問わず語らず

鳥尾巻

追いつ追われつ恋のうた

花霞 ひとひらの夢 舞い降りて 目に鮮やかな 色に戸惑う



たまさかを あいよそおいて 隣り合う 気づいてほしい ほしくないかも



何気なく 異口同音に 笑い合う 日々の泡沫うたかた 魔法の瞬間とき



友達と 呼ぶには少し 近すぎて いまだ名付かぬ そのかたちとは 



気まぐれを 季節や花の せいにして のらりくらりと かわす君追う



たまゆらの 震えでさえも 見逃さず 今か今かと 次の文字待つ



掛けと引き 四則計算 苦手なの ただ足すばかり 割れぬ想いを



夢うつつ 寝ても覚めても 追いかける 隠しきれない 瞳の軌跡

 


背を合わせ 伝う温もり しんの音 今この時を 永遠とわに出来れば



糸雨しう連ね 睫毛にけぶる 町灯り 涙に似てると 拭う手の先



約束の 言葉もなくて 絡み合う 小指の重さ 針千本



ため息の 行方は知れず 宵の闇 溶けて流れる 静寂しじまの色に



あかねさす 紫紺の空に うつむいて 帰らないでと 君が袖引く



がために 流す涙か ため息か 知らぬがゆえに 我恋めやも



言の葉は 役に立たぬと 君が言う 眼差しのみで 熱に浮かされ



甘さなど 人工甘味アスパルテームの たぶらかし その唇に かなうものでは



ぬばたまの 夜にまぎれて 手繰り寄せ 熱を分け合い 夢に溺れる  

 


後朝きぬぎぬに 花匂い立つ 艶姿 愛しき眠り 守り微睡む  



はじまりを 覚えているかと 問われれば もう忘れたと 声はうそぶ



巡りくる 花の霞の 佇まい 目にもあやかな 君が手を振る

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

問わず語らず 鳥尾巻 @toriokan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説