第9話 陰キャ俺、試される。

久しぶりに会社に呼び出された俺は、正式に解雇通知を突きつけられることとなった。


覚悟はしていたが、やはり堪える。


99%諦めていたが、1%……いや0.1%くらいは復職の望みが叶うと心の片隅で思っていた。


それがいま、僅かな望みさえ0になったのだ。


周囲の俺を見る視線が痛い。

まるで俺が犯罪を犯したような、クズを蔑む視線を浴びせやがる。


若くして人事担当を任され、俺は上司や会社の期待に応え続けてきた。


社畜として安月給でも文句を言わず、こんなに会社に貢献してきたのに。


それも全て、今日で終わりだ。


俺は振り返ることなく会社のビルを後にした。


この土地に来ることも最後だ。未練などない。

俺はそんなことを考えながら最寄り駅へと一直線に歩いて行った。



「あれ~?お兄さんじゃん!なにしてんの?」



道から駅へと続く階段を上っている途中、すれ違った女性に声をかけられた。


ノースリーブにショートパンツ。


相変わらず肌の露出が激しいこの女性は、奇しくも以前にこの同じ階段で出会った痴女の白ギャルだった。


下ばかり見て歩いていたので、全く接近に気づかなかったのだ。



彼女の名前は白浜 玲奈。



連絡先を交換して遊ぶ約束までしていたが、赤羽先輩と上手くいくかもしれないと思い始めてからは連絡を返していなかった。



「ねえ、なんで連絡無視してたの?」

「いや……それはその……」



正直に赤羽先輩のことが好きなので伝えるか?


いやでもこの女、化粧や髪色こそ派手だが顔もスタイルも並じゃない。


俺に執着しているなら、ここで関係を途絶えさせるにはあまりに勿体ないか……?



「いや実は嫌なことがあって、それで連絡を返す気分になれなくて……」


「ふ~ん、ウチが相談乗ってあげよっか。どんなこと?」


「……言いにくいんだが、冤罪で会社を解雇されたんだよ。俺、なにも悪いことしてないのに。貯金もないし、次の働き先なんて決まってないし、俺の人生真っ暗なんだよ……」



俺が目を潤ませて訴えると、彼女は相槌をうちながら真剣に俺の話を聞いてくれた。


真っ直ぐな瞳で涙まで潤ませて。ギャルは人情に厚いっていうのは本当らしい。


俺が行き詰っていることを伝えると、彼女は突然俺の両手を握って言った。



「ウチの会社に来ちゃう?アテがないんだよね?」


「いや、そんな君の権限でどうにかできるものじゃ……」


「できるよ〜ん!ウチ、社長だから」



彼女は鼻を高くして言い切ると、名刺入れを取り出して1枚の名刺を差し出した。



『株式会社Candy 代表取締役 白浜 玲奈』



そこには、確かにそう書かれていた。


畏まった明朝体の表記と、名刺を彩るポップなイラスト。にわかに信じ難いが、彼女は本当に社長なのかもしれない。


「コレ、本当なのか?」


「そうだよ~。ウチってこう見えて凄いんだから」


「いったいどんな事業を?」


「アクセサリーとか香水とか?まあ可愛い雑貨屋さんって感じかな。まだまだ規模は小さいんだけどね」


「そ、そうなのか」



白浜玲奈が社長だった。

その事実から俺は新たに閃いた。



この女は俺に惚れている。

金持ちとあれば、利用しない手はない。



ここ数週間、俺の食事は配達などを利用するばかりで浪費が嵩んでいた。

家賃も抑えたい。無職の間は、今の部屋の家賃を支払い続ける余裕はない。

ここらで報われてもいいだろう。

俺がなにをした?



「俺を……君の会社で雇って欲しい!働き口に困ってるんだ!なんでもする、なんでも!」


「へぇ~、なんでもするんだ~?じゃあ、こういうことでも平気なのかな?」



彼女は小悪魔の微笑みを浮かべながら、俺の局部を刺激する。ゆっくりと、じっくりと、スーツの薄い生地の上に指を沿わせて。


俺は唇を噛み締めながら、必死に声が出そうなのを我慢する。


今の俺は赤羽先輩一筋だ!断じてこんなビッチの白ギャルの手に堕ちるつもりはない。


だが俺の生活がかかっている。

ここは我慢、とりあえず言いなりになって我慢だ!


絶頂しそうなのをなんとか抑え込みながら、俺は彼女の悪戯をひたすら耐え抜いた。


されるがままの俺の悶える表情を見て、彼女は目がウットリしている。サドの血が流れているのか。


この前とは違って俺が抵抗しないことを知るや否や、彼女は強引に俺の手を掴んで引っ張った。



「さっ、行こっか!ウチでお兄さんの採用試験しなきゃだね」



そういう訳で、俺は彼女の家へと案内された。



駅から歩くこと数分。


8階建てのマンションの302号室が、彼女の部屋だ。ドアの前でテンキーのロックを解除すると、傷ひとつない重厚な扉が開かれた。



「どうぞ♡」

「あ、あぁ……」



女性の家に招かれた経験が乏しい俺は、恥ずかしながら緊張していた。


玄関に入るとフワッと花の良い香りが漂う。

流石に雑貨屋の社長というだけあって、置かれているモノはどれも洒落ているモノばかりだ。



「ちょうどひとつ部屋が余っててさ〜、今はウチの荷物置きになっちゃってるんだけど」



彼女の言う通り、間取りは広々とした2LDK。

1人で住むには少々スペースが余るか。



——次の仕事が決まるまで、とりあえずはこの女に従って居候して過ごすか……?



「で、俺の採用試験っていうのは?」


「あ、いっけない忘れてた!ウチの会社さ〜、別に人手は足りてるんだよね。だから社員として雇うって訳じゃなくてぇ〜」


「……どういうことだ」


「お兄さんのことを、ウチ専属の性玩具として雇っちゃおうってわけ♡興味あるよね、性玩具♡衣食住ついて給料も性欲も満たせるなんてお兄さん天職じゃん!」


「チッ……そういうことだろうと思ったぜ。ぐ……具体的な勤務内容は?」


「う〜ん?ウチが満足するまで抵抗せずに毎日毎日○され続けることかな。あっ、でも終身名誉童貞のお兄さんには刺激が強すぎるかなァ?」


「……俺にやる意志があると言ったら?」


「へぇ〜?だったら今からウチが、気の済むまでお兄さんのことグチャグチャにする。お兄さんの顔見てると、そういう気分になんだよね。でもほら……お兄さんのコレも、満更でもないじゃん」



社会的立場で完全に優位に立った彼女は、なんの躊躇もなく俺のイチモツを揉みしだいた。

彼女の言う通り、不覚にもビンビンにそそり立ったイチモツは今か今かと出番を待ち侘びている。



——自尊心と罪悪感を棄てられるか……!?



白浜玲奈は前触れもなく透け透けのノースリーブを脱ぎだすと、そのままショートパンツも脱いで下着姿になった。


黒地のシンプルな下着。

彼女の白すぎる美肌と対極。陰陽師だ。

俺の視線はどうしても、胸のヒマラヤに。

そしてゆっくりとVライン、さらに生足へと全自動で動いていく。仕方ない、条件反射だ。



——普通に居候して社員として働くつもりが、とんだ誤算だ!このままじゃ俺、本当に性玩具に!?



「ウチのこと気持ちよくできたら合格ね。……ほら、もっとこっち来て」


彼女は艶かしい笑みを浮かべて、ゆっくりと指を動かして手招きするのだった。

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陰キャ俺がモテる為に占い師に相談したら、痴女に絡まれまくるようになったんだが!?〜俺が求めてるのは純愛なんだよ!絶対に貞操は守ります!〜 オニイトマキエイ @manta_novels

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