雪華ちゃんは付いて来る?引っ越し先の幼馴染の家に同棲しに来ました

エレメント

第1話

「すみません。あの~……。」




現在深夜の1:00。こんな時間に訪ねてくるような人間に心当たりはなく、(誰だろう?こんな時間に、宗教勧誘か何かか? めんどいな~)俺は突然の深夜の訪問者にそのような思いを乗せつつめんどくさそうにゆっくりと少しだけ扉を開け外を覗いた。






――……――




俺こと斉藤 和樹はわけあって一人暮らしをしている高校2年生だ。


今は自分の家となった一軒家の外を見るともうそろそろ咲きそうな桜が目の前にあり、それが春休みの終わりを暗示する。


まぁ、そりゃあ後二週間もすれば春休みも終わり高校3年生になるのだから。


みんなもわかるだろう休みに入るとつい時間を忘れ、宿題など何一つしてない状況で新学期を迎えるか、もう最初の方で全て終わらせているかの究極の2択をしてしまうことを…。


絶対このことをわかってくれるやつはいる、と思いながらその人に残念なお知らせがある。俺は宿題を忘れたことはまだない。


そんなどうでもいいことを考えながら俺はダラダラと堕落きった生活を送っていた。着替えすらしなかったしな……。






――……――




そんな春休みが続いたある深夜、俺は急な訪問者の相手をしようと扉を開けた。正直開けたくはなかったが、ずっとインターフォンを押されるのもかえってめんどうであるからしょうがない。




「どうしたんですか、こんな時間に……。」




「すみません、迷子になっちゃって到着するのが遅れました~。」




俺は言葉に詰まった。何故なら目の前にいたのは人間離れした美貌の持ち主で、髪は銀髪ロングでスラッと綺麗に流れている。そして、誰でも簡単に折れそうなぐらいに細い足。そしてそして華奢な身長に白いセーターを着こなしズボンは対比して黒でありとてつもなく美しい(早口)…などなど語ればもっと出てくるだろうがそれはこの際どうでもいい。


なぜ俺の家にこんな少女が? 俺は心当たりがない。


それも当然、何故なら俺はあまり人としゃべらないし、ついでに俺は女子としゃべったことがほぼない。その状況で俺の家に女子が来ることなんて今までの一度もなく…俺はどうすればいいかわからず扉の前で立ち尽くしていた。


その様子を他の人に見られていたらなんだリア充かよ、なんてお言葉を頂戴しそうだ、だが、一言言わせてくれこれは決して夜這いではない俺もなんでこの状況になっているか聞きたい、と。


俺とその少女が無言で見つめ合い30秒ぐらい経過した時だ、向こうが声をあげた、




「ええっと、あの家に入れて貰ってもいいですか? こんな夜中に来てあれですけど……。」




? 、しかもこの少女家に入れろと今言ったよな? 聞き間違いじゃないよな? どう考えても。


俺は一人で心の中で葛藤していたがそりゃあもちろん返答は決まっている。




「すみません、流石に知らない人を家にあげるのは……ちょっと、ね? 」




常識的に考えたらその返答が普通である、けど俺も男だそりゃあこんな美少女を家に上げたらあんなことやこんなことが起こるかもしれない。妄想しただけで顔がニヤけてくる。


それでもなんでこんな少女がしがない一般オタクの俺の家に……。絶対に裏があるだろ、なんて思いながら身構えていると少女は俺の返答が予想外だったのか(;゜ω゜)(゜ω゜;(゜ω゜;)ナ、ナンダッテー!!という顔をしていた。


かわいい。そう思いつつも俺は変な人だなと思ってしまった。そりゃそうだ、向こうは知らない人の家に入れて貰おうとしているんだから。


もう要件は済んだから扉を閉めようかなと思い始めた時だった。




「え? 私のことわからないの? 」




彼女の顔が。o゜(p´□`q)゜o 。こんな感じになった。悲しいのだろう、じゃなくて俺にこんな知り合いいなかったはずなんだけど…だから俺は人違いをしていたのかこの少女はと思い人違いですと言おうとした時だった。




「○○○-△△△-◇◇◇◇ボソッ。」




うん、こいつ知り合いだわ。俺の引っ越し前の住所知ってるもん。北海道の人かな? この人は。


いや待てい(江戸っ子風)なんで俺の住所知ってるんだこいつ。




「ごめん、君のことはわからないけどなんで住所知ってるの? ストーカー? 」




「いやなんでストーカーになるんですか。雪華ですよ、雪華。牧原 雪華です~。むー。」




「……? 、? 、? 」




俺はそこまで言われてもわからない。




「えっ? 本当に言ってる? 」




彼女は顔を下げた、そして俺の母親に電話をかけていた。




「ねぇねぇ、心春さ~ん、和君が私のこと忘れてる~。」




『えーまぁあの子だからありえなくはないんでしょうけどね、代わって~。』




「ハーイ!」




『あんた、忘れたの?ほら、昔よく一緒に遊んでた銀髪の子よ。あんたは引っ越してから会ってなかったかもしれないけど向こうの両親とは仲がよかったのよ、私たちは。あなたたちは一緒に住むことになったから仲良くね。』




俺はビックリした。俺の知らない所でサラッと重要なこと決まっているなんて。そして、この人が本当に知り合いだなんてビックリ仰天である(すごく失礼である)。




「わかった。じゃあ牧原に代わるぞ。」




俺はそう言って電話を牧原に渡した。


母親と牧原はまだ何かを話していたらしかったがそれも終わったらしい。




「これでわかったでしょう? 私は幼馴染なんです。家に入れてください。」




なんかムスッとしているが置いておこう。


幼馴染とこのように住むことになった人はこの世にいるのだろうか?いや絶対にいないなと思いつつ俺は牧原を家に案内した。




「汚い、ですね。」




案の定の反応だった。そこら辺に散らばっているカップ麺のゴミやレッド○ルの空き缶がそこら辺に散在している。




「まぁ俺しかいないから片付ける必要ないからな。それに男の部屋って大体そんなもんだろ。」




一人暮らしをしている男性諸君、部屋は汚くてもしょうがないよな! !




「そうですか。わかりました。ちなみに、私の部屋はどこになるんでしょうか? 」




やっぱりさっきこいつのことわからなかったから怒ってるな。まぁ確かにそれは俺が悪いんだが。




「二階に部屋があるからどれでも使ってくれ。」




「わかりました。ではおやすみなさい。」




なんか久しぶり過ぎて会話がほとんどないな~と思いつつ俺も自分の部屋(一階全部)で寝ることにした。








――……――


俺が気持ちよく眠っていたところお腹に少し重みを感じた。なんというかぬくもりがあり、柔らかい?


目覚めたところ俺に牧原が乗っていた。何事かと思い俺は驚いていると、




「あの……お手洗いってどこですか? 」




恥ずかしいそうにもじもじしている。


俺はそんな牧原を可愛いな~と思いつつお手洗いまでついていってやった。




「ここがお手洗いだ。何かあったら遠慮なく起こせよ。」




「わかりました。ありがとうございます。それでは」




俺は部屋に戻りまた寝た。その日俺が起こされることはなかった。






◇◇(視点変化)~牧原 雪華~


私は昔仲のいい友達はあまりいなかった。父親がロシア人ののせいなのか自分に問題があったのかはわからなかったが…。


そんな中、小学校で私に構ってくれる少年がいた。彼はおかしな子で最初にしゃべったことは私の髪の色についてだったと思う。私たちは毎日のようにおしゃべりをしていた。


小学生なんてものは単純で誰かがはやし立てたりすると全員ではやし立てたりする。私たちも




「お前ら付き合ってんのか~www? 」




とか言われて冷やかされたりもした。そんな環境化でもその少年は意識にすらしなかった。というか本当に聞いていなかったのかもしれないが。


彼は自分の興味のあること以外にはほとんど無関心で、なんというかそういう面ではおかしいというよりは不思議な子供だったのかもしれない。


彼との別れは早かった。小学1年生の頃に知り合って別れたのは小学6年生の卒業の時だった。


別れの挨拶は簡単なものというか軽い感じだった。




「俺引っ越すことになったらしい。遠いところの中学校を受験するらしいからさ~。」




彼は自分が引っ越すということにもあまり関係はなく最早引っ越しというものが何かわかっていないんだろうか? と思った。彼にとって私という存在はあまりにちっぽけだっただけなのかもしてない。私たちの関係はそこまでだったが私には彼がやはり一番心に残っている。


長いようで短かった私たちの幼少の頃の記憶は鮮明に覚えているものの方が少ないだろう。


それでもそこで私がその少年に惚れてしまったことは確かだった。






……――……


時が過ぎて私は色々と成長したと思う。周りの子が私に寄って来ているのではなく自分で言うのもあれだが私の容姿のことで寄って来る人がいることも知ったし、私がよくモテるのもわかった。


私は自分の容姿が整っている自覚はあるが、それだけを目的として寄って来られることに不快感を味わい始めた。


そのこともあり私は益々その少年のことを想ってしまった。






……――……


そうして私は高校生になり、遂にチャンスを掴むことになる。そう大学受験である。私は勉強も出来たので、都立大学の進学を目指していたが、ここ北海道からではキツイものがある。


そこで私が目をつけたのが和樹の家だった。彼の引っ越し先は都内であり、交通も便利である。


私は必死に両親を説得し、和樹の両親に相談することまでは出来た。


しかし、ここで一番の敵が立ちはだかる。


妹の氷華である。彼女は頭がよく切れる。そして都内の和樹の家に固執する理由を聞かれてしまった。妹が言うには、おねぇが自分の意見を言うことはなく怪しく思ったらしい(そうだっけ)。


妹には毎晩電話を掛けるということで勘弁してもらえたがやはり妹恐ろしい子。


なぜか知らないが和の家に住む計画はとんとん拍子で進んでいき高校2年生の春休みに和の家に行き、近くの高校に1年間だけ通うことになった。


私は久しぶりに会う幼馴染に想いを馳せて約束の日を待ちわびていた。






……――……


約束の日になり、私は飛行機に乗り、北海道を出た。


両親は少しの期間会えないということで泣きながら見送ってもらったが、理由の一つに自分の恋愛を優先していることを後ろめたく思い、そして妹には電話を寄越すように釘を刺された。


そして、私は私の初恋を叶えるため東京へ向かった。


向かう途中でハプニング(迷子になり)で深夜に到着することになり和が寝ていたら野宿だな~なんて思っていたら私は存在すらなかったことにされてるし、なんなら顔すら覚えられていなくて結構ショックだった。泣きそう。


そして深夜にあった出来事は墓まで持って行こう、絶対に。あれは思い出してはいけない。








こうして、変な同棲生活が始まっていくのだった――。


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