100話目に正ヒロインと○ックスする話

西川 旭

第1話 俺と幼馴染と先輩と

 柔らかな日差しが差し込む、六月の日曜日。

 自室、ベッドの上。

 七度寝を決め込んでいた俺、渡辺和明の耳に、黄色くけたたましい音声がいきなり響いた。


「かずあき! 赤ちゃん作ろう!!」


 黒髪ツインテール女子高生にして俺の幼馴染である、桃野沙織、通称さーちゃんの声だ。

 桃野という姓が示す通り、かどうかは分からないが、桃色にほんのり染まったほっぺたが可愛らしい、美少女JKである。

 さーちゃんが、寝ている俺の布団をはぎ取り、俺の体に馬乗りでまたがる、いわゆる騎乗位スタイルになって、そう叫んだのだ。


「うーん、まだ眠いから、あとでな……」


 寝ぼけた頭で俺がそう答えると。


「あとで? じゃあ起きたら、絶対だよ! 約束だからね! あたし、お風呂入ってくる!」


 さーちゃんは元気にそう言って、勢いよく俺の部屋から出て行った。


「なんなんだ、一体……」


 俺はそのまま八度寝に突入しようとしたが、このまま寝ていたらわけもわからないうちにさーちゃんと子供を作って学生結婚もしくは退学する羽目になりそうだと思い、意識を覚醒させて体を起こす。


「さーちゃんと、子作りか……」


 隣の家、桃野家の壁を通して、おそらくはさーちゃんがシャワーを浴びている音が聞こえる。

 ハテ、さーちゃんがいきなりそんなアホなことを言い出した理由はなんだろうと考える。

 俺は別にイケメンでもなく、学業や運動やお笑いに秀でているわけでもなく、平々凡々な高校生男子として、毎日をのんべんだらりと過ごしているだけの、渡辺和明でしかない。

 まあ、小四の頃にさーちゃんをいじめてくる奴らから守ってガキ大将とタイマンを張ったら階段から落ちて顔に大きな傷が残ったり、中一でさーちゃんが学校帰りにおしっこを漏らしたときに一緒に田んぼに飛び込んで濡れたことを有耶無耶にしたり(親にはなぜか俺だけ怒られた)、中三時点で高校入学が怪しいレベルだったさーちゃんの勉強に放課後毎日みっちり付き合ったりと、縁の深い関係ではあるが。

 決して、さーちゃんほどの明るく可愛い女の子に惚れられるほどの、大した男でないことは、自分自身、よくわかっているつもりだ。


「気の迷いでさーちゃんを十代の母にするわけにはいかねえ。とりあえず逃げるか」


 俺は「さーちゃんと子作り」という甘く淫靡な想像のせいでたぎる下半身の一部をなんとか鎮めて、パパっと着替える。

 自転車に乗り家から離れようとしたとき、隣の桃野家の壁を通して、さーちゃんの鼻歌が聞こえた。


「相変わらず音痴だな……」


 愛嬌はあるが調子っぱずれな歌声を背に、俺はとりあえず本屋にでも行って時間を潰そうかな、とか考えていた。

 さーちゃんがおかしいのも、夜になればおさまっているだろうと願いながら。



 ☆ ☆ ☆



「ハーイ、カズキ! ごきげんいかが?」


 本屋でえっちな本のコーナーに行こうかどうしようか迷っていた俺に、そう声をかける女の子がいた。


「ミネルヴァ先輩、ちわっす」


 俺と同じく、高校のゲーム研究会に所属する、ミネルヴァ・マーティンさんだった。

 鮮やかなセミロングの金髪を、ピンクのメッシュインナーが彩る、見た目は白人ギャルである。

 ぱっつんぱっつんに食いこんでいるホットパンツから覗くフトモモが、真っ白で、まぶしい。

 ちなみに俺が1年生で、ミネルヴァ先輩は3年生。


「ノーウェイ! ワタシのことは、ミニーって呼んでって言ってるでショ? ハイ、トライアゲイン!」

「ハ、ハロー、ミニー」

「オゥケェイ! 今日はファインデイね、カズキ!」


 俺の名はカズアキなのだが、縮めてカズキと呼ばれている。

 このように、気さくで明るく、豪快な人だ。


「ミネ……ミニー、そう言えば、GS4、本当にありがとうございます。ブルーレイも見れるし、ネットにもつながったし、問題なくゲームもできます、家族もめっちゃ喜んでます」


 俺はこのミニー先輩から、GS(ゲームスペース)4という、家庭用ゲーム機を譲り受けた。

 先輩は次世代機のGS5を買ったので、もう要らなくなったからという理由で、俺にポンとくれたのだ。

 俺がゲーム研究会に入ったことで、活動認定人数にギリギリ足りたから、そのお礼やお祝いということだった。


「他人行儀ですネー! 気にすることありません! カズキが楽しんでくれれば、私も嬉しいデス!」

「でもやっぱり、あんなに良い物貰っちゃって、しかもソフトも沢山……俺、なにかお礼をしたいを思ってるんですけど、ミニー、なにか俺に、して欲しいこととか、ないですか?」


 ミニー先輩が気さくな良い人であるのは間違いないが、それに甘えてばかりというのも良くない。

 俺にできることには限りがあるし、お金のかかることは無理だけど、なにかお礼をしたいと思うのは、当然の人の道だろう。


「ウーン、そうですねー。カズキとしたいことは色々、メニーメニーありますけどー」

「なんでも言ってくださいよ。四つ葉のクローバーを10個集めろとかでもいいですよ。それくらいなら前にやったことあるし」


 確か、さーちゃんがお母さんにクローバーをプレゼントしたいと言い出して、それに付き合って河川敷に何日も通って集めたんだった。

 腰を曲げてずっと作業してたので、体中がかなりバキバキに痛くなった記憶がある。


「ウフフ、それも素敵ですけど、ワタシは……」


 そう言うなり、ミニー先輩はふわりと優しい手つきで俺の顔を両手で包み。

 ちゅーっ。

 俺の唇に、自身の唇を重ねて、吸ったり。

 ぺろっ。

 俺の口の中を舐めたり。

 くちゅっ。

 舌を入れて来たり。


「ねェ、ワタシの家、来ませんか? 今日、誰もいなくて、寂しいんデース」

「えっ、いや、その、あのっ」


 衝撃でどうにかなっている俺の手を引き、俺を自宅へ招き入れようとするのだった。


「かずあきィ……!!」


 そのとき、タイミングがいいのか悪いのか。

 お風呂上りで肌や髪の毛をしっとりさせて、おそらく俺を探して走り回った汗で上気しているさーちゃんが、本屋の入り口に立ちはだかったのであった。

 

 どうなる、俺!?

 どうなる、さーちゃんとミニー先輩!?

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100話目に正ヒロインと○ックスする話 西川 旭 @beerman0726

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