最終話
彩海が無事に世界大会決勝進出を決めた翌日。
俺は三人と一緒に墓参りにやってきていた。
「久しぶり。父さん。母さん」
両親のお墓の前にしゃがみ俺は手を合わせた。
語りたいことが多すぎて、何から話すか迷ったが俺はまず三人のことを紹介することにした。
(父さん、母さん。俺にも大切にしたいと思う人が出来ました。三人も。右から広瀬彩海さん、姫川アリスさん、天笠有紀さん。三人とも父さんに負けないくらいにゲームが大好きで、毎日彼女たちと一緒にゲームをしています。三人と過ごす日々はとても楽しくて、幸せです。こんな俺なんかが三人のことを幸せにしてあげられるか分かんないけど、俺にできることは出来る限りするつもり。だから、心配しないでね。俺は元気に生きてるから)
俺がそう語りかけるとそよ風が顔の横を通り過ぎた。
それはまるで誰が頬にそっと触れているみたいだった。
「ねぇ、私たちも挨拶してもいい?」
「あぁ、もちろん」
俺は立ち上がって彩海と場所を変わった。
彩海はお墓の前にしゃがむと線香をあげてくれて丁寧に手を合わせてくれた。
「初めまして。櫂君のお父さん、お母さん。私は広瀬彩海といいます。櫂君とは……」
彩海は俺との出会いを声に出しながら両親に報告していた。
「よし! 私はこれくらいでいいかな! 次はどっちがする?」
「では、次は私が」
今度は有紀が線香をあげてくれた。
「初めまして、櫂君のお父様、お母様。私は天笠有紀といいます」
彩海と同じように有紀も俺との思い出と俺の好きなところを声に出して両親に報告し始めた。
「ありがとうございました。私はもう大丈夫です」
「なぁ、今更だが、心の中に言ってくれないか?」
「ダメでしたか? ちゃんと声に出して伝えたかったのですよ」
「別にダメじゃないけど……普通に恥ずかしいんだが?」
言われているこっちとしては恥ずかしすぎて今すぐにでもこの場から立ち去りたい気持ちだった。
「まだ慣れないの? 私たちが櫂のことを褒めるなんていつものことでしょ」
「それはそうだけど……」
三人はいつも俺のことを褒めてくれて自己肯定感を上げてくれるがいつまで経っても慣れる気はしなかった。
「てことで、次は私の番ね」
最後にアリスが線香をあげてくれた。
アリスは二人よりも長めに俺のことを褒めまくった。
「もう、やめてくれ。俺のライフはとっくに0だよ」
「あはは、まだまだ足りないくらいだけど、仕方ない。この辺でやめといてあげるか」
まだまだ言い足りないという顔をしていたアリスは立ち上がって俺の肩をポンポンと叩いた。
無事に三人のことを両親に紹介することが出来て俺は満足だった。
これから後何年、一緒にお墓参りに来ることが出来るだろうか。
出来れば同じ墓に入るまで一緒にいたいな。
そんなことを俺は雲一つない空を見上げて思った。
☆☆☆
数年後。
今、俺の目の前にはウエディングドレスを着た三人が立っている。
彩海は赤色、有紀は白色、アリスは黒色のウエディングドレスを着ている。
相変わらず好きな色は変わらないらしい。
「二人はその色でよかったのか?」
「こっちの方が私たちらしいでしょ?」
「たしかにそうだな」
これの方が俺たちらしい。
今日は写真を撮りに来ていた。
前撮りとかではない。
結婚式は挙げないがウエディングドレスを着た写真だけは撮ろうということになったので撮りに来ていた。
これは全員が同意の上のことだった。
「で、どう? 私たちのウエディングドレス姿は?」
言うまでもなくウエディングドレス姿の三人は綺麗だった。
高校生の頃とは違ってすっかりと大人になった三人はウエディングドレスを着こなしていた。
「凄く綺麗だよ」
「ありがと♡」
「ありがとう~」
「ありがとうございます」
「櫂も凄く似合ってるわよ」
「そうですね。カッコいいです」
「カッコいい~」
「そうか? 普段こんなちゃんとした服着ることないからちょっと照れくさいな」
三人がウエディングドレスを着ているので、当然俺もタキシードを着ていた。
色は白色だ。
「ちゃんと似合っていますから大丈夫ですよ」
「ありがとう」
「さて、それじゃあ、そろそろ写真撮ってもらう?」
「そうですね」
「撮ろう~!」
カメラマンが式場の中に入って来た。
四人で横並びに並び写真を撮ってもらった。
最高の笑顔を浮かべた四人の写真は一生の宝物となること間違いなしだった。
☆☆☆
これにて完結になります。
一カ月弱ご愛読いただきありがとうございました!
次回作面白い話が書けるように頑張りますのでこれからも応援よろしくお願いします。
それでは次回作にご期待ください✨
学年のアイドルに傘を貸したら俺の家がゲーマな彼女たちの溜まり場になった件 夜空 星龍 @kugaryuu
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