連作短歌「エンドロール」

エンドロール

ラブレター　早く書かなきゃ　おしまいを何度も告げる時報みたいに

「置き勉をしてた教科書」「チョコレート」「私」の代わりに君が連れる稚児

傷つけて傷つけられてだったなら、まだ許せたかもしれないなとか

指先に魔法をかけてあげるから、瞬きの間の一番をくれ

どこが恋だというのでしょう、雨の中傘も差せずに走るこれの

冷えていく爪先　君と見たかった小さな火球　願いなどない

一度だけでいい、一緒に抜け出して夜を歩いて。来ない（知ってる）

身勝手な君、君だけにかわいいと言ってほしかった身勝手な私

君がため、あの手この手で「カワイイ」を取り繕った私の墓場

真っ先に失うべき歌声の記憶ばかりが蔓延るリスト

人生のアーカイブセルフ再生し、増える後悔　低評価　「死ね」

記憶って液体だから濁ったら薄めていくしかないんだって。

相槌のクセを残していきやがるから日常会話で一生チラつく

運命にすらなれなかった私たちが今日も明日も勝手に生きる

君が好きな色好きな漫画好きな人　どれも一生愛せなかったな

不公平だから君も傷ついて、何かと思い出しては恨んで。

盛大なパフォーマンスで知らされる「お前にまるで興味無いです」

君ともう会えなくても何食わぬ顔で明日は来るし私も死なない

ネモフィラの花言葉って何だっけ？「君を一生許さない」とか？

いつか見るエンドロールに君の名が刻まれてたら死にきれないな