第7話 回復ポーション

「井戸の水、井戸……」


 外に出て私がきょろきょろしていると、先回りしたバーニーが、汲み上げ式の井戸のポンプを動かして、水が出てくるのを見せてくれた。


「ミウ! 水ならここ!」


 私はそちらへ行って、ありがたくその水をビーカーに汲ませてもらう。


「イヤシ草の葉っぱ、ヤルキの花の花弁は、っと……」


 多分、この家を覆っている花畑が、もとは畑なのだろう。そう思って、今度は雑草が茂る方へと歩いて行く。


「ねえ、バーニー。イヤシ草と、ヤルキの花ってわかる?」


 尋ねると、バーニーは首を横に振る。


「これだけ薬草も雑草も生えていると、区別が付かないよ」


 なのだそうだ。


 ──うーん、どうしよう?


「バーニーのステータスが見えたように、草も鑑定でわかったらいいのに」


 そう口走ったときだ。


【イヤシ草】

 種別:薬草

 品質:普通


「あった!」


 というか、見えた、だ。


 ある草の上に、ステータス画面のようなものが展開されたのだ。


「え? わかったのかい?」


 バーニーは驚いた様子で目をぱちぱちしている。


「うん。この草たちにもスキルの鑑定が効くみたいなの。えっとね、最初に教えてもらったステータスみたいな感じよ」


 私は、そう答えながら水の入ったビーカーの中にイヤシ草の葉っぱを五枚ちぎって放り込む。


「あとはヤルキの花……。あ、あった!」


 白いマーガレットのような花がその花のようだった。


「これを入れてっと……」


 パラパラと一枚ちぎっては花弁を十枚水に散らす。


 水の上に、葉っぱと白い花弁が浮かんでいる……。


 ──うーん?


「なにも出来ないわよ、バーニー」


 私は、背後に立つバーニーに尋ねる。すると、バーニーはあきれ顔で私に答えた。


「当たり前だろう? それは錬金術のレシピだ。錬金術を使うのに決まっているじゃないか」


 はあ、と大げさなため息までついてくれる。


「錬金術……」


 うーん、と首を捻る。


 錬金術……魔法の国……。


 ええい、なるようになれっ!


 私は空いた手をビーカーの上に手をかざす。


「ちちんぷいぷい、お薬になあれっ!」


 いやだって、おばあちゃんが良く、「ちちんぷいぷい、痛いの痛いの飛んでいけ~」とかって言ってくれたんだもん……。


 ──って!?


 言い訳を考えていたら、私の手がピカッと光って、その光がビーカーに注がれた。すると、緑の葉っぱと白い花弁が水に溶けて、薄い緑色の液体に変ったのだ!


 慌てて、それを鑑定をつかって確認してみた。


【回復ポーション】

 種別:薬

 品質:普通


 なんと回復ポーションが出来てしまっていた。


「ねえ、バーニー」


「なんだい? ミウ」


「なんか、出来ちゃったみたいなのよ……」


 そうして、二人して顔を見合わせる。


 だって、こんなんで出来ると思わないじゃない!


 おばあちゃんのあのおまじないの言葉がヒントと言うより、そのまんまだったなんて!


 でも、こうして私の異世界生活は順調な滑り出しをしたかのようにみえたのだった。


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カドカワ読書タイム短編児童小説コンテストの応募作品のため、本作品はここまでです。お読みくださりありがとうございました。

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中学生魔女ミウの工房~ウサギに誘われて異世界生活~ yocco @yocco_

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