薄紫色の花⑥
「えっ、あ、ああ! 今日、公園の……藤棚が綺麗だからって、友達と!」
わたわたしてしまったけれど、梓の動揺は渉に「よくわからない」という顔をされた。こんな、顔を赤くした姿を見られるのも恥ずかしい。
「そうだったのか。どこの公園なんだ?」
「え、ええとね! 学校の裏の……あっ! わ、私ももうお風呂に入るね!」
一応質問には答えたけれど、これ以上、渉の前にいるのは恥ずかしすぎた。
よって、じり、と後ずさる。
渉はやはり首をかしげたけれど引き留めることはなかった。
「ああ。今、空いてるだろ。父さんが帰ってくる前に入ったら?」
「そうする!」
ぱっと梓はリビングをあとにした。
ばたん、とドアを閉めて、廊下に出る。
一人になって、はぁぁ、とためいきをついてしまった。
生徒会についての話のはずだったのに、藤の花びらと、それがもたらしたもので全部吹っ飛んだような気がした。
渉はあんなことをしておいて、なにも気にした様子がなかった。それにも困ってしまう。
こういうことは慣れているのだろうか?
学園の王子様なのだから、当たり前かもしれない。
女の子にも優しいのだから。
梓が「撫でられたのか」と思ってしまうほど、優しい手つきで撫でるなんて。
そしてもうひとつ気になった。
妹だからしてくれたのかもしれない。
花びらをくっつけていたなんて子供のようだと。
でも、こういうことをクラスの女の子にもするのだろうか?
それは、…………。
梓はちょっと考えてしまって、また顔が熱くなってしまう。
自分だけなら良かったのに、と思ってしまって。
そんなはずはないのに。
そんなふうに思った自分に戸惑った梓だった。
(完)
義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~ 白妙 スイ@書籍&電子書籍発刊! @shirotae_sui
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