夏秋冬
柊 撫子
夏秋冬
昼下がり カーテンたなびく ぬるい空 寝ても覚めても 白の天井
瞼の母 嘆く姿は 鮮明に 繰り返される 医師の宣告
窓の外 笑い合う声 こだまする 気楽なものだと 寄りて見下ろす
ぱちくりと 重なる視線 熱くなり
沈黙に 息すら凍る 病室が
翌週の 朝の病室
笹の葉に 快方祈る 彼の文字 叶わぬものと 言えぬ苦しみ
赤と青 並んで座る かき氷 かき食う彼と ちびりと食べる
見舞いの日 高鳴る鼓動 溢れゆく 頬の赤みは 花の色づき
病状を 心配ないと ひた隠す 最期の日まで 伏せおくべきか
短冊の 祈り虚しく 蝕まれ 会えぬ日続く 枯草の空
再会し 季節の便りに 紅葉を 押して眺めて 秋の宝に
沈痛に 進行告げる 医師の目に 散り時問うも 沈黙の答
積雪に 冷たさ伝う 手土産の 雪うさぎ手に 笑顔ほころぶ
次の見舞い 花を贈ると 照れる彼 想いをのせて 勿忘草と
別れ告げ また来年と 指結び 秘める想いは 蕾のままで
白い朝 歪む視界に 込み上げる 震える手の朱 散り時と知る
泣く声と 滲む景色の ガラス玉 絶える心音 冬に埋もれる
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春巡り 勿忘草を 携えて 空の病室 君はいづこか
夏秋冬 柊 撫子 @nadsiko
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