第3話 デートですか?!

それから2週間。プレ家族として、私たちはラインのやり取りをするようになった。

初顔合わせのあと、グループラインを作って、そこでおはようとか、おやすみとか、他愛もないメッセージのやり取りをしている。

はじめは乗り気じゃなかった華子かこ奏多かなたくんも、最近は頻繁に画像やメッセージを残してくれて、少しずつだけど、仲良くなっていけてる気がする。

特に私と春風はるかくんは気が合って、趣味の読書の話をきっかけに頻繁にメッセージを送るようになった。どんな本が好きだとか、面白いとか、延々と話していられる。最近では個人でもやり取りするようになって、夜寝る前に電話をするようにもなった。

「は、春風はるかくん、今晩は。い、いま電話いい?」

コール音が数回鳴ってから、春風はるかくんが電話に出る瞬間、いつも緊張する。迷惑かなとか、面倒くさいと思ってないかなとか、色々と考えちゃう。

だけど、電話から聞こえてくる春風はるかくんの声が優しくて、そうじゃないんじゃないかって気持ちにさせてくれる。

今日だってそうだ。

未来みくちゃん、今晩は。電話ありがとう。大丈夫だよ』

ほっとする優しい声が、受話器越しに聞こえてくる。私は片手で前髪をさわりながら話を続けた。

「そ、そっか。良かった。今日はね、私が晩御飯の手伝いをしてカレーを作ったんだよ」

『美味しくできた?』

「う、うん! 美味しくできたよ。華子かこなんておかわり三杯もしてたんだから!」

『あはは。たくさん食べるんだね、華子かこちゃん!』

受話器越しで明るい声が聞こえてきて、ちょっとくすぐったい気持ちになる。それを誤魔化したくて、ついつい余計なことも言ってしまうんだけど、春風はるかくんは嫌な声1つ出さずに楽しく会話してくれるから、嬉しくなるんだ。

「そ、そうなの! それで太らないから、う、うらやましいんだけどねっ」

未来みくちゃんも別に太ってはないでしょ?』

「が、頑張って維持してるの、これでも!」

『あはは。そうなんだ、じゃあ俺と同じだね』

「お、同じって?」

少しドキドキしながら、私は春風はるかくんの返答を待つ。

『俺も太りやすい体質だから、毎朝ジョギングしてるよ。そうだ、よかったら今度の日曜日、一緒に走らない? 嫌でなければ、だけど』

「い、行く! 行きます!」

『あはは。じゃあ、決まりだね。日曜日、楽しみにしてる。待ち合わせ場所はあとでラインにいれとくよ』

「う、うん。待ってる」

『うん。待ってて。日曜日のジョギングデート、楽しみにしてる』

慌てる様子もなく、流れるようにこう言って、春風はるかくんは電話を切った。

デートって言った、いま。

通話終了後の画面を見ながら、デートの意味を聞きたくて、もう一度電話しようか悩んだ。結局勇気がでなくて、私はそのままラインを閉じた。まだ胸がドキドキしてる。春風はるかくん、どうして急にあんなこと言い出したんだろう。

その日の夜はそわそわして落ち着かなくて、眠れない夜を過ごした。

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