第2話 大切な仲間
あれから時が流れ、水曜日。
この日、俺は軽音部とセッションするためにギターを持ってきた。
事前に担任の先生には「軽音部に勧誘されたため」と、持参する許可を取ってある。
正直、周りからかなり浮いた。
ただでさえ俺はクラスの中でも影が薄い存在なのに、
この日ばかりは、朝からずっとクラス中の視線を浴びている。
そしてホームルームが終わり、下校のチャイムが鳴った。
普段なら一目散に帰るが、俺の足は第二音楽室へ向かっていた。
いつも何気なく素通りしてしまうこの教室のドアがとても重く感じる。
意を決して入室すると、ベースの寿先輩がいた。
「あぁ、ナルくんだっけ?入んなよ」
「はい!失礼します」
セッションするならはよセッティングしなさんなと言わんばかりの空気感...。
寿先輩の向かいに置いてある、聞いたこともないメーカー名のアンプに寄り、
俺は黙々とセッティングを始める。
距離をとって、寿先輩とぎこちない会話をしながら。
「すまんね、ギターアンプはその古くさいコンボしかないんだ、エフェクター持ってきてる?」
「はい、今日合わせる曲用にマルチエフェクターを持ってきました、リターンがあるならそこにつなげれば問題ないと思います」
「詳しいね、バンドやってたんだっけ?」
「えぇ、中学の時に外部で色々と」
「へぇ、そうなんだ」
こう言っちゃ悪いが、寿先輩はこのバンドの中でも独特なオーラを纏った人だ。
常に冷徹で、一言でも余計なことを言ったら
エンコ詰めか宙吊りでプールに沈められそうなイメージ、おぉ怖...。
寿先輩もサウンドチェックがてら音を出してたけど、その音は凄まじい。
ドライブが効いていて、一音一音の低域が腹に響いてくる、まるでプロのようだ。
「普段、俺と愛香が早く来るんだけど、愛香は今バンドで確認することがあってちょっと外してるんだ、もう少ししたら戻ってくんじゃないかな、まぁヤるまでゆっくりしてってくれ」
「あ、ありがとうございます。」
ヤ、ヤるってなんすか…。
ホンマモンのヤクザみたいな言い方やめてよもぅ…。
あらかた準備が終わって10分ぐらい経った頃、第二音楽室のドアが開いた。
「あ、いらっしゃいナルくん!よく来てくれたわね」
「愛香先輩、お疲れ様です」
愛香先輩は何かの書類を数枚クリアファイルに入れて持っている。
さっき言ってた「バンドで確認すること」に関するものだろうか。
そのまま寿先輩が愛香先輩に尋ねる。
「で、どうだった?」
「うんそれが、どんな形であれバンド内で収益が発生したら、それは全部教育委員会に寄付する形になるらしいの」
「つまり、俺らには一銭も入らないのか?ある意味バイト扱いで、こっちが儲かる形にしてくれないのは困るぞ」
「仕方ないわね、他校のバンドも同じ仕組みなのかはわからないけど、特にあたしたちは[校内バンド]ていう点が引っかかったみたいなの、本来学生は学業に専念するものだからって」
お金の話だろうか、まだ俺が加入もしてないのになんとも重い話だ。
思い切って寿先輩に聞いてみた。
「何かあったんですか?」
「あぁほら、この前光介がサブスクでオリジナル曲を作って配信したり、外部でライブしたいとか言っていたろう?そこで発生した収益は100%俺たちで山分けできるのか、念のため確認してもらっていたんだ」
なるほど、それは事前に確認しておいてよかったと。
下手して勝手に全額山分けしていたら、後々校内で問題になる。
「これじゃあなんのためにバンドをやっているのかわからないな、もちろん金が全てっていうつもりはないが、活動を続けるメリットがなさすぎる、バンドに割いていた時間を勉強に使えばよかったと、今になって後悔してるよ」
たしかにバンドで夢を見るなら、
好きな事をやってお金を稼ぐのに惹かれるのもわかる。
あくまでもリーダーの光介先輩は、
青春や思い出を残したい意図でバンドをやっている。
だが寿先輩は、バイトの一環みたいな感じでやってるのかもしれない。
「ナルはそこら辺も考えていたりするのか?このまま光介のわがままに付き合ってると時間が無駄になる、就きたい会社があったり進学したい学校があるなら、そっちの準備を優先した方が良いと思うぞ」
「それは…」
急に振られた質問に俺は言葉を詰まらせる。
俺は進路について何も考えてない、むしろ適当に生きていければいいとしか
考えてなかった。
「まぁナルくんは一年生だもん、進路を決めるにはまだ時間はたっぷりあるし、今は思い切り軽音部を楽しんでもらうのが一番じゃないかしら、あたしは生徒会委員も務めてるから、バンドや進路のことでちょっとでも何か困ったことがあれば、いつでも相談してね」
愛香先輩がいい感じに話をまとめてくれた。
奇抜な見た目とは裏腹に生徒会委員とな、そしてこの気遣い、天使かな。
そうこうしてる内に、バッタバッタと騒々しく音を立てて歩く音が廊下から聞こえ、
勢いよく第二音楽室のドアが開いた。
「うしっ!おはよーさん!」
「やーもうしゃけねー補習受けてて遅くなったー」
光介先輩と和美先輩だ、重役は遅れて参上するらしい。
二人が来た瞬間、俺は光介先輩と目があった。
「おー!なっちゃんいらっしゃい!ようこそ軽音部へ!」
「お、おつかれさまです...」
さっきの話といい、光介先輩とみんなのテンションの差といい、
いろんなものがブレブレで、不安がますます拭えない。
「ありゃ、もうみんな準備万端?マイク用意すっから、ちと待てて!」
寿先輩は呆れた様子で、俺に小声で話しかけてきた。
「こいつ、いつもこんな感じなんだ、普段から平気で遅刻するし、毎回遅れてきてはセッティングに20分はかかる」
「聞こえてるよ!ひろぽーん」
「まったく、たまには早く来い!」
デジャヴかもしれないが、まるで父親と息子だ。
そしてついにフルメンツが揃った。
各々セッティングを行う様を見てると、俺も緊張が高まってくる。
「あーあー、テス、テステス、ワンツー、はー、はー」
光介先輩のマイクが入ったと同時に、和美先輩、寿先輩も音を出し始める。
最終的な音量バランスをとって、準備は完了した。
「うしっじゃあ早速1曲目から通してやってみようぜ!かずみん!」
「あいー」
和美先輩のカウントと同時に、セッションが始まった。
大きな音で合わせるのは久しぶりだから、緊張で変な汗も出るし
足もプルプル震える。
課題曲の難易度は少し簡単だったので、
弾きながら周りの音を聴く余裕があった。
さすが上級生だ、あきらかに素人じゃない。
バンド経験者じゃないと出せないようなグルーブ、安定したプレイ。
俺も負けじと、必死に周りについていく。
特に寿先輩のベースがすごい、リズムが正確だし音の迫力が違う。
和美先輩も一打一打がはっきりと聞こえるし、常に周りを見て演奏している。
光介先輩の歌声は独特だが、決して邪魔ではない。
むしろ原曲のクオリティを損なうことなく、自分の世界を作ってる。
きっと、ギターがいなくても
3ピースでまとまりを出す練習を行ってるんだろうなと。
間髪入れず2曲演奏し終わった。
「…うん!なかなかいんじゃね?かなり安定して演奏できたし!」
リーダーからのお言葉だ、悪くないならよかった。
「なっちゃんはどう?」
「はい、すごくよかったです!皆さん上手くて演奏しやすかったですし、もっと練習して僕も腕を磨きたいです」
「この向上心よ!じゃああらためて、今日をもって正式に入部して、俺たちと一緒に活動したいなって思ってるんだけど、どうかな?」
音を出す以外のことで不安はあるけど、
このレベルで演奏できるバンドはなかなか周りにいない。
俺の気持ちは前を向いていた。
「...入部します!これからどうぞよろしくお願いします」
「うっしゃああ決定!新メンバーとしてなっちゃん正式加入〜!これからよろしくな!」
「光介、ナルは後輩なんだからあんまり無茶させるなよ?」
「わかってるって!明日たかしーにもお礼言わないとな!」
「こーちゃん、はらへったー」
「かずみん...あとでなんか奢ってやるからもうちょいまてって!」
こうしてセッションは無事終了し、俺は正式に軽音部の一員になった。
正直、もっと激しいジャンルをやりたいという願望はあるけど、
一番大事なのはきちんと演奏できるぐらい基礎がしっかりしてるかだ。
もちろん、問題を起こさないか、とか、喧嘩起こらないか、という点も。
あと、どうしても気になることがあるから光介先輩に聞いてみた。
「そういえば、このバンドの名前ってあるんですか?」
「あるよー![大日本帝國学園軽音部]って名前にしてる」
だ、だいにっぽん、ていこく...?なんとまぁ堅苦しい。
「今までのバンド名もこれなんよ、どうせなら日本を代表する学生バンドになりたいからさ、なんか強そうな名前がいいなと思って、かっこよくね?」
「や、だせーよー」
「んなっ!だったらかずみんも案だせよー!」
意外と厳しんだな、和美先輩って。
「なぁ!ひろぽんもかっこいいと思うだろー?もともとはこの名前ひろぽんが出したんじゃないか!」
「確かに発案は俺だが、まさか適当に思いついた名前にお前がそんなにときめくとは思わなかったからな...止めづらいだろ」
その話題でみんな笑いあって、軽音部の1日は終わった。
長いようであっという間の時間だった。
今後、俺は軽音部のメンバーとして活動することになった。
これが「青春」の1ページってやつなのかな。
もしそうなら、いいスタートを切れたなって。
そのあと後片付けを済ませて下校した、時間は夜の18時過ぎ。
もちろん、親には部活の体験入部で遅くなることを伝えてある。
校門を出てまっすぐ進んで一つ信号を挟むと、そこそこ長い並木道がある。
この道は、いつもの俺の通学路だ。
だが不運にも、信号に捕まってしまった。
青になるまでおよそ1分ぐらいかかる。
俺は自称コミュ障だ。
いいことがあっても悪いことがあっても、いち早く帰って
人付き合いからくる気疲れを早くリフレッシュさせたい。
まだかまだか、と待っていた矢先だった。
「ナルくーん!まってー!」
どこかで聞いたことのある声だ。
振り向くとそこには、小走りで駆け寄ってくる愛香先輩がいた。
「あ、愛香先輩!」
「へー偶然だね、ナルくんの帰り道もこっちなんだ?」
「はい、いつもこの並木道を通って学校に行ってます」
「うっそ!あたしも毎日ここ通って学校行ってるよ、全然巡り合わないねw」
まぁ、愛香先輩は生徒会に入ってるから、やることがあって朝早いんだろう。
毎日08:30ギリギリに登校する帰宅部...あぁいや「元帰宅部」の俺には、
そんなこと到底無理だ。
ぎこちない返答しかできない俺を愛香先輩にリードされつつ会話していると、
信号が青になった。
「じゃあ、一緒に帰ろ?これから水曜日はナルくんと一緒だね」
「あ、はい...」
「うん」
...。
「会 話 を 続 け ろ、 俺」
今までいかに俺が閉鎖的な人付き合いをしていたのかがよく分かる。
聞き手に回るだけでなんでも済まされると思うなシャバ僧が。
…と、俺が俺に言い聞かせた。
「...愛香先輩って、二年生だったんですね」
「そうだよ、やっぱり一つ年上に、見えないかな?」
「え?」
「実はあたし、プラベで遊ぶ友達がほとんどいなくて、唯一、軽音部のみんなだけなの、授業が終わったら軽音部のみんなといつも一緒にいるから、周りからもあたしが3年生だって思われることが多くて」
...すいません、俺も3年生だと思ってましたわ。
なんていうか、話し方とか接し方が上品で大人びてるし、
下手すれば二十代にも見える。
...ギャルのような派手髮だから人が寄ってこないのか、とも思ったが、
そんなこと失礼なので聞かない。
でもクラスのマドンナ的な立ち位置でもおかしくないのに、
なぜ軽音部のマネージャーに?そしてあのメンツと
どういった親交があるのだろう、それとなく聞いてみようかな。
「じゃあ、軽音部の皆さんと、とても仲がいいんですね?」
「そうね、こーちゃんとかずみんはあたしの幼馴染で昔からよく遊んでた、ひろぽんはあたしが中学2年ぐらいの時に、この街に引っ越してきたの、そこからひろぽんとこーちゃんが同じクラスになって、気づけばあたしやかずみんとも親しくなり始めて、あるとき、こーちゃんが[俺たちでバンドやろーぜ!]なんて言い出して、私も無理やりマネージャーとして入らされた挙句[バンドするために4人で同じ学校に行くぞ!]って勝手に張り切っちゃってw」
なんと、俺が知りたかったこと全部話してくれたよ、予知能力でもあるのかな。
そうか、全員幼馴染であれば居心地いいよなあ。
「でも結局、皆さん同じ学校に進学したんですね?」
「うん、実はあたしも進路決まってなかったからノリでそのままね、軽音部で活動する傍ら、将来のために何か経験を積もうかなと思って生徒会にも入ったの」
「たしか、光介先輩はソフトテニス部にも入ってますよね?両立するのってやっぱ大変だなって思います」
「そうね、でもあたしにできることであればなんでもやりたいから!」
俺とは真逆の精神だ、やっぱ尊敬するよ愛香先輩。
「そういえば、軽音部の顧問は誰なんですか?」
「うーん...実質あたし、かな」
「え?」
先生がいない状態で活動?どうやって?
「前にギターやってた人が抜けて一度廃部になったの、そのときに顧問の先生も降りた、それでもこーちゃんが活動したいって強く訴えてきて、あたしと一緒に当時顧問だった先生や教頭先生に何回も相談しにいったの、何ヶ月か経ったある日、学業に支障をきたさないことと、あたしが3人の面倒を見るなら、第二音楽室でそのまま練習してもいいって、特別に許可してくれたの」
「そんなことがあったんですね...」
「だから今は、廃部になったけど活動してるっていう、なんか変な部活なのw」
よくそんなわがままが通ったな、普通ならそんなこと絶対にありえないのに。
たしかに光介先輩のアクティヴさはすごいけど、
想いが強いゆえに人を巻き込んでしまうのもたまに傷だなと。
でも固い絆で結ばれてるからこそ、
愛香先輩もその期待に応えようと必死だったのだろう。
「その代わり、何か問題が起きたら全部あたしの責任だって言われたの!こーちゃんは勢いで突っ走りがちだからちょっと心配なのよ、今日の収益の話もそう、勝手にお金をあたしたちでやりくりしていたらどうなってたことかw」
「た、たしかに...それで、いつ正式に部活動として再稼働できるんですか?」
「欠けた部員が見つかることと、再稼働に見合う行いが見られれば、あらためて検討するっていってたわ」
なるほど、欠けた部員の補充はクリアしたってことか。
「そうですか...でもよかったですね、全部なくならなくて」
「うん、ホントハラハラすることがちょくちょくあるし、学校も厳しい」
「はい」
「...でもね?」
「?」
「あの3人といると心地いいし、一緒にいれば面白いことがたくさん起きるから離れたくないっていうか、あの3人がいてくれたからこそ今のあたしがあるって、日に日に強く感じるの、この学校に入って一人でいることが多いから内心寂しくて、でも放課後はいつものメンバーで笑いあえる、それがあたしの心の支えになってるから」
心の支えになる人がいるって羨ましい。
俺には、家族は別として、そんな人たちはいない。
みんなそれぞれドラマがあって、
壁があっても、それを一緒に乗り越えてきたっていうのも強い。
こんなこと、シュミレーションアニメやゲーム、漫画だけの世界だと思ってた。
他のメンバーが愛香先輩をどう思ってるのかはわからないけど、
そんな人たちと共に歩んできた道があるからこそ
胸を張ってそう言えるのだろう。
気づけば並木道も残りわずか、そろそろ分かれ道に差しかかろうとしていた。
さて、そろそろ「僕、ここ左曲がりますね」といって解散するか
...と思った矢先、突然愛香先輩が立ち止まって俺を見つめてきた。
「ねぇ、ナルくん」
「はい?」
「あたしのお願い、聞いてくれる?」
え、なにこのシチュエーション、すっごいいいムードじゃん。
なにを言われるのかドキドキしてしまう。
この空気感になれない故に5秒ぐらい無言になってしまった。
辺りはサラサラと風に乗って葉っぱが揺れる音しか聞こえない。
俺を呼び止めた時は神妙な顔つきだったが、
その願いとやらを聞く姿勢になったことを悟ったのか
愛香先輩は優しく微笑んで口を開いた。
「軽音部に入ったからには、あの3人のこと、大事にしてほしいの」
「…」
「…ごめんね、入部が決まった直後にこんなこと言うのって、重荷になっちゃうかもしれないよね」
「あ、いえいえ!そんなことは...」
「ありがとう」そう幻で聞こえるような笑顔を俺に見せた。
「いつかは進路が別れたりして、みんな離れ離れになっちゃうかもしれない、でも一緒にいるうちは仲良く、そして楽しく音楽を奏でて欲しい、あたしはあの3人が大好きで、その輪の中にすごいスキルを持ったナルくんが加わってくれて本当に嬉しい、だから末長くバンドを続けて行って欲しいの」
あらたまってなにをいうのかと思えば...。
当然ですよ愛香先輩、上級生とはいえ、
あんなに個性が強くて演奏も上手いメンバーとやれること自体恵まれてますからね。
今となっては、もうやる気に満ち溢れてるので。
「もちろんです!僕自身まだまだ不甲斐ない部分もありますが、皆さんと一緒にバンドを大きく成長させて、いい思い出をたくさん作っていきたいです」
「よかった!早くみんなでオリジナル曲を作って聴かせてね、今の軽音部をもっと好きになりたいから」
「はい、もし出来たらいち早く愛香さんに聴いてもらいたいです!」
「うん、待ってるね!」
普段、人と話すだけで疲れるはずなのに、
なぜかその時は心が温かく、疲れなんてほぼ感じていなかった。
そしてお互いに十数歩歩いて分かれ道に突き当たった。
「じゃあ、あたしはここ右だから」
最後の最後まで愛香先輩が会話をリードしてくれた、いやぁ申し訳ない。
「あ、はい僕は左ですね。」
「今日は楽しかった!じゃあまた来週、バイバイ」
「こちらこそ、お疲れ様でした!」
少し歩いてなんとなく振り向くと、愛香先輩はまだまっすぐ歩いていた。
だが、その背中はどこか物悲しそうな雰囲気を感じた。
気のせい...ならいいが、また水曜日、元気に会えることを願うことにした。
帰宅、時間は夜の19時前後。
早速両親に俺が軽音部に入ったことを伝えた。
外部で活動をする予定があることで、特に母はお金の面を一番気にしていたが、
光介先輩がお世話してくれるとのことで、ひとまず了承を得た。
自分の部屋に入り、余韻に浸る。
いつもならやることやって一目散にベッドへダイブして、そのまま寝るのだが、
今日はなかなか寝付けなかった。
今でも忘れない、あの先輩バンドの安定感。
そして愛香先輩から託された、軽音部の未来。
正直心の中では、まだ青春してることを恥ずかしく感じる自分がいる。
でも、学校に行ったり、あの第二音楽室で切磋琢磨している時は、
今までとは違う自分になるんだろう。
こんな経験は初めてだ。
勉強以外のパワーをバンドに割いて、そのバンドで培ったことを、
将来に活かせるように自分を変えていこうと思った。
進路なんて、活動しながらゆっくり決めていけばいいじゃないか。
「大日本帝國学園軽音部」
それが俺の、新しい居場所だ。
大日本帝國学園軽音部 NÄRU @naru_dtgk
★で称える
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