哀煙句域

目々

哀煙句域

灰皿に亡骸を積む春の宵

春彼岸線香代わりと煙吐く

行く春をただ葬れば紫煙ひと筋

ガーベラの花束手紙は灰皿で焼く


享年二十あとは余生と紫煙吐く友


吸い殻を折る炎昼待ち人は来ず

フィルターを噛む手遅れの五月闇

うらみごと一本分だけ油照

ねぷた往く夜の餞に紫煙燻る

ショートホープ面影を焼く晩夏光

ライターひとつ餞別代り夏の暮

灰皿に吸い殻二つ夏の果て

土用凪吸い殻のように棄ててくれ


赤く暗く赫く呼吸している指先の火


黙って聞いて吸って忘れた秋の空

秋時雨誰も待たずに火は煙る


噛み潰すミントカプセル余命の味


残り香だけよく似てはいた寒夜

雑談の間を煙が埋め冬の雨


夜明けまで駄目ならせめて吸い終わるまで

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哀煙句域 目々 @meme2mason

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