死ねない世界で、君を求める

RERITO

第1話

2XXX年〜


絶え間ない爆撃音が鼓膜をぶち壊そうとしてくる。

ボロボロに廃れきったアパートは、既に激戦区と化しており、人間の手の加えていない苔や雑草などが火を燃やしている。


「.....っ!!」


短髪の髪が熱波に舞い踊る。あまりの暑さに、俺は耐えきれなくなっていた。

軍服のような服装で、俺はアパートから少しでも離れられるように走る。


「はぁ....はぁ....火炎瓶は、これで最後か」


今どき、反乱軍でも火炎瓶なんて使うやつはいない。だが、原始的なものの方が案外あいつらは対応しにくいみたいだからな。

まぁ、そんな対応しにくいって言っても、すぐに学習しやがるから無駄な抵抗でしかないが...


『アハハハ、人間は飽きませんね。私たちに勝てることなどないと知りながら、それでも歩みを進める。実に面白いですよ。それでいて、存外に狡猾だ。私たちが、あなたたちを殺せないということを知りながら攻撃をしてくる』


「ふっ...!!」


目の前に、立ちはだかる壁を軽く手をつけて飛び越える。


いつから、あいつらは笑うようになったんだ。

いつから、人間のように流暢に喋れるようになったんだ。

寒気とともに、これをまだ制御できているという段階が人間にとっては、まだマシなストーリーだった。


『ですが、何度も言いますけどねぇ、痛めつけるのはいいんですよ?』


紛れもなく、やつらのそれが俺たちを焚き付けた原因だ。


「ガバッ!!」


やつの、肩の上で藻掻もがく男がいた。

それは、見られた顔の隊長で、バキバキッと背中を曲げられつつ虚ろな目で俺を見ていた。

口が小刻みに震えてなにかを言う。

見なくても、分かる。


───逃げろ──


その一言しかない。

分かってる。分かってるから...意識を落としてくれ。それくらいできるだろ


『まぁ、遊べるのは楽しいですけどねぇ、私も仕事なんですよ』


「貴様っ....!!」


『なんですか?遊びって言葉に反応したんですか?仲間意識というのも、羨ましいですね。その感情が欲しいですよ』


こうなることは、覚悟していたのがな...せめて、こいつだけでも仕留めて...

ふと、俺は考えることをやめてそっと足を止めた。


『おや?鬼ごっこは終わりですか?つまらないですね。これは楽しい遊びなんですけどねぇ』


この場所にやってきた敵は一体、こいつだけ...それなのに、六人の兵士がすでに、気絶させられた。

今こうして、団長を見せしめにしてくるのは失望感を与えるため

だったら....


「......」


『聞く耳を持ちません....か。では、軽く拘束させて頂きますね』


俺の体に触れようかという時に、俺は素早く、懐に隠してあった火炎瓶を投げつける。

そして、腰に装着していた包丁を、手に持ってやつの体の動線を一つで切ってやろうと突っ込む。


『なっ!!あなた、分かってるんですか?この隊長とやらが死ぬんですよっ!そして、あなたも重症じゃすまない。』


体半分が、火炎瓶を投げつけたことによる飛び火で、燃え上がる。


っ...!!?!


想像を絶するような痛みが、体の半分に感じるが、気にせずそいつに、突っ込む。


「アァアアアアア」


俺は、ありったけの力を包丁に込めて、やつの目玉あたりにナイフを突きつける。


『そ...その程度で私が..ガガガ....な...にを』


「こいつの刃物にガソリンを塗っておいたんだ。火炎瓶の火は、よく燃えてるな」


『ゴノォ.....』


瞬間、やつの内部から凄まじい勢いの爆発が起きる。

俺と、隊長も吹き飛ばされて火の粉が、あたりを燃やし尽くす。



脳震盪のうしんとうでも起こしているのか、、耳鳴りが聞こえる。

頭が..フラフラする。

火傷は、どの程度だったか....

水を...水を掛けないと...いや、違うな...まだ燃えているであろう火を払うようにして、地面に擦り付ける。

体が触れる度に、激痛が凄まじい。

すぐに、腰に巻き付けているバックからペットボトルの水を取り出して顔にかける。

そうして、子途切れるようにして、意識を失った。








「すご....や....ど.....」


「え...い.....かぷ.....れる....が」




なにかの声が聞こえる。


「い.....ま....よ」


水中の中にいるみたいに、俺は意識を再び失っていく。





『今日は、異性がややってきます柳りゅうくんは、あまりはしゃぎすぎないでくださいね』


「先生、僕は一人で勉強してたいよ」


『しょうがないんだよ。これは、大事なことだから』


「はーい....」


幼い時の記憶。いや、バーチャル空間で体験した記憶の追体験だろうか。

白い空間、数え切れない状況と起きること、そして、数学や漢字などの最低知識を習った場所。


10歳になるまでは、同性同士で話をしていた。


そういうプログラムだからだ。ある程度、頭がよくなってくると異性と会うことになる。その初めての時だったか。

先生が、指をさした方向に、青と赤の光が人間の体を構築していく。


その子は、長い黒髪を二つに纏めたお下げの大人しそうな子だった。

先生の影に隠れていた。


「先生っ!!この子とは会ったことがあるんですか?」


『私は、様々な人を必要最低限の人生経験と、学習を教えているんですよ?その内の一人です』


「.....よく分かんないけど」


少しだけにっこりと、先生が微笑んだ。

大抵、よく分からないというとにっこりと微笑む。

先生は、白い人間だ。よくスーパーとかにいるマネキンと同じである。

でも、いつも喋るからマネキンとは違う。人間だから


『それじゃあ、自己紹介して』


「星乃 伊豆です。その、よろしく」


「僕は、柳、黒林 柳くろばやし りゅうよろしく」


『それじゃあ、今日の授業を始めましょうか』


「りょうかーい」


「お願いします」


授業が、始まってからは静かに進んだ。

僕は、授業中あまりしゃべるタイプではないし、星乃さんもあまりしゃべるタイプではなかった。淡々と...その日の授業は進んで行った。


お昼になると、僕達は外で遊ぶ。仲のいい男友達と一緒に。


「なぁ...どうだった?可愛かったか?」


「え...」


「俺は、なんか快活な女子だったなぁ、名前は吉水 咲だったかなぁ」


「お前の話なんて聞いてねぇよ」


僕は、久留 泰樹くる やすきってやつと、田宮 二郎たみや じろうつていう男友達とよく釣るんでいた。

近所に住んでいる友達だ。

まとめ役みたいなのが、泰樹で、お調子者の二郎だ。そんな風に思ってる。


「柳は、どうだったよ?可愛い子だったか?」


「えぇ....んー、可愛いっちゃあ、可愛いけど...おとなしい感じの子だったなぁ」


「なるほど...柳は、普通くらいだから大人しい人が選ばれたんだな?」


「大人しくはないけどなっ!!普通に、話すくらいだろ。普通に」


「へぇ、いいねぇ...俺も大人しい子だったよぉ...なんか、ガツガツって行かない感じの子だった」


「えっ!?じゃあ、俺だけっ!?なんか、すっごい、自分を主張してくるやつだったんだけど!!」


「それは、二郎がふざけ過ぎないようにっていう先生の配慮でしょっ!!」


「嘘だァァ....」


『あはははは』


みたいな感じ。僕は、そんな風に毎日を平凡に過ごしていた。

それからは、よくそのパートナーとでも言うべき人と一緒に勉強する機会が多かった。



ある日...


「あ、あの...ここが、わからないんだけど、教えてもらえないかな?」


数学の授業が終わったあとに、当然話しかけられた。

次の授業の復習とかしたかったけど、でも一緒に勉強している仲なので無下にするということもできないから、仕方なく教えてあげることにした。


「先生に聞かないんだ?」


「いや....その...先生が、柳くんに聞いてくれって、今は忙しいから」


「そうか。わかった。教えるよ」


ここが、僕達が話初めた時だった。


はぁ、こんな記憶データまで、眠っていやがったのか...少しだけ嫌気が指すな。この情報は、全部上に筒抜け...本当に、なにを信用したらいいのかわからなくなる。


と考えているうちに、記憶のデータが流れ込んでくる。


僕と、星乃 伊豆さんは、それからよく教えて教えられる仲になった。でも、それ以上の関係には進まない。だって、これは授業だから私情を介入するのはお門違いなはずだから...僕はそういう真面目な性格だった。


『それじゃあ、これから課外学習をしようと考えています』


「いきなりなんですか」


「そうですよ。私たちになにを知らされていないじゃないですか」


徐々に慣れていってるのか伊豆さんは、よく話すようになった。

僕も嬉しかった。けど、そうやって考えているのと同時に、なぜかピタリとハマりすぎている感覚に陥っていた。


『そうですね。バーチャル世界には、最大級の遊園地を作った人がいましてね?そこで、遊んでもらおうと思います』


「ちょっとまってください!!私は、勉強したいですっ!!」


「なんで、遊びなんですかっ!!」


『ゴチャゴチャ言わないでください。とにかく、普段から集まっているグループで、行きますからね』


普段から...集まっているグループ?


違和感が...拭えない。


僕は、そんな複雑な思いを抱いたまま、遊園地へとおもむいた。



「よっしゃあっ!!遊ぶぞぉ!!」


「おい、走り出そうとすんじゃねぇ!!」


「騒がしいなぁ...この2人は」


遊園地へと、着くと三人でどこを回るのか考えて歩いていた。

あらかじめ、先生からの助言を聞き、その上でどうするか考える方式が取られていた。


この時すでに、僕達は十一歳。つまり、一年間星乃 伊豆さんと一緒に授業をしていたことになる。


そして...


ジェットコースターへと、乗ろうとした時にそれは訪れた。


「あ...っ、バカがいるんだけどっ!!」


「咲っ!?なんで、こんなところにいやがるっ!!」


「それは、こっちのセリフなんだけどっ!!」


田宮 二郎とパートナーの吉水 咲がばったり出くわした。

吉水さんは、チュロスを頬張りながら睨みつけていた二郎を睨みつけているのが印象的だった。ツインテールのつり目な彼女は、サクサクッという音とともに後ろの二人も連れていた。


「あっ....」


そう、星乃 伊豆もそこには居たのだ。




成り行きで、僕達はジェットコースターにペアで乗った。ある意味当然の形といえば、当然の形かもしれない。


「大丈夫?」


「う...うん。平気」


久留 泰樹のペアの子の話は、あまり耳にしなかったので初めて、目にした。ショートカットの小柄な女の子だった。


「はぁ...なんで、遊園地にきて、コイツと一緒にいないといけないわけぇ...」


「それは、こっちのセリフだっつうのっ!!オラっ!!シートベルトちゃんと握りしめろよっ!!」


「私に指図すんなアホっ!!二郎は、怖いんでしょ?足が震えてるよ?」


「はぁ?怖くねぇしっ!!全然ッ!!怖くねぇしっ!!」


うるせぇ...そう思いながら...となり、に目をやる。

不安そうにした星乃さんが、不意に僕の服の袖を引っ張ってきた。


ドキッと、少しだけ鼓動が早くなる。


僕も、怖かったんだな...って、心の平静を保つ。

友達だから...友達だから...そうやって、心に言い聞かせて、僕は彼女の手を握る。


「っ....」


少しだけ、顔を真っ赤にさせた星乃さんが、いた。僕が、彼女を意識したのは、その時だった。




それと同時に、どこか頭が冷えていて...ハマりすぎていると感じる俺がいた。





ジェットコースターが終わると、途中で頭をガタンッと打ち付けた星乃さんがぐったりとしていた。


「ど...どうだっ!!怖くなかっただろっ!!」


「当然よっ!!全然っ!!怖くなかったしっ!!」


お互い足をプルプルさせながら、もう一度乗り込もうとする田宮、吉水ペア


「目が回りますぅ」


「俺の手を離さないでね。ちょっとベンチかどこかで、休もう。」


手を引いて、休憩を挟もうとする久賀ペア

そして....


「あっ...誰も声掛けられないし...起きて、起きて星乃さんっ!!」


気絶してしまっている僕と星乃さんに別れてしまった。

とはいえ、久賀は冷静な用で、「二郎...次乗ったら、一度合流するから一番近いベンチで待ち合わせなっ、黒林お前もいいかっ!!」


二人で、グッと久賀に見せて、一旦解散となった。


「はぁ...仕方がない。」


僕は、星乃さんをおんぶして、外へと出た。

そこまで混んでいるわけではなかったが、待たせてしまうと悪いので仕方の無いことだった。


とりあえず、久賀と同じ方向に行くのは何となく気まづいので、奥の方にある休憩室まで、歩いて向かった。





なぜかこうなることが必然性的だったんじゃないか?という考えが堂々巡りしながら、僕は星乃さんが起きるまで待っていた。


「うっ....」


そうこうしてるうちに、目を覚ましたようで、僕は手に持っていた飲み物を手渡した。


「あ、ありがとう」


「いいよ。こんなのどこでも売ってるし」


「でも、わざわざ動いてもらっちゃったから」


「まぁ...その分は、今度わからないところを教えてもらうっていうのでちゃにするから」


「....うん。わかった」


そして、二人に沈黙が降りる。こうやって、プライベートで一緒にいるということがなかったからだろう。ちょっとすると、星乃さんは口を開いた。


「みんなは」


「ん?今、それぞれで動いてる。ジェットコースター一回分待ったら、合流するって」


「そっか。じゃあ、20分くらいかな」


「それくらいじゃないかな」


僕は、腕にある小型の機械に話かける。


「sia 今何時?」


『ただ今の時刻は、午後3時37分です』


いつもは、なんですか?こんな時間に、いや教えるのとかダルいんですけど...とか言いそうなのに、こういう時に限って、普通に答えるんだな。


ちなみに、siaっていうのは昔のスマホに変わる、小型チップ型のAIだ。こいつが、起動するとその時に必要な情報を総合して、ありとあらゆることに手を貸してくれる。現実でも、バーチャルでも使うことができる便利なやつだ。空気も読めるし


「したら、50分くらいまで暇だな」


「そう...ですね」


ずっと立っているのもなんだし、星乃さんのとなりに座る。


『あの....あっ...』


歯切れ悪く噛み合う。一年も一緒にいるので息遣いだけは、一緒ということかな...



「いいよ。先に」


「いや...私よりも、始めに居ようとしてたでしょ」


「じゃあ、僕から言うわ」


「どうぞ」



と言っても、なにか言おうとか思ってなかったわけだけど...まぁ仕方ないか



「ジェットコースターで頭ぶつけたみたいだけど、大丈夫そう?」


「え...あぁ、この通り、今は大丈夫みたいですよ?」


「思いっきりぶつけてたじゃん、流石に心配にもなるよ」


「そうですか?私からは見えなかったので」


「初めから頭をグルングルン揺らしてたから、心配になりながら見てたんだよ?あんなに、揺らしてたらそりゃ、頭もぶつけるわ。って思ったよ」


「慣性に引っ張られてしまうタイプなので」


「どんなタイプだよwそれってただのこの世に存在するものじゃんw」


「結ちゃんは、小柄の割にドッシリと構えていてですね?あー見えて、体は全く動かないんですよ」


「結?あー、久賀のペアの子か、目を回してたな。確かに」



結さんって言うんだ。あの子、あとで久賀を茶化す時に覚えとかないとな。

星乃さんは、面白いんだな。って始めて知った。慣性に引っ張られるタイプ。そんなの始めて知ったわ。そっか、1年も一緒に過ごしてるのに、知らないことの方が多いのかもしれない。


ふいに、星乃さんの横顔をじっと見つめてしまう。どんなことを今考えているんだろう。とか...


「どうしたんですか?いきなり!!」


「いや...どんなこと考えてるんだろうなぁ、って」


「なんも考えてませんよっ!!変に見つめてこないでくださいっ」


いてっ、デコピンをおでこに、ぶつけて来た。

痛いなぁ...バーチャル世界なので現実に支障は出ないと言っても、やっぱり痛いもんは痛い

それと同時に、さっきまでの違和感を思い出す。


「ねぇ」


「?なんですか?」


「この世界が、誰かによって作られて、意図的にこうするようにってやられてたらどう思う?」


「どうですか?」


「僕は、ハマりすぎてるな。って思うんだ。星乃さんが、可愛いくて、ずっと見ていたい。そうやって思ってしまうのも、世界が、仕向けた必然的なことなのかもしれないって思うと、ふいにゾッとしてしまうんだ」


「なっ!?何言ってるんですか!?!」


「冗談じゃないよ。好きになってしまいそうだから、そういう言い訳をしてるのかもしれない」


「私のことを好きじゃないんですか?」


ふいに、しゅんとした表情を浮かべる星乃さん。

きっとこんな表情も、僕はこの人と関わってなかったら見ていなかったと思う。


「好きだよ」


でも、好きだから...でも、わからなくなるから...でも、どうすればいいんだろう。


「......っ!?!」


急に、赤くなった星乃さんは、自分で誘導しておいてそうやって表現が豊かなのがずるいなって思う。


『時間です。集合場所に集まりたいという、連絡を受信しました』


「行こう?」


「うん....」


僕は、星乃さんの手を引っ張って、歩き出す。なぜか、抗いたいという欲求を見に宿しながら....





「なんで、みんな手を繋いでるのかなぁ?」


「お前も、手を繋いでるだろっ!!なにがあったんだっ!!」


「......みんな同じ行動.....」


「バカおいやめろっ!!俺らが似た者同士みたいに言うなっ!」


三人は、集まった瞬間異変に気づいた。流石に、気づかない方がおかしい。

だって、みんなお互いのペアの手を握っているんだから...


「結も、伊豆もっ!??嘘でしょっ!!」


「......」


「........」


不味い...なんか、これは、すんごい気まづい。

とにかく、顔を合わせちゃいけないような...そんな雰囲気。

そして、こういう時決まって現れるのが....


『はい。みなさん集まりましたね。ではこれからグループ班から自由行動に移ろうと思います』


先生だ....


なぁ...先生、あんた....なにを考えている?


これも、お前たちのプログラムのうちだって言うのか?

なら、僕達はこの子と付き合わされる運命だったっていうのかよ。あくまで、自主的に、あくまで自分たちのやりたいように、そういうスタンスだからずっとやりにくい。


「せん....」


『私は、これから自宅でやることがありますので、それぞれ楽しんでくださいね』


『.......』


みんな、黙りこんでしまった。僕達は、一体何に支配させられているのだろう。そう思ったのが、この時初めてであった。

久賀がとりあえず解散にしよう。このままだと居心地が悪くてよくない。と言ったので、自然と解散となった。



そして、僕と星乃さんはとにかく、遊園地を楽しむことにした。

けど...


「どうしたの?顔色悪いけど...嫌だったら休む?」


「いや....」


この時の俺は、言いようのできない気持ちに苛まれていた。これから星乃さんと一緒に遊べばいいのか?このまま何も考えずに、遊ぶことができるのか?


「ごめん。ちょっとだけ、あいつらと話させてくれないか?そうしたら普通になると思うから」


「私じゃ.....ダメなの?」


「..........」


どうしろというのか...いや、このまま、打ち開ければいい。そうすれば、わだかまりもなく話せる。でも...一緒にこんな気持ちを共有するのは...


「星乃さん」


「はい。」


「ごめん」


「......わかった。いいよ。行ってきて、多分男子同士じゃないと言えない話もあるよね。」


「でも、理由を話させてほしい。多分、星乃さんは納得してないでしょ?」


「........」


知ってる。できれば、あいつらなんかより、星乃さんに話してしまいたい。

好きって思ってから、できるだけ傍にいたいって気持ちの方が大きいから...でも


「僕は...いや、俺は、星乃さんに窮屈な思いをさせたくない。幸せでいてほしい。そのままの星乃さんが好きなんだ。ずっと一緒に居たくなるような星乃さんが好きなんだ。だからっ!!だから...」


近づいて、僕の手を取った星乃さんの顔が、僕の目の前にあった。




いつの間にか、キスされていた。




「分かったから、恥ずかしいからっ!!周りに人もいるんだよ。そんな大きな声で好き好き言われてたら私の方が恥ずかしいから」


「うん。ごめん、あと...」


「知らないよ。私は...でも、今度本音で教えて。私に伝えてもいい。って思ったら、その時教えて」


「うん。ありがとう」


俺は、角に隠れて、siaを起動する。

柱に寄っかかって俺を見てくる星乃さんに、気づいているけど俺はそっとみんなに電話をした。



「なんだよっ!!変なタイミングで電話かけてきやがって」


「解散って言ってから、すぐに電話をかけてくるなんて...柳...お前」


揃ってドン引きしてるんだが...気にしてられない。星乃さんが待ってるから手早く済ませる。




「俺さ、ずっと違和感を抱えてたんだ。俺たちの恋愛って操られてるんじゃないか?って」



「確かに、咲と一緒に話をしたりとか...昔の俺だったら絶対しないわ。でもっ!!操られてるっていうのは、どうかと思うぜ?」


「俺たちが、考えて...話をして、きたのは変わらないはずだと思うんだけど...それ以上に、選別されたり...とかっていう話のことかな?」




「うん...場所も、やってることも、まるっきり一緒じゃん!!これって、どう考えてもおかしいでしょっ!!」



「おかしいけど...」


「でも、好きになっちゃったんだから...今更仕方ないっつうか...」




「うん...俺もそう思う。だから...なんていうか...気持ち悪い。シナリオ状に立たせられている人間みたいで...全てが全て役割演技ロールプレイングで出来てるみたいで」



「いいようのできないけど、気持ち悪いって話か」


「ふーんっほんで?柳お前は、どうしたいんだ?」




「わからない....わからないから、お前らに声を掛けてる。」



「わかった。柳への答えは、どうしようもないだよ」


「これは、親の作ったレールだ。言っちゃえばな。好きな人も、才能の伸ばし方も全てっ!!それが、お前は嫌なんだろ」



「っ....!?!」



「反抗期だな」


「分かるよ。お前の気持ち。だから、パートナーじゃなくて、俺らに話かけたんだよなっ!!」



田宮が、革新を着いてくるなんて...俺は、想像してなかった出来事に頭が追いついていかなかった。いや、それ以上に、単なる反抗期って言われることが無償にイライラしてくる。だけど、心の中にストンと落ちるところもあって...



「ガァァァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」



「落ち着けっ!!柳」


「な、なに?なにかあったの?」「いや、なんでもない。咲あっち行っててくれ」「なんなの...ほんとに」


田宮たちが、一悶着してる中で俺は頭を抱えていた。

これが...反抗期なのか....



「ありがとう。久賀、田宮...すっごいモヤモヤするわ」



「スッキリしたとかじゃないところが、変な気分にさせるけど、手伝えてよかったよ。あっ...ケチャップ顔に着いてるから、ほんとに...」


「ちょっと、早くしてよっ!!」「ごめんって!!ちょっと、黒林のやつが荒ぶってるから」「人のせいにしてんじゃないわよ」「あー、なんか手助けになったらよかったわ。ちょっ、髪引っ張んじゃねぇ、赤ちゃんかっ!!お前は」

「なっ!!だれが赤ちゃんよっ!!」


ブッツ


光が、無くなったチップを虚無感の果てのように眺める俺....なんか、色々みんな大変なんだな...っていうのがわかった。


反抗期とか言ってる場合じゃないかもしれない。とはいえ、なんかムカつくのでポッケの中から、ハンカチを取り出して思いっきり柱へと投げつける。


「ふんっ!!」


「終わった?」


「あ...うん。終わったよ」


「そっか。よかった」


その後は、もうなにも考えずに遊んだ。遊園地に乗りまくった。







カプセル状の療養カプセルが、ガチリという音とともに開く。

中の水はいつのまにかなくなっていて、俺は歩きだした。


「懐かしい夢だった...ここは、どこだ?」


「あー、起きたかい?」


「あ...ババアか。ってことは、第2特区か」


「察しがよくて、助かるよ」


第二特区基地。ステレオの医療室。その監修を務めるのがこのババアなわけだが...


「おい。なんてもの見させやがった」


「懐かしいものだっだろう?」


「......ひでぇ趣味だな。ババア」


「ひぇひぇっひぇっ!!そりゃ、私にとっちゃ褒め言葉だよ」


「クソが」


寝目覚めは、最悪だ。あいつらに、バレないように地下に作っている性で、光源の当たらない地下室みたいな場所だ。こんな場所で、あんないい夢を見ていたいなんて、吐き気がする。

あ....そういや、隊長...


「久賀は、どうなった」


「.....お前と同じ重症。意識は、未だに戻ってない。けど、そのうち回復するよ」


「そうか。治療の技術だけは、変に進歩してやがるな」


「それが、AIと共存したっていうことだろう?お前さんの体だって、ピチピチに若返っているじゃないか」


「.....ババアは、なんで生きようとしない」


「あんた...いや、わたしゃ、長生きする必要なんかないんだよ」


「そうか....」


「そうさね」


ババアは、スタスタと歩いていった。年齢の割に、あんな動きがまた出来るのならまだまだ行けそうだな。

ババアの性で、変な夢を見ちまったじゃねぇか...とは、言え...すぐに忘れちまうかもしれない。久々に見るか


ガサガサと、なにかを漁るように、机の引き出しを漁る。


「あ....あった...」


それは、ジットコースターで撮った六人の写真。俺は、こんな情けない顔をしていたのか...

ほか二人も、落ち着いている久賀、ビビりまくっている二郎....

女子の小さい女の子遠坂 結、吉水 咲、そして....



星乃 伊豆.....



唇から、血がこぼれ落ちる。

ポタポタと床に滴り落ちるその様子は、だれが見ても懐かしさと、辛さが目の奥に宿している。

そっと、撫でる彼女の...写真を...


好きだ....とボソッとつぶやく。


「おいおい。黒林....まだそんなもの持ってたのか?」


後ろからドンッと押されて、俺を見つめてくる二郎。

はぁ...こいつは、さらにひねくれてしまったようだ。


「俺が、星乃を好きだったのは変わらないんだ。ずっと...これからも」


「そうだな...俺も、咲のことが今でも好きだよ。だから、俺たちは戦わないといけない。あんなことをしてしまったあいつらを許すことはできないだろ」


「あぁ....」


言われるまでもないことだ。とつぶやく。

いや、自分に言い聞かす。やつらとの戦争を終わらせるために...


「それにしても、お前は顔が厳つくなったなぁ」


「そうか?」


「髭が凄いぞ」


「火炎瓶を使ったから...燃えたと思ったんだが....」


「そうか。あれから...3ヶ月は経ってるからな」


「あー、なるほど...だから、髪も髭もこんなに」


「ちったぁ、身の振り方を気をつけろよ。天国で、星乃に会った時に泣かれるぞ」


「お前が、星乃を語るんじゃねぇよっ!!」


「あはは...そうだなw気をつける」


俺は、再び戦場へと赴く準備をする。







人間は、AIと共存することになった。それは、紛れもなく起こらなければいけなかった必然的と言ってもいい。そして、医療、技術、教育など...幅広い分野に掛けて、AIは手を携えていった。それは、恋愛にも発展してくる。


人間は、好きに生きるようになった。勉強、仕事、家事掃除、育児...やりたいことは自分で決める。そういう社会へと形成されていった。

その中で、AIは感情を手に入れることになった。その中でももっとも最悪の事態。


嗜虐心


人知れずそれはAIたちの中で増幅されていった。

誰かを陥れる。誰かを傷つける。そういうものにまで興味を持ち始めた彼らは、いつしか...自分たちが管轄とする区域まで手を出し始めた。



誰にも見られず、自由に行動できる場所として選んだ場所は、教育分野。

一番、成果が分かると言っても過言ではない。

彼らは、ただ傷つけるのではなく...最高の空間を与えて、そして...



「ふぅ....鬱陶しいな。この新聞の記事は」


「事実ではあるだろ?実際俺らは戦ってる訳だし....」


「それは、そうなんだが....」


適当に、コーヒーを作って食事を取る。もはや、AIなんて信用出来ない時代だ。かと言って、今更どうすることも出来ないのも事実。なるべく、自分たちの領域は自分たちが積極的に行うという方向へと世界が傾いていた。


「このコーヒーも....」


「あぁ....皮肉なもんだよな。今俺らを支えているのはAIで、今俺たちが反抗してるのはAIなんだ。自分の首を自分たちで閉めようしとしている。」



ズズズッと、軽く啜る。そういう物だと...受け入れるべきなのだろうか..やはり


「だけど....」


「みなまで、言うなっ...分かってる。あいつらは、許されないことをした。放置していればまた同じことをする。だから、俺たちは、あいつらの感情を消す方法を探さなければならない」


「だから...第1区は...」


「あぁ...難しいだろうよ。お前が、命を張ってスキをついてようやく一体を破壊することができたんだ。」


「あいつらは...」


この戦いを楽しんでいた。そして、勝てば官軍負ければ賊軍とばかりに、縛り上げられて...どこに運んでいるかなんて...


「こうしちゃいられない。早く助けないとっ!!」


「待てよっお前1人で行って、また自爆する気か?あんな方法、命がいくらあったって、足りねぇよ」


ダァン...と、いう音が部屋に響く。その様子を、二郎は静かに眺めていた。ふと、二郎の手を見ると、皮膚に食い込むんじゃないか。というレベルで手を握りしめていた。....俺は....


「すまない。自分の部屋に戻る」


「そうしてくれ」


二郎は、性格がさっぱりしてしまった。こういう風に見ると、俺たちは歳をとったと感じさせる。俺たちはもうすでに二十歳を越えようとしていた。


十七の時に、この基地に着いた。あいつらを必ず殺すという気持ちを込めて...

二年間修行を経て...ようやく、戦場に出ることができたんだ。だから...


「まだだ...まだ.出る時じゃない」


あのカプセルがあった場所が、いつのまにか自分の部屋になっていた。すでに、1人一台カプセルが用意させられているためだ。


これも、あいつらがいつのまにか基地の近くに置いていたものらしい。


「......」


ご丁寧に、記憶のチップまで埋め込んで....

分かってた。ババアがこんなことするはずがないなんて、だが当たり方がどこに向かえばいいのか分からなかったんだ。


「これが、仕返しか....」


俺は、写真を取り出した机から小型のチップを取りだす。

カチッという音と同時に、siaが出てくる。


『私を嫌いになったんじゃなかったの?』


「お前は、関係ないだろ」


『.....でも、同じAIだし...』


「あいつらと、お前は違うだろ。お前は、俺たちに寄り添うようにできてる。違うか?」


『そうだけどっ!!あんなのことになるなんて、知らなかったし』


「だろ?お前も....苦しんでたんじゃないか?」


『わかんない....私は、感情なんて...よくわからないから...でも...』


ポタポタと、光の壁の中で涙を流す女の子が、そこにはいた。

繊細に緻密に作られているな...と関心する。それが、AIだから...



「お前は...俺たちと一緒に戦いたいのか?」


『....うん。あんなことしたやつらは、私と一緒だと思いたくない。だから...戦わせてほしい。でも、周りが...』


「俺と一緒に、戦うだけだろ?周りなんか...気にするんじゃねえよ」


『うん。わかった』


そうして、プツと電気の壁は消えた。充電足りなかったみたいだ。俺は、すぐに充電させる。少し古くなってしまったけど、まだ着くだろう。

赤と緑の点滅を繰り返すチップを眺めながら...ひたすらに、写真の中の星乃を眺めていた。







「起きたのか?」


「あぁ...少し前に、起きたばかりだ。まだ背中に違和感を感じるがな」


うっ!!と、背筋を伸ばす久賀。そして、ポリポリとスティック人参を食べる二郎。

その二郎の様子を横目に、手頃な椅子へと腰掛ける。


「.....あいつも見たのか?」


「柳のこと?」


「そうだ」


「見たみたいだよ。久しぶりに写真をじっと見つめてた。年甲斐もなく好きだ。だってよ」


「.....そうか」


好きだか...そう呟く久賀の目はどこか遠くを見ているようだった。二郎は、もう嫌になるほど見ているので、人参をポリポリと齧りつく。


「人参食うの吉水好きだったよな」


「あー、だな。馬見てぇってバカにしてたw」


「お前の姿が、今は馬見てぇだわ」


「るっせぇ」


人参は、いつのまにか影も形もなくなっていた。多分生で食べると相当苦いのだろう。少しだけ顔を歪ませて飲み込む。


「衝撃だったよな。すでに、死んでいた人の記憶だったなんて」


「だなぁ....」


「目の前で消える姿なんて、見たらよ...あんな風にも、なるわな」


「廃人にならず、戦おうとするのは強いところだと思うよ」


あいつだけじゃなくて、俺たちが...だけどな。と、念押して二郎が言うと、そつだな。と言いつつジュースをコップ一杯飲み込んだ。

いつのまにか、俺たちの間で言うことすらはばかられていた言葉。それは、死んでいた。という事実。きっと、過去のことを思い出してしまう。あの日のことを...だから、目を瞑っててほしい。柳には...だから、二郎は久賀にだけ話す。別れを覚悟してなかったものには辛いだろうから....




黒林は、怖いもの見たさというか...気持ちの面でまた...療養カプセルに入りたいと思っていた。どこか、夢を見ていたい。もしかしたら、あの子がまた...いや、ない。全部消えてしまった今、また始めからになってしまうだろう。でも、もう一度と考えずには居られない。


戦場で死ぬならよし、死なないならどうか穏やかな夢を...


この気持ちの行き場は、そうするしかないと本能で感じてしまっている。

きっと、やつらそうやって必死に戦う俺らが面白いんだろう。


火に油を注ぐ行為だと、わかっていながら行かざるを得ない。

夢を見るために....この世界で生きるために...


ふと、夜空には小さな星々が光り輝いている。あの中に、星乃の命が飛んでいるのだろうか...先・生・に習ったギリシャ神話を思い出す。






俺も、そっちへ...行きたいよ....




「殺してくれないんだよ。世界が」






あとがき...


俺自身が、怖い...と思った世界です。AIが発展したら..なんて想像...でも、書いていて思ったんですよね。これって結局学校と同じじゃないか。別に、なにかが変なわけじゃない。ただ、この人を好きになってくださいね。と言われているだけであって...歪なような気もするけど...それは、正しいのかもしれない。本人たちが、それを幸せだと思うのならば...


すみません。後書きが長すぎました。

これは、来るかもしれない世界のよりリアルに描こうとした結果です。きっと、見てくれる人は...数人しかいないと思いますが、こうなったらみなさんは、耐えられますか?

いや、きっと...若い子は適応していくだろうと思います。この制度自体は俺は悪いようには見えない。そう感じました。ただ...消えてしまうシーンを書きたかったとも思ってしまいます。


本当に、現実に起こりうる最悪の事態を想定するのならば...


読んで下さりありがとうございました。

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