作品は心からの噴出 🍐
上月くるを
作品は心からの噴出 🍐
自分はヘタウマのイラスト擬きしか描けないのに、なぜか画家の友人が多いヨウコさんは、日本画・洋画・ポップアートの各分野に心からの畏敬の念を抱いています。
その影響もあってかひそかな趣味のひとつが絵の鑑賞で、以前はよく美術展に足を運びましたが、コロナを挟んだ現在は画集や関連書籍を紐解いて目を洗っています。
🫐
最近、感銘を受けた一冊が内外の美術に見識が深い中野京子さんの『運命の絵』。
文庫ながら見開きのカラーで当該作品が掲載され、作家&作品解説が適格&丁寧。
――貧しく虐げられた時代には心から噴出する主題と表現があったのに、成功して豊かになったとたん、それは手からこぼれてゆく。アウトロー的な外見に似ず繊細な神経をもつムンカーチ・ミーハイは自らの芸術的展開への焦りを感じていたようだ。
こんな解説を提供され、息を呑まない読者は少ないと思われます。ことに同じ創作の末席に身を置くヨウコさんとしては、素直にかつ激しく共感せずにいられません。
🥑
心から噴出するもの……それこそ創作の原点であることに異論はないでしょう。
多少の荒っぽさや些少のミスなど吹き飛ぶほどの威力を持つのは一に「こころ」。
美術家は絵筆の、作家はペンのひと振りに、噴出するわが魂魄のすべてをこめる。
それであってこその芸術であり、リスペクトの対象になり得るのだと思うのです。
であるならば、自分はずっと虐げられたままでいい、いや、むしろ、それを望むと言えるのは世代の特権かも知れませんが、少なくとも、創作に馴れてはいけないと。
🫒
話は変わりますが、その許容範囲が無限大であるだけに、いずれの分野においても自由と称されるものの恐ろしさに、ヨウコさんはかねがね畏怖の念を抱いています。
たとえば俳句においては、若手の騎手とされる高柳克弘さんや神野紗希さんの作品に触れれば、その芸術的クォリティの至高にいたる至難を仰ぎ見ずにいられません。
あるいは、今年度から俳句に素人のお笑い芸人を司会に採用するなど画期的な変容を遂げている『NHK 俳句』を一回でも観れば、自由の恐ろしさを体感できるはず。
短歌についても同様と思われますが、きちんと学んだわけでもない分野にもっともらしい私見を述べるのは、芸術はもとより諸賢に対しても無礼なので差し控えます。
ただ、いまなお若い読者を獲得しつつレジェンドにもなりつつある俵万智さんや、萩原慎一郎さんの奇跡の歌集『滑走路』を読めば、その凄さに圧倒されるはずです。
作品は心からの噴出 🍐 上月くるを @kurutan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます