美しく晴れた冬の朝のことでした。
遠く水平線の霞む鈍色の海、淡いお日様の光を跳ね返し、キラキラと輝く白浪が静かに打ち寄せる礫浜(れきはま)に一人の少女が立っていました。
名前はマリー。
漁師の父と食堂を切り盛りする母、四人の兄に可愛がられ、愛される末娘です。
ほとんど色のない白金の長い髪、透き通る紫水晶のような大きな瞳、滑らかに白い肌、青いワンピースを着た少女は、陽に透けて消えてしまいそうな儚い風情で波打ち際に佇んでいました。
十六歳という年齢にしては、少し幼い表情で遠くを見つめていたマリーは、ふと、誰かに呼ばれたような気がして振り返りました。
「……リー」
「?」
「マリー」
少し離れたところに、二つ年上の幼馴染のアーロンが立っていました。
近づいてきた黒髪の彼は、小柄なマリーよりも頭二つ分くらい大きく、岩壁を削り取ったような厳しい顔つきでしたが、北海の昏い青にも似た瞳は理知的で穏やかな光をたたえています。
マリーは薄い唇を尖らせて、ぷいと海の方に顔を背けました。
「マリー、まだ拗ねてるのか」
「拗ねてない」
「どう見ても拗ねてる」
いつもは寡黙なアーロンが、珍しくからかうように言葉を重ねます。
近い漁場なら船に乗せてもらえるけど、父と兄たちが遠くの海へ漁に出る時は、置いていかれるのが不満なのです。
そのうえ、幼い頃から優位に立ってきたはずのアーロンが、今回は父や兄たちと一緒に遠洋に行くことになり、マリーの苛立ちは増すばかりです。
「あたしだって役に立つのに」
「……そうだな」
「船の扱いだってアーロンより上手いのに」
「……。いつ帰れるか分からないから、親父さんたちは心配なんだよ」
「なによ、今日はよく喋るわね」
「マリーまで海に出たらおばさんが一人になっちゃうだろ」
「じゃあアーロンが残って手伝えばいいじゃない! アーロンばっかりずるい! あたし、父さんにもう一度頼んでくる!」
マリーは細い眉を吊り上げ、勢いよく足元の砂利を蹴って走り出しました。
「ま……」
止めようと前に出したアーロンの大きな手は、行き場をなくして宙をさまよいました。
嫌な予感がします。
末娘には甘い親方ですが、こと仕事に関しては厳しく、決定を覆すとはアーロンには思えません。
しかし、見た目通りに儚くない幼馴染の少女は、自分の意思を貫くためなら、何らかの暴挙に出る可能性があります。
子供の頃から、マリーの暴走に付き合ってきたアーロンとしては、止めるよりも最悪の事態を想定して行動した方が被害は少ないはず、と考えました。
アーロンは、しきりに頷きながら、ゆっくりと大股で歩き始めました。
誰もいなくなった浜辺に、キラキラと光る波が、変わらず静かに打ち寄せていました。
つづ……かない。_(:3」∠)_
☆☆☆☆☆
2026書き初め。
創作メモに「港町のマリー」と書いてあったので、なんとなく書いてみました。
港町のマリーなら、港町で暮らす女の子書きなよ……。
海に出たら違う話になっちゃうよね。
船倉に忍び込んで海に出て、海賊に出会ったり、遭難したり、父と兄とはぐれたり、流れ着いた国で大暴れしたり、でかくて寡黙な幼馴染が裏でものすごく苦労しながらフォローする話がいいなあ。笑
【日曜恒例タロット】
1月4日
SWORDS 9
美しい過去や
失ったものを取り出して
じっくり眺めているような日
喪失の痛みはそれを深く愛した証
その痛みをきちんと受け止め
新しい一歩を踏み出しましょう
(仕事始めに怯えてる人にしか見えないwww)
月曜がくる!((((;゚Д゚))))
