真夜中の静かなる戦い
彩霞
「G様」の出現
「G様」とは、人類の中で最も嫌われている虫のことである――。
なんて、かっこいい出だしで始めてみましたが、「G様」はゴ〇ブリのことです。
漫画『鋼の錬金術師』の作者である荒川弘氏が、漫画の巻末に4コマ漫画を載せているのですが、ゴキ〇リのことを「G様」と表現していたので拝借いたしました。
最近色んな漫画で「G様」とか「G」と表現しているのを見るのですが、浸透してきている表現なのかなと思ったり、思わなかったり……(「どの漫画ですか?」と聞かれるとどれだったか忘れてしまっているので困るのですが……笑)。
何にせよ、「G様」と言った方が「ゴ〇ブリと」言うよりも、少しだけ話しやすくなる気がします。
さてさて。
キャッチコピーにも書きましたが、これは2020年12月の暮れに近づいたころ、我が家のキッチンにG様が出現したときのお話。
寒い季節になったというのに、奴らには暑いも寒いも関係ないようで、私は思いがけずG様と戦うことになったのです――。
それは夜中のことでした。
飲み物をとりにキッチンに行くと、私の足元で何かが動いている気配がします。
「ん? なんだ?」と思って目線を下に向けると、触覚をくるんくるん回転させ、周囲の状況把握のために一時停止していた奴がいたのです。
私ははじめ、色が赤茶だったのでG様ではないと思ったのですが、身体の光具合といい、触覚の元気そうな動きといい、G様としか考えられない――と、その結論に至ったあと、私はようやく「ぎゃああああああああ!」と叫びました。心のなかで。
夜中でしたし、G様に刺激を与えて見えぬところに隠れられても困ると思ったからです。
それからすぐさま奴を退治することを考え始めました。
まずは武器を探す必要があります。新聞紙にくるむとか考えたのですが、「いや、飛ばれでもしたらひとたまりもない……」と思い別の方法を模索。
他に何かないかなと視線を巡らせると、なんと丁度いいところにアー〇ジェットの赤があるではありませんか!
「赤って効果あるのか?」と、これまた心のなかで思い説明文を読んで見たら、どうやら効きそう。そのため、私はこれを片手にゆっくりとG様に近づきます。
しかし奴は勘が良かった。私が赤いア〇スジェットを持っていると分かると、素早い動きでその場から去ろうとします。
「逃がすかぁああああ!」とこれまた心の内で叫び、トリガーを引いてテーブルの下に隠れようとした奴にプシューっと薬液をかけました。
薬液は見事命中し、かけ続けること約10秒。
だんだんと動きが鈍くなるG様。
さすがに「もういいだろう」と思いやめたのですが、まだヒクヒクと身体を動かしていました。このまま生かしておくと回復しそうな勢いです。
「なんという生命力……!」とG様の生命力の強さに感心しながらも、遠慮なく追加で5秒薬液をかけました。シュー。G様滅殺。素晴らしきかなアー〇ジェット。
それから私はチリトリとホウキで動かなくなった奴を回収。面倒だったので、そのまま生ごみのごみ袋に捨てて任務完了。何事もなかったかのように床に就きました。
しかし翌朝、ごみ袋の中身を見た家族から「ゴ〇ブリが、自分でごみ袋にダイブしたのかと思った……!」と驚かれました。いや、多分そんなG様はいない……はず。
でも、家族がそう思ったのも無理はないかなと思います。
心のなかではずっとぎゃあ、ぎゃあ騒ぎながら、戦っていたんですけど、任務は静かに遂行しましたからね。もし奴がこちらに飛んできたりなんかした日には、一大事件になると思ったので、気づかれないよう慎重に、そして一言も発することなく行ったため、もし誰かが傍で見ていたらすごく冷静に見えたと思います(笑)
とりあえず紛れ込んだのが、一匹だけだったのでそれ以来は見ていません。出来たら、この先も見たくないですけど。
皆さんもお気をつけて。
真夜中の静かなる戦い 彩霞 @Pleiades_Yuri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。