第10章398話:古代樹の森6

私は悠々と告げる。


「さあ、あと一人ですね」


「くそ……ッ」


残った坊主のケンタウロス。


おそらく彼こそが、ケンタウロス3人の中のリーダーだろう。


最も落ち着きを感じるし、冷静に状況を認識しているタイプだ。


果たしてどんな手を使ってくるか……


私は注視する。


そして。


「!!」


坊主のケンタウロスは、素早くきびすを返し、逃亡を始めた。


(まあ、そう来ますよね)


私とアリスティの戦闘能力を見たあとでは、2対1は不利だとわかるだろう。


だから『逃げ』の一択。


なんとなく予見できていたので、私は倒れた女ケンタウロスから槍を回収し、アリスティに渡した。


アリスティは一つうなずくと、その槍を受け取る。


そして私はアンチマテリアルライフルを取り出す。


「ハァッ!!」


坊主ケンタウロスに向かって、アリスティが槍を投擲とうてきした。


最強の戦士たるアリスティの投槍とうそうは、絶対的な破壊力を持っている。


大気がうなりをあげるような轟風ごうふうをまといながら、くうを切り裂いて槍が坊主ケンタウロスへと迫る。


「くっ!!!」


坊主ケンタウロスが背中から迫る魔槍まそうの一撃に気づき、慌ててよこステップを踏んだ。


間一髪かんいっぱつのところで槍を回避する。


しかし。


(甘いよ)


投槍で殺せればそれで良い。


殺せなければ、銃撃で殺せば良い。


――――私はアンチマテリアルライフルのがねしぼる。


横ステップ中の坊主ケンタウロスを正確に射抜いぬくのは至難だが、『射撃補正の指輪』がある私には関係ない。


発射された弾丸が、坊主ケンタウロスの背中へと迫る。


「!!」


だが、坊主ケンタウロスは熟練の戦士だった。


槍のあとに弾丸が飛んできたことを逸早いちはやく察知し……


ソレも回避すべく、身をそらした。


驚くべき判断力の速さである。


彼の回避行動によって、銃弾が胴体のド真ん中に直撃することはなくなった。


しかし完全には避けられず、ひだり肩甲骨けんこうこつあたりに命中する。


そして、それで十分だった。


「がああアァッ!!??」


弾丸は、坊主ケンタウロスの肉を貫通するのみならず、骨肉こつにくを盛大に吹き飛ばした。


ひだり肩甲骨けんこうこつから左側が弾けとんだ坊主ケンタウロスが、たまらず転倒する。


――――ただの弾丸であれば、彼に多少の負傷を負わせることはできても、それだけで終わったに違いない。


しかし今回使ったのは、アンチマテリアルライフルだ。


もともと建造物などを破壊する威力があり、なおかつ私の銃は魔法で強化しているので、弾が当たっただけで悲惨なことになる。


彼は弾丸を回避せず、そのまま被弾ひだんしていたほうが、いっそ苦しまずに死ねただろう。


私は言った。


「さあ、トドメを刺しにいきましょう」


「はい」


私とアリスティは、重傷を負った坊主ケンタウロスへと近づく。



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