例えばこんなカルボナーラ

カバタ山

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 2019年末に中国の武漢市で感染者が報告されて以来、瞬く間に世界中に広がった新型コロナウィルスは生活を一変させた。


 そんな中で「巣ごもり需要」という言葉が流行したのを覚えている人もいるだろう。


 あの時期はスーパーやコンビニで品切れが続出し、各地で買い物をしたくともできないという難民状態に陥ったというのがあった。


 面白かったのはパスタが全く手に入らなかった事だ。うどんや蕎麦は何の問題もなく買えるというのに、何故かパスタだけが手に入らない。日本人は米を主食にしているというが、この時ばかりは昨今の日本人は主食がパスタに変わったのではないかと思ったりもした (但し、これは作者の見た範囲である。作者はど田舎住まいなので、都会では米も手に入らなかった可能性は十分に考えられる)。


 今ではそうした異常な状況は解消され、当たり前のようにパスタも手に入るようになっている。しかし今度は、昨今の世界情勢によって大幅な値上がりをしてしまう。それでもついつい買ってしまう悲しさよ。


 確かにパスタは手軽で美味しい。麺を茹でてパスタソースをかけるだけで完成する。場合によっては電子レンジを使って麺も茹でられる。市販のパスタソースを使えば、感覚的にはインスタントラーメンを作るのと大差ない。


 とは言え、そんな手軽なパスタも続ければ飽きるというもの。時折変わり種のパスタソースに手を出してしまうが、どうにもしっくりこない。ついつい食べ慣れている物ばかりになってしまう。そうすると、また飽きて変わり種に手を出すという負のサイクルが発生する。これは良くない。


 だからこそ、こんな時ほど逆の発想をしてしまう。


 そうだ。いっそ全くパスタとは関係無い物を使用すれば、逆に美味しく食べられるのではないかと。


 ──という訳でパスタで遊んでみた。


 レシピは超簡単である。所詮男が作るズボラ料理だ。鉄人が作るような手の込んだ調理は一切行っていない。


 1.底の深いフライパンに水を張る。

 2.粉末のうどんスープを入れる。

 3.パスタをそのままフライパンの中にぶち込む。

 4.煮込む

 5.茹で終わったら、火を止めて生卵を落としてかき混ぜる。


 以上となる。


 変わり種カルボナーラの完成だ。牛乳やチーズは使わないのに、これをカルボナーラと呼ぶのは秘密結社カルボナリの方々に失礼な気もする。だが生卵を使うので、作者が便宜上カルボナーラと呼んでいる。


 うん。この程度の料理なら、クッ〇パッドやYou〇ubeで紹介されてそうだ。それ位簡単である。


 基本的に水やパスタ等、全てが適量という名の目分量となっているのもポイントだ。計量してまで作る料理ではない。


 作る上での注意点は、水の量は少なめにして煮込む時間を多めにするという程度である。


 一見するとスープパスタを作るようなレシピであるが、完成形のイメージはフライパンの底にスープが少し残る位が良い。水分を飛ばすというよりは麺に水分を吸わせる。これが丁度良い塩梅となる。


 煮込む時間を多くするのは食感を良くするためだ。麺に固さが残ると味か落ちるような気がする。どちらかと言うと、伸びたパスタの方が美味しく感じられる。うどんスープで煮込むために味を麺にしっかりと付けるという側面もあるだろう。


 要するに、麺にパスタを使う以外は釜玉うどんを作る感覚だ。これをカルボナーラと呼ぶには語弊があるかもしれない。


 後は好みで刻みネギなどの薬味を添えれば更に美味しく頂ける。味付けが足りない場合は、醤油や麺つゆが似合うだろう。個人的にはトウガラシを使うのがお勧めだ。後は、パスタを煮込む際にタマネギを千切りにして一緒に煮ると面白い味になる。


 味は想像の通りだ。いや、それ以前にうどんスープを使って煮込むので、匂いからしてうどんである。当然ながら味もうどん。うどんと違うのは、麺がスープを吸収しているので麺自体の味がしっかりしている点である。


 そこに麺に絡んだ半熟の卵が味にアクセントを付ける。個人的にはそのまま食べるのは物足りないので、この卵が手放せない。


 だが麺はしっかりとパスタだ。この違和感が最高に面白い。


 これをグルメと呼べるかどうかは怪しい。ゲテモノの類ではないかと思う。


 ただ人というのは面白いもので、怖いもの見たさというのがある。普段食べる事が無いような変わった料理が食べたいと思ったならば、挑戦してみるのも良いのではないだろうか。先入観無しで食べられる人には美味しく感じるのではないかと思う。

 

 和と洋の掛け合わせ、和風パスタ、いやどちらも違うな。ここはWeb小説を投稿する場。そう、web小説と言えば異世界が代名詞である。ならこうした馬鹿げたパスタは、異世界風とでも言うのが適当かもしれない。


 ──私の記憶が確かならば、このパスタは異世界で食べた味を再現している


 といった具合で。


 なお、これを読んだ貴方が興味本位で作ってみて不味かったとしても、作者は一切関知しない。全ては自己責任でお願いしたい。

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例えばこんなカルボナーラ カバタ山 @kabatayama

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