憂鬱な天気
高黄森哉
梅雨のある日
梅雨だというのに今日はかんと晴れ渡っていた。雲はそらにいくつか見えるが、日光を遮るわけではない。だから、こないだの大雨の、湿気が抜けない靴を、干すことにした。
外は日光で、こちら側は庇になっている。手の届く場所に日向があって、靴が光線を受けている。明るく道路が照っていて、眩しいくらいで、ここのところで、暗さに慣れた僕の目が、微かな痛みを覚える。
憂鬱な天気だ。雨音は一切聞こえず、静寂が空間を浸している。太陽は容赦ない熱波を人々に浴びせている。物事の輪郭が、明るさにとんでしまい、緻密さが失われている。全てがのっぺりとしている。
胸までしか高さがない小さな鉄の門を押して、散歩をすることにした。
家の裏に回る道はあぜ道で、両側が畑なので、視界が開いている。畑と住宅街と巨大な空。嘘のように青い。合成写真かのように鮮やかで眺めていると死にたくなる。まるで、世界が自分を無視して回っているようじゃないか。
田んぼから土埃が吹き、道路の表面を覆っている。きっと昨日の雨に飛び出して来たのであろうミミズが、沢山、干からびている。蛙の木乃伊が、平面に押しつぶされている。中身のないカタツムリの殻が、落っこちている。
憂鬱な天気 高黄森哉 @kamikawa2001
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます