白威参陣

一向に進まない被災地復興にとうとうしびれを切らして、箱舟本店から派遣されてきたサルスベが拳を握りしめて白衣をばさりとやった。


背中にはトレードマークの蒼い月に紅と黒の縞模様の虎が刺繍されているド派手なものを着ている。


「カエルの周りだけ、綺麗にしてこいやといわれちょる!。ったくこの国の業突張りどもはどうなっとんじゃき!!。建物ぶっ壊して更地にしたら、住宅利用の税金の割引の適応が無くなって税金が跳ね上がる上解体に何百万もかかるじゃったら誰が壊したいんじゃクソが」


建物が自然に崩れるまでほっといた方が、自分が生きとる内に税金増やさんようにするにはうってつけやて悪人の巣窟になっとるのほったらかしかい。


「全くですよ、これどうにもならないじゃないですか」


「おぉ、ササキ屋のリドベルお前さんも呼ばれちょったがや」

「主任、なまりまくってますよ。どんだけ気分が良くなってるですか」


「大体、キャンピングカー被災地に送った所で台数が全然足らんがや!」

「特殊車両は、製造ライン全部別の事に使ってますからね。だから、研究所のラインにお鉢が回ってきたと言えるんですが」


「通貨安のとこでもの売ったってしょうがないじゃき、同じものを同じ材料で作って通貨高の通貨で売れりゃそりゃ実質数倍で売れるから企業として儲かる方に売るのは当然の事やが……」「ダストの奴は、それじゃ通貨が戻るまで被災地に送るキャンピングカー作れんがやって。漢研究所になんとかせぇゆうてきたが、それにエノ様が同意して大路にせめて金だけ出せって言ったんや。相変わらず、エノ様は無茶苦茶じゃき」


「おまん、言った奴は作ってきたんじゃろな?」「ばっちしですよ」



眼の前に山積みされている、ミカンの皮をむいたような壁の山。


「どんな、アホでも貼り合わせるだけで六十分で家に組み立て可能な。組み立て式住居カプボックリ、これの凄い所はオプションであらゆる住居の要求に対応出来て建設も解体も一時間で出来る上に防音耐震耐火等も備えてる主任の要求全て叶えてある事です。無論、誰が組み立てても建築法の厳しい基準を一発クリアできるようになってます」


「流石やで、本職がぽっくり逝くほど簡単に組み上がって値段が安い。但しデザインは眼をつむってくれやっちゅうやつやな」「今日中に、買った土地更地にしてこいつを並べれるだけ並べますよ。ダストから、人員借りてきてますから」


今回、ボーナスが良いんで眼の色変えて頑張ってくれてます。


(毎回、その書類や手続きに追われ続けて更に干からびるダスト)


手順はこうだ、玄関パーツを最初に立てて、一番から順番に右回りに貼っていくと十番で玄関まで戻ってくる。これで一部屋分で、室外機や電気は外にボックスとして十番に貼り付ける様になっている。断熱材の類は特殊スプレー一拭きすればオッケーで、解体する時は解体スプレーをかけると断熱材が水と空気になるという異次元設計。しかも、この断熱材が接着剤や強度補強用の材質も兼ねているとか言う可笑しな代物だ。


ちなみに、これの何がやばいって「解体用スプレーをかけなければ六百年新品の機能を維持する」という部分。


※普通の建物でもこんなに持ちません


また、下水等は六番の外にパイプがでておりここに専用パーツをくっつけると専用の下水設備まで魔法陣で転送される為にメンテフリーとなっている。広げたい時は、壁の横のボタンをおしてその部分だけを外して同じように二番から部屋を貼っていき、中敷きドアのパーツをくっつけるとブドウの様に広げていける。


(この為、部屋の接続に使えないパネルが存在するが特注のパネルに入れ替えるとどの番号でも外の下水や室外機の設置は出来る為自由度がバカみたいにある)


又、二階建て以降は八番だけあけれる様になっており階段パーツを接続して上の階も同じように接着し床板をはるとこれも自動干渉連結材で繋がる様に出来ている。これは、五階まで接続可能だ。判りやすく言うと、これを一部屋セットで五十万で制作。サウナや風呂等は専用部屋を五万からというものをリドベルが設計漢研究所で製造。


漢研究所のラインを三か月全ライン貸し切りでありったけ作って来たという経緯。相変わらず、エルフの研究所はとち狂ってる。しかも、固定した段階で大地に密着する為震度七でも建物はびくともしない上。耐火性能を調べる為に、十日間ダイナマイトやら火竜のブレスやらを二十四時間体勢でぶっかけ続け。焦げ一つつかない事を確認して出荷するなど、驚異の耐久力を心掛けている。


「本店は非売品やから、ちゃんと回収してこいと。後、子供と年寄が居る所は優先して貸してやれとさ」「大路に殆ど払わせるから無料でも良いが、信用されないんで一か月五千位とっとけやとゆうちょった」「いっぺんに処理任せたらダスト達本店連中が書類で死ぬんじゃないですか?」「不許可な連中に貸さん為には必要な処理じゃき、ダスト達には泣いてもらえや。うちらとしても特別顧問の許可のないモノには何者であっても本店の設備何か貸せんで」


「それにうち等は、作りたいもん作れたら後はどうでもええんじゃき!」

「そりゃそうですね、やるのダストさん達で私達じゃないですものね♪」


仁王立ちで、夕日に向かってやってやったと笑顔の女エルフ二人。


「しかもこれ、何が凄いって建物ってもう書類で認めさせてますから。一回更地にして片付けてもコレ置いとけば減税の適応受けられるって事ですし」


「片付ける時は、ボタン押してスプレーして剥がすだけやし。誤動作防止に、ボタン押せんようにするスイッチは床下やから。そこあけん事にはびくともせん」


夕日に向かって高笑いを続け、エルフが吼える。


「予算が好きに使えるっていいですよね♪」「まったくじゃき~」

「解体用の犬(ワン)ダブルももってきちょるし、バリバリいくでー!」


※火災を消す為の放水車と、切断用のウォーターカッターを目標に向けるだけで自動判定して水圧調整する放水車と電磁力と亜空間接着で瓦礫だけを持ち上げる機能の付いた漢研究所の作特殊車両。犬型で耳の穴の部分に <便 器>と彫られている。走る時サイレンの変わりに熱血系の曲が大音量で流れる為に作業員からは大変不評である。



その後、請求金額の膨大さで大路がエビ反りブリッジで頭を抱えて死にそうな顔に……。


「エノ様からの命令じゃなかったら、殺しとるぞあいつら! どんだけ予算つかいこんどんのじゃ!!」


大路は請求書をぐしゃりと握り潰しながら、凄惨な笑みを浮かべて叫ぶ。

「じゃが、製品は流石じゃ。これだけのモノなら、きっとご満足頂けるはずっ!」


(満足頂けなかったら絶対に許さんぞ……)




(おしまい)


※本編:怠惰の箱舟で関係ありそうな幕


第七十八幕 漢研究所

第百五十七幕 雑貨屋ササキ

第二百十六幕 ドラックカエル他

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怠惰の箱舟閑話集 めいき~ @meikjy

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