第3話
「いててて……」
私を取り囲んでいる後方から、大きなものが落ちる音と少女のような声が聞こえた。
人々がバッと後ろを振り返る。
目線を向けるとそこには、陽の光できらきらと輝く金色の髪と透き通った水色の瞳の少女がそこにいた。
「あれ…ここ…」
少女は困惑したようにあたりを見回している。
私を取り囲んでいた人の半数がその少女を取り囲み、また声を上げた。
「せ、聖女様じゃないのか…!?」
すると、人ごみの中で「聖女様?」「聖女様が二人だと?」といった困惑の声が広がっている。
金色の髪の少女はスッと立ち上がり、声高々に宣言した。
「この国を救いにきました!聖女です!」
周囲が一気に騒然とした。
彼女は清々しい微笑みを浮かべながら、周囲の人々に笑顔を振りまいている。
「じゃあ……あの方は…?」
少女の周りにいた男が、私を指差しながら困ったように呟く。
「うーん…」
少女は私を一瞥しながら、困ったように腕を組んで考え込んだ。そして、少し考えた後、無邪気な笑い顔を向けながらこう言い放つ。
「偽物…ではないでしょうか?」
周囲がさらにざわざわとする。
すると…
「おい、一体何の騒ぎだ!」
声の方向に目をやると、3人の男性が歩いてきていた。騎士の鎧を身にまとい、堂々と胸を張って歩く姿は、あまりにもまぶしすぎる。
先頭の男は背格好が高く、ガタイのいい端正な顔立ち。右の男の背丈は中ぐらい、陽気な顔でニコニコしている。左の男は仏頂面で細目、こちらも背が高い。
「帝国三騎士!」
ざわざわとする周りから、そのような言葉が飛び交っている。三騎士…?
先頭の男性が私たち二人を見比べている。
「あなた方は一体どちらの方でしょうか。」
言葉はぶっきらぼうに聞こえるが、物腰柔らかで丁寧な物言いに胸をなでおろす。悪い人ではなさそうだ。
「聖女です!」
金髪の少女は嬉々とした顔をしながら先頭の男性に言う。
「聖女…まさか…」
男性は考え込んだような表情になり、左右の二人に目配せをした。
左右の二人は表情を変えず、大きくうなずいた。
「…神殿まで案内しましょう。」
そう言い、背を向けようとしたが再度踵を返して私たちに向き直った。
「帝国三騎士第一序列、エルビーン・アルモンドだ。それから…」
「俺は第二序列、ジュン・カシューだ!よろしくな!」
「…第三序列、スクラウス・デルテア…」
「じゃあ、あなた方の名前も聞いていいか?」
エルビーンが私たちに尋ねた。
間髪入れずに少女は大きな声で答える。
「ソフィア!よろしくね!」
名前…
「じゃあ、あなたは?」
エルビーンの緑色の瞳に吸い込まれそうだ。
「…レイ。」
「そうか。レイ、ソフィア、ついてきてくれ。」
エルビーンが再度背を向け歩き出した。その大きな歩幅について行くのがやっとだった。
私が聖女になる頃には 夜彩ひと @yoiro
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