第3話

朝、いつものように学校や会社の準備をしている中。


俺「あれ、今日は殺し屋ないの?」

母さん「そりゃ毎日はしてられないわよ」

美湖みこ「みこたち今日は普通の日だよ」


親父「もしかして楽しくなったか?」

俺「そんなわけないだろ」

母さん「確かに真樹まきの女装撮るの忘れてたわね」

俺「そんなもん残すな」


つまり今日は入学式を除いた高校初登校か。

昨日、今日とまだ疑問は残ってるけどそんなこと今はどうでもいい。

ウキウキして鼻歌交じりに準備を進める。


親父が会社に向かった後

少し早いがそのまま高校へ向かう。


―——————————


学校に着くなりすぐ入学式のときの自分の席の横に荷物を下ろし座る。

少し早く着いたのでまだ何人かしか来てないようだった。


しばらくして後ろから肩を叩かれた。

振り向くと幼馴染の黒谷くろや闘治とうじがいた。


闘治とうじ「昨日は何で来なかったんだよ~」

俺「いや聞いてくれよ実はさ…あ!いやなんでもない」


あっっぶなかった…言ったら処理されるとこだった…


闘治とうじ「何かやましいこと隠してそうだな~」

俺「いや昨日体調悪かっただけだって」

闘治とうじ「俺は勘が良いからわかるぞ」

俺「え、なんだよ」

闘治とうじ「ずばり!悪に目覚めたんだろ?」


実はちょっとかすってるのが怖いんだよな。


俺「やっぱわかるか~」

闘治とうじ「ヤンキーデビューしようとして心折れて今日普通に来たんだろ?」

俺「闘治とうじにはバレバレだったな」

闘治とうじ「へへっ当たり前だろ」


馬鹿で良かった…と安心していると


彩子さいこ「何?何の話?」


幼馴染の白戸しろと彩子さいこが話に入ってきた。


闘治とうじ白戸しろとよく聞け!俺の勘の良さがまた発揮されたぞ!」

彩子さいこ闘治とうじ…あなたがいつ勘が良かったときがあったかしら」

闘治とうじ「毎日だろ!」

彩子さいこ「1秒もなかったと誓えるくらいにはないわ」

闘治とうじ「はっはーじゃあ誓ってみろ」

彩子さいこ「例えにそう返す程の馬鹿だといい加減気づきなさい」


彩子さいこ「で何の話?」

闘治とうじ真樹まきが昨日休んだのはヤンキーデビューしようとしたからだって話だ」

彩子さいこ「本当に真樹まきがそう言ってるの?」

闘治とうじ「そうだぞ!なぁ真樹まき?」

俺「全くその通りだよ」

彩子さいこ「あのね私、真樹まきまで馬鹿だと思いたくないのよ」

闘治とうじ「俺は馬鹿でいいのか」

彩子さいこ「そうよ。というかもっと早く気づきなさい」

闘治とうじ「だが俺はまだ認めん!ガハハ!」


彩子さいこ「あの馬鹿は無視しましょう。本当なの真樹まき?」

俺「本当だよ」

彩子さいこ「本当ならさっさと近くのヤンキー高校に転入しなさい」

俺「違います。ごめんなさい。」

彩子さいこ「本当は?」

俺「…熱です」

彩子さいこ「まだそっちのほうが信じられるわ」


俺は彩子さいこにバレないことを祈って深々と頭を下げた。

彩子さいこは不気味な笑みを浮かべていた。


―——————————


この日はそれ以降特になく学校が終わった。

家に帰ると


母さん「真樹まき帰ってきたわよ!」


するとすぐにダイニングテーブルに家族が集まった。


―——————————


正式第2回 家族会議


母さん「さてサイトを見ていたら良さそうなやつがいくつか掲載されていたのでどれを受けるか会議したいと思います」

俺「そんな感じで決めていくんだ」


母さん「1つ目、『ひき逃げして弟を殺した犯人を見つけて殺してほしいです』」

俺「やっぱ重いな。これは警察行けよ。」

親父「まず見つけるってのが面倒だな」

俺「それが仕事でしょ」

美湖みこ「みこ、ひきにげがわかんない」

俺「そういや小学3年生だったな、実の妹なのに忘れそうになってたわ」

母さん「ひき逃げはね。人をタイヤという凶器で潰してそのまま逃げることよ」

俺「どうあがいても怖くなるとはわかっていたけど言い方怖いって」

美湖みこ「なるほど。それだと見つけるの大変だね」

俺「見た目がわからないと難しいよな」

美湖みこ「ねー片手にタイヤ持ってる人なんているのかなぁ」

俺「違う!あの言い方だと確かにそうなるけど」

親父「片手にタイヤ持ってたら目立ちそうだからわかりそうだけどな」

俺「親父は流石にわかれよ」


母さん「じゃあこれは保留ね」

俺「却下でいいと思うけど」


親父「じゃあ次2つ目、『玄人募集。簡単な白戸組の組長殺し。』」

俺「何が簡単だよ。ヤクザの組長はやめたがいいって」

美湖みこ「かんたん!これにしよう」

俺「やめて。絶対簡単じゃないから。」

母さん「玄人だしね。私たち。」

俺「それはそれで複雑なんだけど」


親父「じゃこれも保留で」

俺「後悔しても本当に遅いやつだぞこれ」


美湖みこ「これで今日最後の3つ目、『報酬ほうしゅう多め。マッチングアプリでの詐欺さぎ、ストーカー常習犯じょうしゅうはん1人殺すあたり100万円。情報は毎回提供します。』」

親父「1人あたり100万は安すぎるな」

母さん「これで多いとか言ってるあたり相場知らなそうね」

俺「俺これめちゃくちゃ良いと思ったけど」

美湖みこ「でもこれ概要がいように顔はうつさず殺す現場を配信するって書いてあるよ」

親父「じゃあ人気になれるのか」

母さん「インフルエンサー?っていうの憧れてたのよね」

俺「撤回、まず殺し屋ってバレたら駄目だからデメリットしかないだろ」

美湖みこ「お父さんお母さん、お兄ちゃんこんなこと言ってるけどこの案件受け続けたらまた色んな女装をお兄ちゃんにさせられるよ」

俺「メリットみたいに言うなよ」

母さん「よし、これ受けましょう」

親父「ああ、これは絶対受けよう」

俺「俺からしたらデメリットしかなくなったぞ今ので」


親父「じゃあこれ決定で」

俺「やめろ、今すぐ」


母さん「保留案件も一応キープしておきましょう」

俺「やっぱやめとこうって」

親父「大丈夫。報酬交渉はする。あと1桁つけるから。」

俺「全くその心配はしてないんだけど。交渉ってどうすんだよ。」

美湖みこ「そんなの決まってるじゃん。脅す。」

俺「ぞっとした…美湖みこそんな言葉覚えたら駄目だぞ」

母さん「なんで?」

俺「元凶母さんかよ」


―——————————


親父「明日土曜だから決定したこの案件の交渉に行くけど真樹まき、ついてくるか?」

俺「嫌だよ、脅してるとこ見るの」

母さん「いい経験になるわね」

美湖みこ「お兄ちゃん明日がんばってね」

俺「誰か止めろよ」


―——————————


こうして明日、親父の仕事交渉見学をすることになった。

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