連作短歌「トーチソング」

あかべこ

連作短歌「トーチソング」


トーチとは栄光であり孤独であると笑うあなたに恋して100年


例えばあなたが夜の海辺に灯る火で僕はあなたを追う船である


愛せどもうまく転がる事のない愛の言葉とラグビーボール


その名を飾る7つの栄冠に届かなくて僕は同じ舞台に立てない


その背中を追い続けていた 未だ僕はあなたの背中を見つめるだけだ


あの人は高炉の焔であなた達 同じ海を見つめて立ってる


愛し合う2人のことは知っていて僕は彼岸で2人を見ている


勝利という階段を積んでもあなたの目に僕はかわいい鳥でしかない


あの人とあなたは同じ傷があって僕はあなたの痛みを知らない


栄光も笑みも故郷も知っている あなたのキスの味だけ知らない


あの人だけが知る口付けの味を想い蜂蜜レモンをかじる夏の日


虫刺されのふりした口付け跡を隠さぬあの人の目を羨んでいる


太陽より熱い愛とか優勝の光を抱いてあなたに会いたい


あなたの暮らす街へつながる海の道を指先でなぞればあまりに遠き


この足が翼になれば栄光もあなたの街もこんなに近い


「距離よりも心が近くにあるからな」あなたの鍵を持ったあの人


もし隣に僕がいたならあなたの傷も笑みも僕の手に転がり込むのか?


むせかえる愛を託して北へ飛ぶ海鳥たちを見送る岸壁


行き場のない愛とか全部こめたのでこのパスをただ受け取ってほしい


あなたのために運ぶトーチで火傷した僕の手にかかる清水になって

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連作短歌「トーチソング」 あかべこ @akabeko_kanaha

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