第4話 ジョギングデート
日曜日の朝、私は待ち合わせ時間の10分前についてしまい、そわそわしながら公園にある時計塔の下で
男の子からデートに誘われたのも始めてだし、ラインでメッセージや電話のやりとりはしていたけど、こうやって直接会うのは2回目。どんな顔をして会えばいいのか正直悩んでしまう。
前髪をさわりながら、脳内で何度も再会した時のことを想像してみるけど、どれも途中でぎこちなくなってしまって、恥ずかしさが込み上げてくる。私たちの普通ってどんな感じだったかなって必死に思い出そうとするけど、心臓がドキドキしていてなにも思い出せない。
私、
「ごめん! 待たせちゃったかな?」
相変わらずの優しい顔でそう聞かれ、私は首を横にふった。
「ぜ、ぜんぜん待ってないよ! 今きたとこ!」
「そっか、良かった! 道、迷わなかった?」
「う、うん。地図送ってくれたから、大丈夫だったよ」
「そっか、そっか、良かった。なんだか今日は顔合わせの時とは違う感じだね。服装が違うからかな? アクティブにみえる」
私のことをまじまじとみる
今日の私の服装は、スポーツブランドのワンピースと、同じブランドのキャップを被っていて、足元はスニーカーをはいている。
なにを着ようか悩みに悩んで、
「わ、私運動する用の服がなくて
目をぎゅっと閉じて返事を待っていると、
「変じゃないよ。可愛い」
「か、かわ!?」
私は思わず顔を上げ、
「あ、ありがとう。もう大丈夫。」
ドキドキする心臓を押さえてそう言うと、私は上目使いで
ドキッとして、顔に熱がこもるのがわかる。
「大丈夫? 走れそう?」
「う、うん! 大丈夫!」
勇気を出して
「じゃあ、公園をぐるっと一周、まわってみる?」
「う、うん!」
「それじゃ、一緒に行こう!」
そう言って
気にはなったけど、声をかける勇気がなくて、そのまま一緒に手を繋ぎながら走り続けた。
公園を一周するのに約30分。
スタート地点だった時計塔が見えたとき、
「
普段走りなれてない私は、足が震えてこれ以上続けて走れそうにない。膝に手を当て、肩で息をする。でも、
「汗がすごいね。ちょっと休憩しながら、水分補給しようか」
「ご、ごめん……! 私、思ってたより走れなくて……!」
恥ずかしくなって視線を地面に落とすと、汗がポタポタと落ちるのが見えた。
私、汗くさくないかな……!?
気になってこっそり、自分の匂いを嗅いでみる。けど、よくわからなかった。
「
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、
「も、持ってきてない! 邪魔になるかなと思って……」
汗の匂いがしないか気になって、さりげなく
「俺も持ってきてないよ。キンキンに冷たいのを飲みたかったから、そこの自販機で買おうと思って、お金だけもってきた。
汗の匂いは気にしてないみたいだ。
「わ、私はいいや。お金持ってくるの、わ、忘れたし……」
アワアワしながらそう言うと、
「じゃあ半分こする? 嫌じゃなければ」
「は、半分こって……!」
か、間接キスになっちゃうよ~!
私は恥ずかしくなって
「スポーツドリンクでいい? ちょっと買ってくるから待ってて」
そう言って
こ、これは今までの経験から考えるに、断れないフラグ……!
どうしよう、間接でもキスはキス。私のファーストキスが
かといって断るのも
「おまたせ、買ってきたよ!」
「お、おおおおおお、お帰りなさい!」
緊張して変な返答の仕方になっちゃった。
「ふふっ、ただいま」
わわわ、どうしよう、どうしよう。
私はどうしようもなくなって、目をぎゅっとつむった。
ピト。
「ひゃっ!」
ほっぺにひんやりとした感触がする。
慌てて目を開けると、
「は、
私は驚いて
「少し顔が赤いね。熱中症になったら心配だから、先に飲んで」
そう言ってペットボトルを私に差し出した。
ぶわわわっと顔に熱が集まるのを感じる。
私、自意識過剰だったかもしれない!
間接キスにこだわってたのは私だけで、
どうしよう!?
「
心配そうに見つめる
「あ、あのっ!」
「うん。なに?」
穏やかに聞き返してくれる
「か、間接っ、き、きききき、キスになる、んじゃ、ないかと……!」
顔が熱くて恥ずかしい。穴があったら入りたい。
「……だね。だから先、飲んでいいよ。嫌じゃなければ」
「えっ! でもそれなら
思わずばっと顔を上げたら、口許を手でかくし、顔を真っ赤にした
「俺は……その、嫌じゃないから」
いいながら顔がみるみる赤くなっていく
つられて私の顔もボンっと赤くなった。
「い、いいの? さ、先にもらっても」
よ、よし。の、飲むぞ。
私は腹をくくって、ご厚意に甘えることにした。
ごくごく喉をならしながら、ペットボトルの中身を飲む。なにも考えずに一息に飲み、ふはーっと口を離した。
「冷たーい!」
思わず漏れる感想に、ふふふと
「それはよかった。顔色、少しよくなったね、よかった」
ほっとした顔でそう言われると、良心がチクチク痛む。
「あ、あの! ありがとう。スポーツドリンクでのどが潤いました! これ、残り返します!」
目をぎゅっとつむって
私はゆっくり目を開けると、はにかんだ顔で
「あ、あんまりこっち、みないでね?」
私は顔に熱が集まるのを感じながら、無言で頷いた。
それを見届けた
「や、やっぱりちょっと待って!」
私は慌ててペットボトルを両手でつかみ、ストップをかけた。
「ど、どうした?」
少し驚いた様子で私をみる
「は、
言ったー! けど改めて口に出すと恥ずかしい!
「俺は、嫌じゃないから、いいよ。
ほんのり頬を染めて言う
「い、嫌じゃないよ! だけど少し……ううん、かなり恥ずかしいって言うか……その」
「嫌じゃないなら飲んでいい?」
コツンとおでこどうしがぶつかった。息づかいが聞こえるくらい近くに
「わ、私の目の届かないところで飲んでくれたら、い、いいよ!」
慌てて逃げるようにして後ろに後ずさった私を見て、ふふっと
「じゃあ、後ろ向いて飲むね」
「う、うん! わ、私も後ろ向いておくね……!」
こうして背中合わせになって、
それからもう一周公園を走って、ジョギングデートはお開きになった。
別れ際、
「もしよかったら、なんだけど。またこうして会えないかな?」
「じょ、ジョギングするってこと?」
「それも含めて、その、デート、に誘ってもいいのかなって、聞いてる……」
顔をほんのり赤くさせながら、しどろもどろにそう言う
そんな
「い、いいよ!」
私は、最大限の勇気を出してそう答える。
「本当にいいの!? 無理してない?」
私は目をぎゅっとつむって、首を横にふる。
「よかった。嫌われたらどうしようかと思った……!」
ほっとして笑う
「き、嫌いになんてならないよ! は、
「そんなの、
「え、えええ!?」
「それでも、好きでいてくれる?」
少し不安げに聞いてくる
「き、嫌いになんてならないよ!」
「じゃあ、好き?」
上目使いで聞いてくる
こうして初デートは無事に終わって、私たちはその日を境にお父さんたちには内緒で、付き合うことになった。
かっこよくて優しい王子さまみたいな
初恋カルテット だんち。 @danti
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