大日本帝國学園軽音部

NÄRU

第1話 自由に楽しめる万人の癒し

<とある学園、昼休み>


「ふぃー!食った食った!今日の弁当ちと多かったなw」

「このあとどーする?バスケ?」

「いーよ!じゃあ隣のD組の面々てきとーに誘ってっか、3×3でいい?」

「おけおけ、じゃあウチからもあと一人欲しいよなー」

「せやなー、うーんとあいつは…」


「(イヤホンしてやがる...)おーいナル、暇?」

「…え、あぁ何?」

「バスケしない?、あと一人欲しくてさ」

「いや、ちょっと疲れてるからいいわ、すまんね」

「そぉ?んじゃ他当たるわー」






退屈、毎日が退屈。


具体的に何がって言われてもよくわからない。

思春期真っ只中の若造がよく抱くマンネリ、みたいな。

まぁ、学生の俺が偉そうに若造って言うのもアレだけど。


被害妄想を膨らませた周りの目線や声、将来の不安、

いろんな何かをずっと背中に背負って生きてる感覚。


汗でベトベトになるぐらい体を動かしたって、

何発もゲンコツを喰らったような痛みになるぐらい頭を使ったって、

大きなヒグマを威嚇できるぐらいの大声で叫んだって、

何一つ晴れない。


そんな気持ちとは無関係に、毎日憑りつかれた様に学校へ行っては、

一人寂しくトボトボ帰る毎日。






家に帰っても、特別何かやることもない。

部活はめんどいからやってない、いわゆる帰宅部だ。


早々と部屋着に着替えては、風呂入って飯食ってベッドに寝転がって、

適当にソシャゲやって、少ない友達のメール返して、寝る毎日。


なんとなく趣味で始めたギターやDTMの環境もあるけどイマイチ気乗りしない。

曲ができてもすぐにボツ。


きっとこのまま大人になって、周りにあわせて小さな小さな社会の歯車になって

「普通の人生でしたー」っつって一生を終えるのかなって、

そんなことをずっと考えてた。






<翌日 1時間目終了後 廊下>


「きのう動画の限定ライブ見たー?」

「みたよ!推しかっこよすぎ♡」

「ヤバくない!?サビで目合って泣いたわw」

「しかも日曜インストでしょ?握手券2枚あるからいこっ」

「明後日〜!?ヤバー♡」


あ、今日金曜か。


2時間目は教室を移動する授業、そのために階段で下へ降りる。


廊下ですれ違いざまにたまたま聞こえた女子生徒の会話で

今日の曜日を思い出すぐらい頭がボーっとしている。


具合悪いわけじゃないけど、足取りは重く

視線もずっと下を向いたまま前を向く気力がない。


まるで体の中にずっと雲が覆いかぶさってるような感覚。

早くホームルームを迎えて帰りたい。


階段の途中には掲示板がある。

下へ降りる時は、いつも何気なくそこに貼られた記事を流れるように見る。


だが、今日は見慣れない紙が貼られていた。


「軽音部員、募集...?」


校内のバンドだ、手書き感満載で他の掲示物に比べ逆にインパクトがある。

ギターを募集しているらしい、作曲できる方歓迎とも書いていた。


軽音か、どうせ流行りの曲しかやらないんだろう。

ちょっと珍しいことやって女の子にキャーキャー言われて終わり。

趣味も趣味。


だからと言って、

この部活で俺がやりたいことはあるのかと言われれば、無い。


興味はないはずなのに、俺はその時、

なぜかこの記事をまじまじと見ていた。






っ! まずいチャイムが鳴ってしまった。

急いで教室に行く、遅れた理由は「腹痛」と嘘ついた。







なんだかんだあって、今日の授業は終わった。

ホームルーム中、なぜだろう、なんだか気持ちがムズムズしている。


何故って、あの時見た募集記事だ。

あの時は心の中で酷評してしまったけど、なぜか今でも気になる。


いつも通り帰宅部でダラダラと気楽に生きていこうぜっていう自分と

何かしらの経験を積んでみようぜっていう自分が戦ってる。


どうしたらいいんだ、迷っていたらそろそろ下校時間だ。

あと2分ぐらいでホームルームが終わる、決断の時まで残り少ない。






チャイムが鳴った、足早に俺はどこかへ向かっていた。






...そう、玄関だった。

このまま帰ることにしたんだ。


「校内であれ外部であれバンドをしたところで将来なんのためになるんだ」

そんな答えを出してしまって、ある意味逃げてしまった。


そして帰宅しては早々と部屋着に着替えて、風呂入って飯食って

ベッドに寝転がって、適当にソシャゲやって、少ない友達のメール返して、寝る。


はずだった。






その夜、寝ようとしてた時に友達からメールが来た。


------

おつ!明日空いてる?俺の先輩がなっちゃんにあいたいってさ

大事な話って言ってた

------


え?なに?これ、呼び出しくらってシバかれるときに

よくあるパターンのメールじゃん。

俺なんかした?全く記憶にないけど。


これが不良ってやつか、

たぶんあいつ教室でいつもボーっとしてるから、

たかって財布の中身奪ってやろうみたいな?うわぁぁぁぁ...。


つかそもそも、なんでそんな輩と関わりがあんだよ。

起きる事起きりゃ即転校だな、ついでに友達とも絶交。


ちなみに、このメールをくれた友達は俺の幼馴染で高士(たかし)。

小学校からずっと一緒で、この学校もそいつが行くからってことで

俺もノリで入った。


なんでも、そいつが入部してる軟式テニス部を通して

上の学年や他校の生徒と人脈があるらしいのだが、

まさか、そっち系の人たちと親交があるとはな。


…と、随分俺の勝手な妄想で話を進めてしまったが、

ダメ元で一応聞いてみた。


------

おつー、その先輩誰? 一応用件も聞いておきたいかな

------


割とすぐ返事が来た。


------

「こーすけ先輩、ソフテニと軽音部の、話の内容はしらんw」

------


軽音部、あの?


やっぱ、部費が足りないからってんで俺にたかって財布の中身奪ってやry


もしそうなら、ここで断っても来週学校に行った時に集団で襲われた挙句、

体育館裏に連れて行かれて終わりだ。


今は素直に従った方が利口か。

一応なんかあった時の証拠としてボイスレコーダーも持っていこう。


とりあえず、友達には「わかった」とだけ打っておいた。

明日の昼、待ち合わせ場所の学校正門前で、全てがわかる。






翌日、学校正門前の近くに行くと、そこには例の先輩プラス3人の仲間がいた。


こーすけって人は確か3年だ、とすると他の人たちも3年?

しかも全員派手髮だし、V系みたいなファッションしてるし、

アクセでジャラジャラしてるし、完全にそっち系じゃん。


もうこの時点で俺の心はズタボロだった。

このままUターンして帰って、高士にはお腹痛くなったって嘘つくか。


...そうしよう、保身第一。

そう思ってボイコットしようとした瞬間。


「なっちゃーん!?」


明らかにその正門前から声がした。

呼び止められた瞬間、頭が真っ白になった。


ここで逃げても追いかけ回されるに決まってる。

運動は苦手だから走ったってすぐに追いつかれる。


結果、腹をくくるしかなかった。

ゆっくりゆっくり、その先輩達の元へ近寄っていき、


「あ、は、はい、ナルです。」そう答えた。


「うっすうっす!わりぃね急に呼び出しちゃってさ、もしかして緊張してる?」

「あんまり後輩にプレッシャー与えるなよ、おびえてるだろ」

「ただ様子を伺っただけだよwうしっしたらとりあえずあそこ行くか!」


中でも特にチャラ具合が濃い二人の先輩たち。


あそこというのは ...体育館裏ですね、わかります。

取られてもいいように今までためてたお小遣いの2万は

財布に入れて来ましたけども。


今はただ、その先輩達について行くしかない。






正門から少し歩いたところに分かれ道がある。

その角を左に曲がればちょうど体育館裏だ。


今日はどの部活動も稼働していない、ゆえに教員もいない。

体育館裏は草木に囲まれてるから、歩道からも様子を伺えない。

左に曲がったら、終わりだ…。


「うしっ車行ったな、今のうちに横断横断っと!」


え?


先輩たちは左に曲がらず、そのまま学校と正反対の道を進んで行った。


たしかこの先は商店街だ、スーパーとか洋服店とかゲーセンとか、色々ある。

とくに放課後は、この商店街にタムロするウチの生徒で溢れかえる。


となると、たかりじゃ、ない?

こんな人の多いところで騒ぎを起こしたらたまったもんじゃないしな。

いや、でもまだわからない、警戒を解かず用心しよう。






そして気づけば、俺たちはファストフード店に入っていた。


「なっちゃん何飲む? コーラとかでいい?」

「あぁはい、コーラを飲もうかと」

「おっけー!俺出すから」

「え!?いえいえ大丈夫ですよ!」

「遠慮すんなよ!今日は俺が急になっちゃんの時間もらったアレだからさ」

「す、すいません、ありがとうございます。」

「セットも頼むから、ポテト分けようぜ!」


この人がこーすけ先輩だろうか。

一緒についてきた仲間たちも口を開く。


「えー僕ポテトきらい」

「じゃあお前はそこのスーパーでなんか買って食え」

「ここ持ち込み厳禁なのよ?w」


他の先輩方のしょうもないトリオ漫才のような会話をよそに、

各々頼んだ注文品が出来上がるまで待つ。

こーすけ先輩と思われる人とポテトが嫌いと豪語したな先輩が会話し始める。


「食いかけが嫌じゃなけりゃ俺のチーズバーガーやってもいいけど?」

「あんがとー」

「え?いいん?俺と間接キスしたことになっぞ?w」

「いよー、はらへったもん」

「なんでだよwww、お前そっち系?www」


「The 学生」って感じの会話。

一瞬でも和やかな空気を感じれてちょっとホっとした。






そして二階の飲食スペースに上がって、俺たちは席についた。


ポジションでいうと、俺一人が壁側の長いソファーに一人で座らされて、

先輩達は店を出る通路側に椅子を並べて、

俺とテーブルを囲うような形でどっしりと座った。


「ヘビににらまれたカエル」とは、まさにこのことである。


「うしっさっそく本題なんだけど、なっちゃん、軽音部に興味あったりする?」

「軽音部、ですか?」

「うん、実は俺見ちゃったんよ」

「え…?」

「いやほら、昨日掲示板に貼ってあるウチの募集記事、随分と熱心に見てたじゃん」

「え!?どうしてそのことを」

「一昨日、俺あんま寝てなくてその日激ネムでさw 朝っぱらからサボって保健室で寝てたんよ、んで二時間目から授業しよーと思って教室戻る時に、ジロジロ掲示板見てる子がいたワケ」

「…確かに見てました」

「あやっぱそなんだ! 本名[ナル]だけに?w」


はっきり「寒いですよ」とも言えない。


「ちらっとネームプレートの色も見えて緑っぽかったから[あれ一年か?]と思って」

「あ、はい、一年です」

「軽音部は今ギターが抜けてメンバー足りないから休止してるんよ、んで俺テニス部と掛け持ちしてるんだけど、そろそろ一つに絞りたくてさ、それでテニス部の後輩をつたって色々聞きまわって、たかしーに聞いたら、ソレなっちゃんじゃね?って話になって」

「じ…じゃあ、僕が移動授業に遅刻したことも?」

「言ってたねw 授業すっぽかすぐらい見とれちゃった感じ?うれしいなぁーw」

「あぁいえ、そういうことでは...」

「冗談だよw まぁ誰だってサボりたくなる時あるっしょ」


そっか不覚だった、見られてたのか。

しかもよりによってその軽音部員に、全く気配がなかった。


「あ、つーか、紹介遅れたね、俺は光介(こうすけ)、軽音部のボーカルでリーダー、んでこっちがドラムの和美(かずみ)と、ベースの寿(ひろし)、んでマネージャーの愛香(あいか)。」

「4ピースなんですね。」

「そっ、本当はあと一人楽器隊入れたいなって思ってるんだけど、なかなかメンバーがみつからんのよ。」


5ピースでメンバーを募るのはたしかに難しい、バンドでキーボードを弾ける人間なんてそうそういないだろう。


「んで、たかしーから色々聞いたよ、ギターやってるんだって?おまけに作曲もできるんだとか?」

「えぇ、趣味程度ですけど」






そう言えば、諸先輩方が自己紹介してくれたのに、

この俺については何もみなさんに説明してなかったですね。

「おっそ」っていうツッコミが入りそうだが、あらためて。


名前はナルで、親友の高士からは「なっちゃん」と呼ばれてる。

正直その呼び方は嫌いだけど、言っても直してくれないから放置してる。


小学5年ぐらいからロックやメタルといった激しい音楽に魅了されて、

ギターとドラム、ベースをやり始めた。


中学から作曲も自己流で勉強し始めてDAWで自由に作れるようになったけど、

作る曲のジャンルと言えば激しいジャンルばっかり。


バンドも中学生の時に外部でやってたけど、

メンバーの音信不通などが原因になって解散した。


だから今は、ゲームしながらダラダラと適当に毎日を過ごす、ただの学生。






「そっか!実はさ、俺たちも今度オリジナル曲を作りたいって思ってたんよ!んでゆくゆくはサブスクで配信して、PVも作ってShowCubeに載っけたりしてさ、いい思い出になると思わね?」


なかなか将来のビジョンもはっきりしてる、だが寿先輩も口を挟む。


「いいのか?お前大学受験もあるんだろ?今は付き合ってやってるが、いつまでもバンドに夢中になってるわけにもいかねぇだろ。」

「まぁそれはそれで置いといて!青春が思い出だけで終わっちゃうなんてもったいないじゃん?せめてバンドでなんらかの形に残したいんよ。」


まるで父と息子のような関係性だ。


「どうせみんな、大人になったら社会の歯車になってセカセカ働くことになんじゃん?、でも学校でバンドができるってだけで貴重な体験だと思うし、楽器やったことなくても、誰だってお気に入りの曲を聴いてハッピーになることはできんだろ?だから、いつかどっかで俺たちの曲を聴いて、ほんの少しでも昔を懐かしんだり、元気になる人がいてくれれば俺もハッピーだからね、音楽って自由に楽しめる、万人の癒しなんよ」

「...」


俺は話を聞く半分、色々と思いに耽る半分、なんだか複雑な気持ちになっていた。

周りからは少し意識が飛んでるようにも見えただろう。


「...あーナルごめんねー、こーすけは一回語り出すととまんなくなんのさー」

「ふふっ昔っからなのよ、ロマンチストっていうかw」


そんな俺を和美先輩と愛香先輩がカバーする、気を遣わせてしまった。

光介先輩はまだ話を続けている。


「んで、実際にレコーディングをしにスタジオに行ったり、ライブハウスでライブができるんならやってみたいし、俺たちの練習風景とかも配信したり、フライヤーと作ってプリントして全校生徒に配ってアピールしまくってさ!」

...






すごいな、正直俺は学生バンドなんて

モテたい奴ら、有名になりたい奴ら、楽器をかじってる奴ら、

好きなアーティストで繋がった奴らとかが

適当にこぞってやってるだけっていうイメージしかなかった。


でも、こんなにきちんとした考えや夢を持っていて、意欲もハンパない。

ちょっとクサいことを言う面もあるが、

本気で上を目指すバンドをやったことない人間からすれば

惹かれるものもあるっていうか。


「ん?なっちゃんどした?」


光介先輩のその一言で完全に意識が戻ってきた。


「え?あぁはい!」


「言わんこっちゃないな、お前の話は長いんだよ」

「あ、やっぱそうかwすまんねたくさん話しちゃって」

「い、いえいえ!そんなことは」

「まぁ、より詳しい話はまた追い追いって感じで、とりあえず来週にでもセッションしよっか」

「わかりました…って、え!?」


先輩方4人が目を丸くして驚いた俺を見つめる。

俺が正式に加入するって話、今の流れでしてたっけ?


「い、いやいや、たしかに先輩方は凄いしかっこいいなとは思いますけど、まだ加入OKはしてませんし、まだ一人でゆっくり考える時間が欲しいっていうか」

「ほーほー、つまり興味はあるってことだ!」

「え?...あー、まぁ...。」


はっきり「やりません」と言える言い分を考えておくべきだった。

光介先輩は、何か別の考えを持ち出そうとしている。


「であれば、俺たちがカバーしようとしてる曲のバンドスコアも持ってきてるから、あとでそれ渡すよ、入部する気になったら来週水曜日の放課後、第二音楽室にきてくれよな、一緒に合わせようゼ!」


えぇ...。


余計に試されてるような雰囲気になってしまった。

軽音部の実情、光介先輩の想い、

これだけのことを聞かされて完全に逃げ場なんてない。

「はい」と言わざるを得ない。


「うし!んな感じでよろしく...あ!かずみん俺のチーズバーガー食うなよ!」

「だってくれるゆーたやん」






そのあと近くのコンビニに立ち寄り、

2曲分のバンドスコアをコピーして渡されて連絡先を交換しあったあと

親交を深めるという理由でゲーセンに付き合わされ、別れた。


なんて話がうまくて押しの強い先輩なんだ。

さすがにたかられたり暴行を受けるなんてことはなかったけど、

トントン拍子に話が進みすぎている。


家についた時には夜の19時になろうとしていた。






「ただいま」

「おかえり、あんた随分と遅かったのね、どっか事故にあったんじゃないかと思って心配してたのよ?」

「まぁ...ちょっと色々あって、飯はいいや」


母親に心配されながらもすぐ二階に上がって自分の部屋に入って、

持ってったカバンも床に放ったあと

部屋着に着替えて風呂に入ってベッドへダイブした。






疲れた...。


今日1日、目まぐるしく起きた出来事を整理する体力もない、

立ち上がる気力もないからそのまま寝る事にする、

事を振り返るのは明日にしよう。






翌日、まだ疲れはとれない。

まるで10キロぐらい痩せたんじゃないかと思うぐらい、足取りがフラフラする。

人と話すだけでこんなに気疲れするとは...あらためてコミュ障を実感する。






適当に朝食食べて自分の部屋にこもったあと、

昨日いただいたバンドスコアのコピーを開いてみた。


コピーする曲は自分も知ってるアーティストで、

俗に「J-ROCK」と呼ばれるようなジャンルだ。

幸いにもポップスではないので、まぁまぁ自分も楽しんで演奏できるかな。


2曲ともすんなり覚えれた、場合によっては多少アレンジも効くかな、ぐらい。






さて、あとは合わせるだけ、で終わらないんだよなぁこれが。


一番気になってるのは、仮に入部したとして

あの先輩方とうまくやっていけるのかということ。


みんな気さくで優しい人達だったけど

これがずっと持続していけるものなのか、

途中で喧嘩したり、何か事件とか起きて結局廃部とかにならないだろうか。


バンドもののアニメや漫画の見過ぎだと思うけど、

入部する前からまた変な妄想ばかりして勝手に不安になっていた。


正直、絵に描いたような青春はあまり経験したくない。

俺はただ、ごく普通の人生を過ごしたいだけなのに。

またバンドをやる羽目になるなんてな、しかも学校で。


今なら断ることもできるか...とも思ったけど、

会って間もないのにこんなによくしてもらって、

さすがに簡単に断るわけにはいかない。


男くさい仁義をたてるわけじゃないけど、

しばらく一緒にやってみて限界がきたら盛大に謝って

今まで通りの人生を過ごそうと。


緊張でお腹が痛い、でもこうなった以上、やるしかない。

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