みんなのプリンス、UDです!

にわ冬莉

だって仕方ないじゃん? モテちゃうんだし

 ここは角詠カクヨム保育園。

 そしておれの名は内海大悟うつみだいご


 みんなはおれのことをUDと呼ぶ。

 ま、そう呼んでってオレが言ったからだけど。


 そしてオレは……女にモテる。

 父ちゃんが教えてくれた三つのおきて。

 こうすれば女の子にもてるよ、ってのをやってるから。


 その① みんなにやさしくすること

 その② 人のいいところをほめること

 その③ すききらいしないで何でもおいしく食べること


 なんだって。

 その通りやってたら、うん、オレ、モテた。




「ねぇ、ダーリン。今日のきゅうしょく、いっしょに食べよ?」


 そう言ってすりよってきたのは、のとうりだ。

 この前おままごとに付き合ってあそんだとき、ハニーって呼んだら、オレの事ダーリンって言いはじめた。


「きゅうしょくはみんなで食べるじゃん」

「そうだけどぉ、おとなりで食べたーい」

 バンザイしながらくるくる回る。


 こいつはいっつもわいわいしてるんだ。


「べつにいいけど」

「わーいわーい」


 そんなはなしをしてたら、向こうからこわいかおして歩いてきた、あれは…、


「ちょっとぉ、いまとーりちゃん、UDのことダーリンって言ったぁ?」

 おと、だ。


 おとはオレとおさななじみで、家も近くて仲良しなんだけど、おこるとちょっとこわい。


「え? 言ったよ?」

「だめだよ! UDは私のなんだからねっ。とらないでよっ」

「ええ? おとちゃんのなの?」

「そーよ。わたしとUDはふっか~いキズナでむすばれてんの。ね!」

 おとがオレにどういをもとめる。


 えええ?


「いや、それはさぁ」

 何とかごまかそうとしてみたけど、ダメだった。


「なによ! みとめなさいよ! わたしと、かった~いキズナで、むすばれてるよね? ね?」


 いつものおとの、すごいいきおいに負けそうになっていると、さわぎを聞きつけたあおいとしまこが近付いてくる。


「どうしたの~?」

 しまこがしんぱいそうに声をかけてきた。


 こいつはめんどうみが良くてやさしいんだ。

 入ってるから、きゅうにネコになったりするけど。


 あおいはどっちかってと、少しはなれたとこからモノゴトを見るタイプかな。

 こわいはなしとかが好きで、じつはオレの次に女子にニンキなんじゃないかって思ってる。


「聞いてよしまちゃーん! とーりちゃんが私のUDとったのー」

「ちがうもんっ、UDはわたしのダーリンでっ」

「ちがうもんっ。おとのだもんっ」


 ああ、またモメだした。

 たのむからオレのことでケンカしないでよ、ハニーたち…、


 何とかしなきゃと思っていると、急にしまこが言った。


「あのね、UDくんはね、なんだよ?」

「え?」

「プリンス…?」

「そうだよ。みんなのプリンスなの! だからケンカしなくてもいいんだよ!」


 へんなリクツだ。

 でも、なぜかとうりとおとは、なっとくしたようにえがおになった。


「そっか!」

「みんなのプリンスなのかぁ!」


 あ、それでいいんだ…


「ね、あっちでおすなであそぼ!」

 しまこがとうりとおとの手をにぎった。

「うん、いこ!」

「でっかい山、つくろ~!」


 ぱたぱたと走り去る三人。

 オレとあおいだけが、その場にのこされる。


「アラシみたいだな」

 オレがつぶやくと、あおいがプッと笑って言った。

「みんなのプリンスなんだね。でも、みんなの、ってことは、ね」


 ……ん? なんかイミシンだぞ?


「なんだよ、それ」

 オレが聞き返すと、


「いやぁ、ボクはと仲良くなりたいから、、っていやだなって」

「あっ…、」

 そういうことか!


「みんなのプリンス、がんばれよ」

 そういってあおいはオレのかたをポンとたたいた。


 ……まぁいいさ。


 もっと大きくなったらオレだって、みんなのプリンスじゃなく、だれかのUDになるもんねっ。

 それまではこのモテライフをたのしむのさ!


「いつまでも つづくと思うな モテライフ 気付けばみんな べつのだれかと…」


 あおいがボソッとつぶやいて、すなばの方に向かう。


「え? いまのなに? なんか、もしかしてオレヤバい? ねぇ、あおい~!」


 オレもあわててすなばへと向かうのだった。



~おしまい~

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みんなのプリンス、UDです! にわ冬莉 @niwa-touri

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