んでいただきありがとうございます」

秘書「ありがとうございます」


ここから交渉か緊張するな。


親父「あなた方は『報酬多め。マッチングアプリでの詐欺、ストーカー常習犯1人殺すあたり100万円。情報は毎回提供します。』の依頼主でしょうか?」


フルで言うんだ。


依頼主「そうです。早速ですが…」


その言葉を聞くと俺が瞬きした一瞬で親父は

依頼主の喉元前にナイフを立て見たことない形相で言った。


親父「報酬の桁が1桁少なく感じたが見間違えでしょうか?」


え、こわ。そして厨二病心くすぶるくらいカッコいい。

まるで漫画やアニメの世界かというくらいには現実味がない。

しかし現実だ。これが俺の親父なのだ。

依頼主は声を震わせながら言った。


依頼主「ま、まさか、見間違いのはずです1人につき1000万円はだ、出しますよ」


親父「1000万?」


ナイフが光る。


依頼主「5000万円の間違いでした…」


親父はナイフを胸ポケットにしまい笑った。


親父「ですよね」


カッコよすぎる親父を見て俺は思わず固まってしまっていた。

振り向き親父は俺を見ながら


親父「な?交渉成功したろ?」


と笑って見せた。

そして俺の背中を押し


親父「こいつが俺の息子でありこれから我が殺し屋の中でおとりを務める真樹まきです!」


俺「頼むから息子をおとりとして紹介しないでください!」


依頼主は引きつった笑顔で笑っていた。

そして秘書を指し


依頼主「この子が秘書でありこれから情報提供する佐藤です」

佐藤「よろしくお願いいたします」


佐藤さんは棚から1枚の紙を取り出し


佐藤「これがうちの事務所の契約書になります」


親父は笑みを浮かべながら受け取り


親父「明日からよろしく」


そう言って俺の肩を叩き俺に耳打ちをした。


親父「よろしくって言えるか?」

俺「そこまで俺も子供じゃないんだよ」


俺は頭を下げる。


俺「これからよろしくお願いします」


佐藤さんは契約書を指し


佐藤「ではまずうちの事務所との契約書にサインをお願いします」


親父は一通り目を通したあとサラサラとサインを書いた。


親父「これでいい?」

佐藤「ありがとうございます。これで契約完了になります」

親父「契約書のコピーもらえる?」

佐藤「少しお待ち下さい」


佐藤さんは契約書をコピー機にかけ

コピーした契約書を親父に渡した。


親父「ありがとう」


すると親父は背を向き手を振り俺を引っ張って部屋を出た。


しばらくすると親父は思い出したように


親父「あ、Fine聞くの忘れた」


え、Fineでやりとりすんの?ずいぶん今どきなんだな殺し屋も。


親父「ごめん。真樹まき、戻って聞いてきて」

俺「は?それくらい親父が行けよ」

親父「めっちゃカッコよく交渉して帰ったからちょっと恥ずかしいじゃん」

俺「自分でカッコいいって言ったら台無しだろ」

親父「もしかしてもう恥ずかしい?」

俺「息子に言うあたりもう恥ずかしい」

親父「でも恥かきたくないから行ってきてくれ」

俺「だからもうこの状態が恥ずかしいって」


しょうがなく俺はさっきの部屋に戻る。

3回ノックしてさっきの親父の真似をして部屋に入る。


俺「Fine聞き忘れたので教えてもらえますか?」


恐る恐る俺は聞く。


依頼主は涙を流しながら


依頼主「おじさんのでいいのかい?」

俺「誰がお前のって言ったか?」


つい口が滑った。

間が空く。

俺は焦って土下座する。


俺「し、失礼しました」


佐藤さんが笑って言う。


佐藤「顔、あげてください。このくそじじいが若い子と繋がろうとしてるから悪いんです。」

依頼主「佐藤ちゃんそんなこと言わないでよ」

佐藤「ちゃん付けやめろ。くそじじい。」


どういう関係なんだよこの2人。


佐藤「私とFine交換ですよね」


俺は佐藤さんとスムーズにFineを交換した。


俺は2人がどんな関係かわからないまま親父のところに戻った。


俺「親父、あの2人どういう関係?」

親父「詳しくは言わないけど歪な関係って存在するもんだぞ」

俺「それ詳しく」

親父「俺も外れてたら嫌だから言えない」


―——————————


家に帰ってきた。


親父「今日はさっさと寝ろよ」

俺「はいはい」


俺がFineを確認すると佐藤さんからメッセージが来ていた。


佐藤『こんばんは』

俺『こんばんは』

佐藤『これから情報提供など連絡はここでしますね』

俺『はい。ありがとうございます。』

佐藤『あのじじいにはしっかり言って聞かせますので安心してくださいね』

俺『はい』


いや、だからどういう関係?

立場どうなってんの。

怖いんだけど。


とりあえず今は気にしないことにした。

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