第4話 必然の出会い

「では、行ってきます!」


「おう。死ぬなよ?」


「分かってます! またいつか戻ってきますから、師匠こそ死なないでくださいよ? そして、ちゃんとご飯食べてくださいよ? 部屋もゴミはちゃんと捨てて……」


「うるせぇ! 俺の母ちゃんかお前は! お前に説教されたくねぇんだよ!」


 シッシッと手で追い払われる。


「じゃあ、行ってきます!」


 麻袋を背負い、手を振って別れる。


 ダンテはクーヤが見えなくなるまでずっと見送っていたのであった。


「お前は強い。世界に名を轟かせろ。俺の自慢の息子」


◇◆◇


 森を抜けた先の街に来ていた。

 何回か買い出してきたことがあるので迷うことは無かった。


 冒険者ギルドは初めてであった。


 中に入り、受付に行く。


「いらっしゃいませ! ご要件は?」


「えぇっと、冒険者登録をしたいんですけど」


「はい! 登録ですね! お名前は?」


「クーヤです」


「登録の職としてはどうしますか? 剣士で? それとも魔法士ですか?」


「あぁー。剣士でいいですよ」


「では、冒険者登録の試験がありますので、奥の訓練室にどうぞ」


「はい」


 奥の訓練室に向かう。

 広い部屋であった。

 武器が並んでいる。


 少し待つと少し歳がいった男がやってきた。


「あぁ。お前か冒険者になりたいってのは。今はブロンズ級の奴が出払ってるから上のシルバー級の俺が相手する。まぁ、勝てってのは無理だから、実力を見る程度だ」


「はぁ。本気でも大丈夫ですか?」


「あぁ。かかって来い」


「では」


 ダンッと踏み込み肉薄する。

 頭に向けて突きを放つ。


「っ!」


 躱されるが、剣を戻しハイキックを放つ。

 これもしゃがんで躱される。だが、それで終わりじゃない。そのまま回ってバックスピンキックを放つ。


ドゴォォォ


「うっ!」


 うずくまっている所に剣を突き付ける。


「手を抜いてくれて有難うございます。実力、どうですか?」


「くっ! 文句無く合格だ」


「有難うございます」


 奥に去っていく試験官。

 腹を抑えてたけど大丈夫かな?

 そんなに力入れてないけど。


その頃試験官は

 

 訓練室を出ると、ガクッと膝を着く。


「ぐっ。なんだアイツ。とんでもねぇ奴が現れた……」


「どうでした?……って大丈夫ですか?」


 受付嬢が駆け寄ってくる。


「アイツはとんでもなく強ぇ」


「じゃあ、合格ですね」


「あぁ。アイツは上に来るぞ」


 その頃、クーヤというと先程去っていった試験官のことで心配していた。


「自分が手加減し過ぎて不合格とかはないよなぁ?」


 時間がかかっていることが俺を不安な気持ちにさせる。

 受付嬢が戻ってきた。


「合格だそうです。今ギルドカード作りますね」


「はい! よかった」


 ギルドカードを魔法陣に乗せている。


 手続きが終わるとカードをくれた。


「はい。これがクーヤさんのギルドカードになります。魔物は倒すと魔素に戻りますが、このギルドカードがその魔素を吸って討伐記録として残ると言われています」


「なるほど。じゃあ、依頼とかで何を何匹倒したかがわかる、ということですね」


「はい! そうなります! それで、ランクについてですが、アイアンから始まって、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナとなります」


「なるほど。わかりました。では、なにか依頼はありますか?」


「アイアンはほとんどが薬草や毒消し草の採取や害獣であるゴブリンの掃討になります」


「わかりました。薬草と毒消し草は分かります。ゴブリンは見つけ次第いつも退治してたので、見つけたら退治してきます!」


「えぇ。ランクアップにはどっちも必要ですから、見つけ次第取ってきて退治してくださいね!」


「はい! 行ってきます!」


 ギルドを後にする。

 西に行ってみる。

 東から来た時は群生地は無かったからだ。


 西の森に入る。


「ソナー」


 薬草と毒消し草を見つけた。


「あっちだな」


 感知したところに向かうと群生地であった。


「いっぱいあるじゃねぇか」


 薬草と、毒消し草も採っていく。


 拾っているとガサガサと音がした。


「グゲゲ」


 俺の採取を邪魔する者が三匹出てきた。


「ゴブリンか……」


 魔力も勿体ねぇしな。

 剣を抜き。

 ダンッと踏み込むとゴブリンの後ろにいた。


 首がズズッと落ちて砂のように魔素に変わっていく。


「ソナー」


 もう一度索敵すると、少し先に囲まれているような感じの反応があった。


 不審に思い、駆けつけた。

 林を抜ける。


「ガァァァァ!」


 五体のオーガに女の子が囲まれていた。

 オーガは単体でブロンズ級、群れになるとシルバー級に匹敵する。


「あぁ。オーガだったか……エアバレット」


 バババババンッ


 一瞬で五体のオーガの頭に穴が空き、魔素に変わっていく。


 女の子はペタンと座り。


「グスッ……助かったの?」


「大丈夫か? 横取りしちまったか? あんたの獲物だった?」


「ううん! ありがとう。もうすぐ八つ裂きにされる所だったわ…………あれ? 頬が切れてる」


「ん?」


 頬に触れると手に血が付着する。


「あぁ。葉っぱかなにかで切れたんだな。急いできたから気にしてなかったわ」


 すると女の子は、おもむろに頬を触り短縮詠唱をしだした。


「痛いの痛いの飛んでゆけー!」


 傷を光が包み込んだ。

 再び触ると血はつかなかった。


「あんた凄いな」


「マリアよ」


「ん?」


「な、ま、え! マリアっていうの」


「あぁ。マリア。回復魔法上手いんだな?」


「ありがと! っていうか、回復魔法しか出来ないのよね」


 頬を掻きながら照れくさそうに話す。

 ピンクの髪でボブな感じの髪。

 何より強調している部分があった。


 おっふ。

 これは目に毒だ。


「そうか。送っていくよ。辺境街までで良いのか?」


「うん! あっ! 戻ったら私の幼馴染も紹介するね!」


「おう! 仲間がいるのか」


 適当に返事をして送っていくことにした。

 道中はソナーを使いながら前方の様子を確認しながら進んでいた。

 程なくして街に着いた。


「なんかごめんね?」


「いや、俺もギルドで受けた依頼を報告したかったから丁度いい」


「そう? ならよかった!」


 マリアとは一旦別れた。

 麻袋にパンパンの薬草と毒消し草をカウンターにだし、報酬を求める。


「これで報酬貰えるんですか?」


「お疲れ様です! はい! 報酬はお出しできます! しかし、数が多いですね……」


 少し時間が掛かりながらも数えきった。

 そしてその分の三シルバーの硬貨を渡されたのであった。


 「はい! 今回の報酬です! 凄いですよ! 初日から!」


「ありがとう。今日は終わりにするよ」


 ギルドを出ると、マリアが待っていた。


「こっちよ?」


 路地裏の方に回った。

 こんな所に仲間がいるのか?

 もしかして、俺、だまされてる?


「ここよ」


 ボロボロの小屋に男が二人いた。


「ちょっと! マリア!? なんで部外者を!」


「この人は、私の命の恩人よ。オーガに囲まれていたところを助けてくれたの」


「そうだったんだね……ごめん。僕は、アーク」


「オデは、ドンガっつうんだな」


「アーク、ドンガか。俺はクーヤ。よろしく。なぜこんな所に?」


「僕達は稼げないんだ。だからスラム街で細々と生きてる」


「薬草拾えば少し金になるだろ? ゴブリンだって……」


「僕達はゴブリンを倒すのも大変なんだ」


「オデは盾にしかなれないんだな」


 二人を見て少し考える。


「なるほどなぁ。戦闘スタイルは?」


「僕はスピードを活かしてナイフで切り裂く感じ」


「オデは攻撃を受けるだけなんだな」


「で、私が回復担当」


 これは、俺が加わればかなり良いんじゃねぇか?

 俺は魔法も剣術もできる。


「冒険者ランクは?」


「「「アイアン」」」


 薬草を拾いに行くのもままならないなら、そうだろうな。


「なぁ、提案があるんだが、いいか?」


「何かな? マリアを助けてくれたのはありがたいけど、お金はないよ?」


「俺と組まないか?」


「なっ!? オーガを一人で倒せるんでしょ?」


「あぁ」


「なんで、僕達と?」


「まず一つは、俺は、回復魔法が壊滅的だ。二つ、俺はお前達を活かすことが出来ると思う。三つ、俺がお前達を気に入った」


「僕達は願ったり叶ったりだよ」


「じゃあ、決まりな!」


 ここに、後に世界に名を轟かせるパーティーが結成されたのであった。


 クーヤと、スラムにいたマリア、アーク、ドンガと十悪会との衝突がここから始まるのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

転移したらハズレ属性で無双する ゆる弥 @yuruya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ