エルダー

湯島はじめ

エルダー

氷霜に抱かれて眠る王国を想うあなたの菜食主義に


コールテンのズボンの膝をなでている かっこうは、子どもを、捨てる、鳥


雪の日はジャケットを着るそんなことも教えてくれる遠い遠い人


旅先へ向かう列車で日を浴びて身体はこころにやっと追いつく


おだやかな喪服のひとともすれ違い火葬は引き算とはちがうこと


生きているこころはひとつ、そうでないこころは腕のかぎり持ってゆく


窓のむこうに見えた観覧車のことはいま言わなければもう靄のなか


想像の宇宙コロニーそのなかにあなたも僕もいないのでした


プラスチックの燃えるにおいが濃くなって 眠れる そう思い眠った




ゆめから出てしまった蜂をはらい除けあなたは現実的でたすかる


天国に見つかってしまう、天国に見つかってしまう、真昼の散髪


絵のように青く塗られた静脈を持つと信じて五月をゆけば


濡れながらちしゃを千切っていつからか女優にはあこがれなくなっていた


炭酸にシロップ溶かすこんなときあらわれる靄のむこうの遊園


真夜中の鏡をきらう(後悔は女のひとの顔をしている?)


いつも違う色を言いあうモノクロの写真のきっとすばらしい旗


風をまく自転車がゆくだれもみなはじまり/おわりどちらかに近い


アムリタの雨 忘却をよろこんで生きてゆくほどからだはうつわ


五月祭いつかあなたの死を想いそれをあなたに隠しつづけた


低木の伸びて見えない家の夢 その木に白い花の咲くころ

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