介護短歌

この美のこ

それでいい私の顔は忘れても

お母ちゃん、お母ちゃんと我を呼ぶ幼き頃に戻りし母は


年老いて何も出来ぬと嘆きつつ我を気遣う母の愛情


寝不足が続く毎日辛くとも親孝行ができる幸せ


ありがとうその一言で救われる先の見えない介護の日々は


激痛に耐えぬく母に付き添えば心そがれるわが身の辛さ


同じこと何度も何度も繰り返す母に苛立ち声荒げたり


今行ったトイレにまたも行きたいと行ったり来たりはや日は暮れる


食べたこと忘れてねだる母さんに「忘れ名人」任命します


十五夜の月見て笑う母の顔月見団子と餅つくうさぎ


秋晴れの日差し優しき縁側に日向ぼっこの母まどろんで


やっとこさ寝息を立てる母を看てベッドの横で付き添いて寝る


駆けつけた夜間呼び出し病院の廊下を歩く音のみ響く


有難きディサービスに行った日はホッと一息一人の時間


トイレットペーパーいて紐にして母はベッド柵に結びおり


曾孫たち母のベッドに滑り込み寝転んでいる母と一緒に


「また来るね」そう言う我に「また来てね」心引かれる面会のあと


それでいい私の事は忘れてもそれでいいから百まで生きて


自宅にて母の入浴介助して母は喜び我は汗だく


「おはよう」と母と挨拶交わしつつ「今日もよろしくお願いします」


物言わぬベッドの脇のぬいぐるみ施設入居の決断の時

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