四月一日
業 藍衣
四月一日
ピンポーン♪
インターホンが来客の報せを家人に教える。
「は~い」
美優が点滅するインターホンの画面をタップすると、特徴的な青い制服に身を包んだ男が、大粒の汗を額ににじませ、両手で大きな荷物を抱えて、立っている様子が写し出されている。
「お届け物です。えっと………優子さんのお宅で宜しいですか?」
宅配業者であろう男は、少し戸惑う様子で母の名前を出してたずねてくる。
しかし美優はなれた様子で
「あ、はいそうです。玄関に置いておいて下さい」
そんな素っ気ない返事に男は何か言いたげに、
「は、はい……あの…。」
と、言葉を選んでいるので、美優が
「ん?どうかしました?」
そう問いかけると、配業者の男は慌てた様子で
「いえ……ありがとうございました」
そう言って、重たそうな荷物を玄関脇にそっと置いて、男は車へと戻っていく。
「はぁ、まったく」
ぶつぶつと美優は独り言をいいながら玄関へと歩みを進め、外に置かれた荷物を受けとる。
そんな美優の肩越しには『四月一日』の表札がかけられている。
「まぁ、これをワタヌキと喚べって言うのも酷かなぁ……」
そう呟きながら美優は玄関の鍵を閉めた。
四月一日 業 藍衣 @karumaaoi
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