喪失と抵抗

大塚

弔電

喪失と紫陽花まばゆし罪の色


薬降り左手ゆんでの傷が光る午后


五月忌さつきいみ 墓石はかいしを蹴り生きていく


野薔薇のいばらかんを戴くうつろの日


夕凪に届く訃報を破り棄て


ギヤマンの向こうでおまえはただわらう


ぜらにうむ眺む焼き場の煙揺れ


ほうら見て花柘榴手にあどけなき


まなこ上げ短夜みじかよに堕つおれの星


懐かしき煙の匂い振り払い


「おまえって蝿みたいだなしつこくて」


木苺を喰らうくちびるつやめいて


青薔薇でなぐり殴られ愛だった


煙吐く細きまなこは誘蛾灯


ダチュラ咲くあなたの庭で待ち惚け


戻らぬと知りつつ投げる火炎瓶


葬列は祭りの如く天高く


骨ひとつ噛み砕く音透百合すかしゆり


忌中です夏の月さえ喪に服す


待たず行けどうせこちらは茨道

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喪失と抵抗 大塚 @bnnnnnz

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